メリーランド州ボルチモア出身。裕福な家庭に生まれた長女で、兄がいる。
　父親の家系は代々軍人の一族で、佐官級以上の高級将校を多数輩出してきた名門だった。
「欧州で、太平洋で、アジアで、中東で」
　華美な軍服を着た父祖たちの肖像と、額縁に飾られたサービスメダルを前にして、父は子供たちへ、父祖たちの輝かしい軍功を語って聞かせた。
　しかしレイチェルは、父の話が好きではなかった。その勇ましい歴史の裏に、多数の死傷者がいることは、想像に難くなかったからだ。
　その反発故か、将来はメディカルスクールに進学し、医者になることを目指してた。
　オーヴァードに覚醒した後はUGNに所属するも、やはりその性情から戦いは好まず、専らレネゲイド技術の平和利用を研究していた。
　しかし、FHのクーデターによって世界が覆ると、彼女は否応なしに戦いに巻き込まれる。
　レイチェルはよく戦い、日本支部長の霧谷を守り切った。それは爾後劣勢に置かれるUGNにとって、レイチェルを英雄たらしめるのに十分な実績であったし、また彼らは英雄を求めていた。
　レイチェルは、皆の後押しと政治判断、霧谷の抜擢を受けて、シーバット艦長に就任する。
　例え霧谷救出劇の真相が、仲間の屍の上に積み上げられた地獄であり――彼女が、自分を英雄などとは思っていなかったとしても。
　少女の震える心は、希望の灯を継ぐために、押し隠された。

　生き残ったUGNの指揮官として戦うために、彼女は実家のツテを頼ることも多い。
　NEC（国防大学）から取り寄せた戦史やカリキュラムを学び、作戦を指揮し、戦果を出すたびに、自分の血筋を感じられずにはいられないのだ。

　オルクスとノイマンのクロスブリードを持つ彼女はの特長は、領域を介したレネゲイド・コントロールの出力と調整能力にある。これにより、”念力”の如き不可視の力を操り、手を触れずに大きな鉄の塊を動かすことさえ可能であるという。
　その”念力”を分散させ、精緻にコントロールすることによって、多数の銃器を浮かべて戦うのが、彼女の戦闘スタイルである。
　メルクリウス：ウッズメタルに搭乗した際も、この戦闘スタイルを拡大させた戦法を取る。

◆搭乗機体
機体名：メルクリウス：ウッズメタル
解説：
　白と紺のツートンカラーが特徴的な細身のメルクリウス。
　小型で核融合炉並みのエネルギーを生み出すオーバーテクノロジー機関と、レネゲイド増幅器であるRCアンプリファイア、そして陽電子AIを備えている。
　陽電子AIとRCアンプの出力に物を言わせた領域展開能力とレネゲイド波の操作によって、ウッズメタルは高度な管制機能を発揮する。
　レネゲイド波は、電波以上に様々な用途に使用可能で、ウッズメタルでは通信やセンサーから、攻防両用の“念動力”として、あるいはその他レネゲイド現象を励起させるためのエネルギーとして扱う。

　一方、頭部の機関砲を除いて内臓火器などは装備されておらず、ほぼすべての武装がオプションである。
　しかし前述した領域操作とレネゲイド波によって、ウッズメタルは多数のオプション武装を周辺に“浮かべて”使用することができる。
　この時、各種オプション武装はマズルコントロールのために、発砲しない場合は銃口を上方へ向けており、逆に発砲する場合は整然と筒先を揃える。それがあたかも弾丸を装填（マスケット銃は銃口を上に向けて弾丸を装填する）し、発砲する戦列歩兵の動きを想起させることから、幻影戦列歩兵と称されるようになった。

[12.7mmチェーンガン]
頭部に搭載されたチェーンガン。主に近接防御用。

[多脚戦車用Rダガー]
搭乗者のレネゲイドをダガー状に出力・固定して使用する近接武器。

[オービタルATK製対MT手榴弾]
多脚戦車用の手榴弾。推進装置などは付属していないため、多脚戦車のマニピュレータなどで投擲しなければならないところだが、ウッズメタルは因子操作で飛ばせる。ずるい。

[ラインメタル3.7cm PDW]
ウッズメタルの副兵装。アサルトカービンに比べると射程は劣るが、発射レートが高く、近距離戦では強力。形状はMP7を彷彿とさせる。

[ボフォース40mmアサルトカービン]
ウッズメタルの主兵装。ボフォースの傑作対空機関砲をベースにした多脚戦車用のアサルトカービン。射程、威力、発射レートが高水準で纏まっている。

[ラインメタル7.5cmスナイパーキャノン”デア・フライシュッツ”]
　ウッズメタルの主兵装。外見は狙撃銃に近似している。
　その最大の特徴はレネゲイドを用いたホーミング機能であり、”デア・フライシュッツ”が発射した7.5cmRC砲弾は、銃口の先に敵がいなくても自動的に目標を追尾・攻撃する。

[NGIS 35mmオートマチックライフル]
ウッズメタルの主兵装。ブッシュマスター機関砲をベースに開発された。性能は標準的なMT用ライフルであるが、NGISは米国企業であり、米軍から供給を受けやすいのが強み。

◆支援機
機体名：ビスマス
解説：
　支援用の無人多脚戦車。有人操作も可能。小柄な機体だが多数のミサイルを搭載している。
　理論上はアンシュを撃破可能な火力を有するが、機体スペックは同機に対して遥かに劣位であり、開発時の運用構想は冷戦期の自走対戦車ミサイル車両に近い。
　すなわち、アンシュとは正面から戦うことを避け、奇襲や待ち伏せ攻撃を主体にして戦うというものであった。
　FHの傑作機であるアンシュと同等もしくは上回る機体を、開発できなかった故の、苦肉の策であった。
　メルクリウスを奪取した後は、火力支援に使われるようになる。
　特にウッズメタルとの相性は良く、安全な遠方からミサイルを発射し、レネゲイド波による指令誘導を受けて間接攻撃を行うことができる。

◆母艦
機体名：シーバット
解説：
　FHの支配に反抗する日米の軍関係者が建造した潜水母艦。
　多脚戦車を収納する格納庫と、発進させるカタパルトを持つ。
　また、発見されたアルフレッド・J・コードウェルが冷凍睡眠状態のままで本艦に収容されている。