インフィニティコード計画の破片として生み出された実験体。それがミスティアである。
コードウェル博士の帰還。その数ヶ月後のことだった。
もっと強大なオーヴァードを。
もっと進化するオーヴァードを。
日本に来たばかりのミスティアは、その魔の手にかかった。
待ち望まれた子。
それはウロボロスを宿せる子。
それは計画に必要な子。
パァン。背後から狙撃された。
弾痕が痛い。ふらふら逃げる。アタッシュケースがガタガタと鳴る。
それを待っていたようにーーー、車が一台。
「ようお前ーーーこっち来いよ」
…
酸素マスクとぬるい液体。
目が覚めたらそこにいた。
目を開けても痛みは走らない。
身体は液体と同化したように重く。
生命維持装置があるから空腹を感じない。
それが………おそろしい。
………時間が。遅い。
生命維持装置と定期的に送られる酸素だけが時間を紡ぐ。
時折見える人影が、何かを呟きさっていく。
ここは
地獄だ

…だから。心が壊れないように。
…どうか。時間が狂わないように。
空虚な地獄の中。意識を維持するために。頭を回し続ける。空想あるいは妄想。
何も考えていないと。
発狂してしまう。

どれほど時間が経っただろう。
培養液に沈んで意識が朧げな中ーーー誰かの声がした。
「インフィニティコード」
培養液の色が変わった気がした。
液体越しに伝わる警告音。コードが脈打つ。
息ができない。誰か、誰か誰か誰かーーー。
「うわあああああああああああああああ！！！！」
………目が覚めた。ここは病院だ。
「おはようございます。あなたがミスティアさんですね？」
スーツの男性が、そっと声をかけてくる。
「あなたには言わなければならないことがーーー」
そうして。学園にて少し訓練を経た後。彼は支部長として椅子に座る。その周囲には「自分と似たオーヴァード」がたくさん。
手には一振りの槍が握られていた。
「…必ず勝利を。もう2度と…失わないために」
もう戻れない過去の自分に背を向ける。
原罪。それは最初の罪。7人の部下を生み出した罪。
贖うために戦うある日。1人の女性と出会った。

両親は拉致事件の後足がつかないように処されており、ロイスの千賀ルカさん(幼馴染)以外はほぼ頼る人がいません。
彼女を失ったら心が折れます。

ずっと悪夢を見ている。
幽閉されていた頃の。
被験体だった頃の。
幸いにも今は騒がしい支部で気が紛れているようだ。しかしその過去の経緯から目をつけられやすい。