”大量に喰える能力”+「安喰流格闘術」

キュマイラの影響か――はたまたもっと冒涜的なナニかの影響か――圧倒的な消化能力を持っている。数十～数百kg程度の肉や骨なら朝飯前。その異次元の胃袋の影響か歯や咬筋も異常発達しており人間の骨も噛み砕ける。
この能力と人喰いの狂気が噛み合って初めて安喰は「悪食姫」と呼ばれた。

さらに、戦闘中の織戸静馬の獣性からインスピレーションされた安喰流悪食術と呼ばれる我流格闘術を操る。
主に2種類の白兵戦からなる武術であり、有利な体勢を取るための投げの技術と、マウントを取った後に行う捕食術の二つを十全に操る。有利を取って相手をパニックにさせることに特化しており、まともなオーヴァードでは恐怖に飲まれて圧倒されてしまうだろう。

総じて素手白兵戦では強いオーヴァードだが、射程を持つ相手の行動は苦手とする傾向にある。
「普通に考えて、歯より銃のほうが強いに決まってるからね」とは彼女の談。

物心ついたときから食人衝動があった。
だが、友達や家族に恵まれたおかげで表に出すことはなかったし、良識的に育った。

「なんかさ、『あれ、おかしくね？』ってなったんだよね。友達は別に人肉喰いたくならないらしいからさ」

ここで冷静かつ客観的に自身の狂気を評価できるのが安喰摂為の特異的性質であり、彼女が《冒涜的存在》である所以である。
そうして隠して生きてきたため、安喰はパッと見普通の女子高生である。

そんな安喰にも転機が訪れる。
織戸静馬との邂逅である。

生来衝動持ちということは、生来オーヴァードであるということ。
中学一年の時、うっかり《ワーディング》内の領域に入り込み織戸静馬の殺しを見てしまった。

「で――悟っちゃったんだよね、化物なら喰っていいんだって」

そうして、夜な夜な｜化物《ジャーム》喰い生活が始まった。
トントン拍子で能力が開花し、安喰流悪食術も昇華され――安喰のことをジャームだと誤解したUGNに撃破され、精神鑑定を受ける。
そこで何故か異常なしという結果が出てしまったため、UGN研究室に経過観察されながらイリーガル活動をしている。

総括すれば、善人であり、悪に立ち向かう力も勇気もあり、普通の女子高生であり、極めて理性的なオーヴァードである。
人喰いという一点を除けば。