経歴

人生に何かしら意味があるとかと問われれば、全くもってないのであると答えるのが他ならぬ私である。
それに何故か更に問われれば、取り立てて特別な理由もなく、かの黒部峡谷に位置する黒部川の如き深さのような含蓄なんてちゃんちゃら含まれていない。この言葉に含まれているものがあるとすれば、単に私がオーヴァードなる人外の存在であるという事実のみである。
しかしこのメモを読んでいる諸君には勘違いしないで欲しい。
私はその事実に驚きこそあれど、悲嘆の念は一切ないということだけは頭の内に入れて置いて欲しいのだ。
私には確かにこうなる以前には、人並みの青春と人並みの幸福とそれなりの人生を歩んでいくであろう輝かしい将来が確かにあったのかもしれない。
しかし、しかしだ。
それがなんであろうか。
このユニバーサル・ガーディアンズ・ネットワークに拾われたのならば、それ相応の人生を歩む権利をまた別で手に入れたというわけである。
それを欣喜雀躍することはあれど、下を向いて涙を流すようなことはないわけである。
何しろ、私の目覚めはマイリトルジョニーを慰めている際に、高速で動く右手から雷が発せられたことが始まりだからである。
正直実感がない。
私以外のオーヴァードに目覚めた人々は、何やら凄まじい過去を持つ、波乱万丈紆余曲折な人物ばかりのようだから、そんな人間と比較すると私の送ってきた人生は平々凡々だった。目覚めも汚らしいものである。
そんな凡庸だった私は所謂化け物になった訳だが、別にその事実に不満があるわけではない。むしろ化け物大いに結構、オーヴァード何するものぞと言わんばかりに胸を張って、縮こまりながらUGNの廊下の隅を歩いている。
それじゃあただの陰キャじゃないかって？
何を言うんだね諸君らは。
いいかい諸君いくら私が凡庸で平凡且つ低俗な目覚めをしたオーヴァードだからといって侮ることなかれ。
私は今はこんなふうに肩身の狭い思いをしながら日々言われるがままに人助けやらなんやらとUGNのおエラいさんたちの使いっ走りなんてチンケなことをしているが、深慮遠謀かくのごとしと言わんばかりのいずれBIGになる将来設計を描いているのだ。
どんな将来設計かって？
それは、今考えている最中である。
こうして、こう。黙々と手帳に今の想いを書き綴っているわけである。
だから私に話しかけるんじゃありません。
わかったならば、右回りで旋回した後、向こうの扉から去りたまえ！
たちされ！私の人生を邪魔する悪霊よ！立ち去れい！

さて、まずは、どうすれば黒髪の繊細微妙、可憐な乙女と出会えるか模索するべきだ。それ以外にすることはない！
命短し恋せよ男子。
益荒男の如き人生を歩むのだ！
そしてゆくゆくは私も黒髪の乙女と青春なるものを育むのである。
育めるといいな。

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