私は幼い頃から教養として様々な習い事を受けていた。
私自身それを強制されたと思っていなかったし、色んな人と知り合えてよかったと思ってる。
そんな習い事の中でもピアノは特に好きだった。

指を通して伝わってくる確かな感覚。
私という存在を通して完成するあの音が好きだった。
きっとこのまま年を重ねてもそれは変わらないだろうと思っていた。
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私が目を覚ますと知らない天井が眼前に広がっていて、意識がハッキリしてくるのと一緒に痛みも襲ってきた。
どうやら私は事故に遭ったようで病室に居るようだ、そんな私に気付いた母は驚いた様子で医者を呼んでくると病室を出ていってしまった。

苦痛を感じながらも自身の状況を把握しようと私は無理矢理身体を動かした。
足、ギプスを巻いている。どうやら折れているらしい。
手、包帯で巻いてあった。こんなに小さかっただろうか、ずいぶんと短くなってしまったようだ。

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事故から数日経ち病院で元気にリハビリをしているときに突然父が『新しい指を用意する』と言った。

今思えばあの時普通のにしてくれ、とでも言えばよかったのだろうか。まあ父の申し出に断る理由もなし話をよく聞かずに任せる、と言ってしまった私にも非があるようにも思える。

いや、普通に考えて娘に最新の軍用の義肢を取り付ける親がいるとは思わないだろう。私はいたって普通なのだ。
しかも何かあった時の為の戦闘用インプラント入れられた。
娘を強化人間にでもしたいのだろうか？実は私の親は悪の組織の人だった、と言われても納得してしまいそうだ。
そんな疑問も浮かんだが入れられたものは仕方ない、割り切って生きて行くしかないだろう。

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更に副作用として私は電撃を体から出すようになってしまった、意味が分からないがどうやらレネゲイド？というウイルスに感染してしまったらしい。
私の様にレネゲイドウイルスに感染してしまった人は力の種類には差異が有れど皆オーヴァード、と呼ばれているそうだ。

そんな状態で普通の学校に行ける訳もなく私はオーヴァードアカデミア、名前の通りオーヴァードが多数所属している学園に入ることになった。
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まあそれはそれとしてこの指になってからの私にとっての最大の問題点が有った。
この指には感覚が無い。

元の指と同じかそれ以上に良く動くこの指だが、この指であの鍵盤を叩く気にはなれなかった。
これは私の精神的な問題だ、切っ掛けさえ有ればまた触れるのかもしれない。
でも今は…、まだその時ではない。
私にも感情を整理する時間が必要なのだ。