普通の家庭、普通の学生だった。ほんの少し人見知りで、おとなしめの。

　何がきっかけだったのかわからない。ただ頭に響く「喰らえ」という言葉。声のままに力を開放しようとした刹那、彼女の声が聞こえた。必死で私を呼び戻そうとする、信濃椛(彼女)の叫びが。その時から、彼女は私の大切な人。当時エージェントだった彼女も、今では幹部になってしまったけれど、月に1度は食事に（強引に連れて）行くのが密かな楽しみ。
「椛！今日はスイパラでビッグパフェ食べるよ！ほらほら、早く！パフェは待ってくれないんだからね！」

　力が暴走してからは、常に不安だった。他人からの何かで暴走してしまわないか、もしくは不用意に能力を使ってしまって誰かを傷つけてしまわないか。信じられなくなる自分。この能力は自分の大切な人まで傷つけてしまう…。どんどん塞ぎこむ私に彼女はとても心配してくれたけれど、彼女もまた傷つけてしまうかもしれない大切な人。それが嫌で彼女を遠ざけようとしたとき、霧谷支部長の言葉に救われた。ーーもしかしたら、それが霧谷支部長の能力だったかもしれないけど…。それでも、救われたことは事実。今、私の周りに大切な人たちがいるのは支部長のおかげ。
「支部長の頼みなら全力で叶えるよ！ろっかさんにお任せあれ！ってねｖ」

　自身のオーヴァード化について、両親には一度説明している。受け入れてもらえず、その記憶は消してもらった。家族の中で自分だけが変わってしまったことに寂しさを感じてしまう。けれど、普通を送る家族をみて自分もまた普通の中にいると感じることができる。だから、家族に近づく輩は全部タベテしまおう。少しの気配も残さないように。私の戻る場所は、何もない平和な場所なのだから。
「ろっかさんがご馳走してあげる！その後は……塵も残さずタベテ(消して)あげるね♪」
　

「私のことは、ろっかさんとかこなっちゃんって呼んでね！」

　能力に目覚めた後、いろんな意味ではっちゃけた。人見知りして尻込みしてたら楽しい(面白い)人とも友達になれないよね！だってUGNって変わった人ばっかりだもん。一緒に楽しまなきゃ人生損々！という意気込みを基に、デビューなるものをしてみた。以前の彼女を知っている人が見たら、かなり雰囲気が変わっているので驚かれる。
　とはいえ、完全にはっちゃけて楽しんでるわけではないので、自分と関りがない、もしくは関わる気がない人に対しては途端に無関心になることも。