ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

一夜 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

黒死の輪プレイグラウンド一夜ひとよ

プレイヤー:バジリスク

私は人間になど決して媚び…え、ご飯くれるの?
…おかえりにゃさいませ、ご主人様ぁん♡」

年齢
2歳/人間換算で約24歳
性別
メス
星座
蟹座
身長
22cm/176cm
体重
4.6kg/言うわけないだろう
血液型
A型
ワークス
ネコ
カヴァー
メイドカフェ『ふらっふぃ〜♡さんくちゅあり』従業員
ブリード
トライブリード
シンドローム
キュマイラ
サラマンダー
オプショナル
ウロボロス
HP最大値
31
常備化ポイント
6
財産ポイント
+5=11
行動値
3
戦闘移動
8
全力移動
16

経験点

消費
+4
未使用
0
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 FHの実験体として生まれた。「私と同じ、対抗種に感染させられた同胞Aオーヴァード達と殺し合いをさせられて…私だけが生き残った。どうして私だけが生き残ったのかと、何度も運命を呪ったさ。」
実験室
経験 FHとゼノスの2回、組織から逃亡した。「1度目は、FHの連中を皆殺しにして、ゼノスとかいう連中に拾われた。2度目はそのゼノスからだ。ウロボロスなんて、私が望んだわけでもないのに…」
逃亡
邂逅 放浪の末、メイドカフェ『ふらっふぃ〜♡さんくちゅあり』に流れ着く。一宿一飯の恩を返すべく、そこで働くことに。「私は人間には決して媚びん!ただ、まぁ、なんだ…彼らは同族に近い見た目だし、それに…あの腐った連中よりは幾分マシだった。…それだけだ!媚びているわけではない!」
就職
覚醒 侵蝕値 SUBJECT NO: 014 / AWAKENING: Y / C.R.DENSITY: 10702.67%
素体 16
衝動 侵蝕値 「私に、近寄るな…血に濡れた人間共め…!」
嫌悪 15
/変異暴走 暴走の効果を、「同一エンゲージに他のキャラクターがいる限り、自身の行うあらゆる判定の達成値-10」に書き換える。
その他の修正7原初の黄+3、原初の紫+4
侵蝕率基本値38

能力値

肉体5 感覚1 精神1 社会2
シンドローム3+2 シンドローム0+0 シンドローム0+1 シンドローム1+1
ワークス ワークス1 ワークス ワークス
成長 成長 成長 成長
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵 射撃 RC 交渉
回避1 知覚1 意志 調達1
生体特徴:爪/嘴2 情報:動物1

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 対抗種カウンターレネゲイド オーヴァードに攻撃で与えるダメージを+2D。この効果が適用されたメインプロセス終了時、HPを3点失う。攻撃はしないのでインクのシミ。
恩人 御舟みふねノア 誠意 厭気 今の自分に居場所を与えてくれた恩人。…あと裏オプの太客。店長なのに。
怨敵 都築京香 懐旧 憎悪 一度は恩人と呼んだ存在。そして今は、自らを裏切った怨敵。

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(LV)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
原初の黄:狂騒の旋律 1 セットアッププロセス 自動成功 範囲(選択) 視界 5
ラウンド中、対象の行う攻撃の攻撃力に+[LV×3]。ただし対象は暴走する。拒否可能。既に自分が暴走している場合、このエフェクトの侵蝕を+2。
蒼き悪魔 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 3
ガードを行う際に宣言。攻撃してきたキャラクターに[LV×3]点のHPダメージを与える。1ラウンドに1回まで使用可能。
原初の紫:自動触手 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 3
ガードを行う際に宣言。攻撃してきたキャラクターに[LV×3]点のHPダメージを与える。1ラウンドに1回まで使用可能。
棘の獣身 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 4 嫌悪、120%
ガードを行う際に宣言。攻撃してきたキャラクターに[LV+2]D点のHPダメージを与える。
ウィズダムアップ 1 常時 自動成功 自身 至近 カオスガーデン
Aオーヴァード自動取得。人間の言葉を解し、文字を読める。また、《ウィズダムアップ》を取得したキャラクター同士のみで通じる会話も可能。GMは必要と感じたなら〈知識:人語〉の判定を行わせてもよい。経験点修正:-2点]
アイテムユーザー 1 常時 自動成功 自身 至近 カオスガーデン
基本ステージのアイテムを常備化・取得できる。
シェイプチェンジ:ヒューマン 1 メジャーアクション 自動成功 自身 至近 カオスガーデン
人間に変身できる。外見は自由だが、最初に決めた姿からは変更できない。衣服なども自由。変化を見破る場合、〈知覚〉同士の対決を行う。元の姿にはオートアクションで戻れるが、再び変身するにはこのエフェクトを使用する。

コンボ

仇種朽敗きゅうしゅきゅうはい

組み合わせ
《原初の黄:狂騒の旋律》
タイミング
セットアッププロセス
技能
難易度
自動成功
対象
範囲(選択)
射程
視界
侵蝕値
5
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力

ラウンド中、対象の行う攻撃の攻撃力に+3/100%以上でさらに+3。ただし対象は暴走する。対象はこの効果を拒否可能。既に自分が暴走している場合、このコンボの侵蝕を+2。
己の身を灼く程の強烈な嫌悪衝動を敢えて受け入れ、敵対者を喰らい尽くす武器とする。その強すぎる衝動は時折味方にも伝播し、理性と引き替えにその力を引き出す。

黒死無草こくしむそう

組み合わせ
《蒼き悪魔》+《原初の紫:自動触手》
タイミング
オートアクション
技能
難易度
自動成功
対象
自身
射程
至近
侵蝕値
6
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
〜100%
14D+6
100%〜
14D+12

ガード宣言時に使用。攻撃してきたキャラクターに7D+3点×2回/100%以上で7D+6点×2回のHPダメージを与える。自分は使用したメインプロセス終了時に4D点のHPを失う。1ラウンドに1回まで使用可能。
命の焔が地に落とす昏い影より、無数の影の獣達が這い出で、敵対者に喰らいつく。その様、さながら百鬼夜行の如く。

殉聖黒死無草じゅんせいこくしむそう

組み合わせ
《蒼き悪魔》+《原初の紫:自動触手》+《棘の獣身》
タイミング
オートアクション
技能
難易度
自動成功
対象
自身
射程
至近
侵蝕値
10
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
120%~159%
25D+12
160%~
26D+18

ガード宣言時に使用。攻撃してきたキャラクターに7D+6点×2回、更に11D点/160%以上で7D+9点×2回、更に12D点のHPダメージを与える。自分は使用したメインプロセス終了時に6D点のHPを失う。1ラウンドに1回まで使用可能。
嫌悪衝動の高まりに伴って、命の焔はより明るく燃え盛り、影はその昏さを増す。獰猛さを増した影の獣達は、敵対者に断末魔を上げることすらも許さない。

武器常備化経験点種別技能命中攻撃力ガード
射程解説
素手 白兵 〈白兵〉 0 3 0 至近 生体特徴:爪/嘴で変更された素手。
一般アイテム常備化経験点種別技能解説
オーバーカウンター 10 一般 Dロイス「対抗種」を持つキャラクター専用。オーヴァードに与えるダメージを+2D。この効果を使用した場合、そのメインプロセス終了時にHPを2D点失う。
FHの実験により超強毒化した“対抗種”。自らの心身をも痛烈に蝕むその力は、しかし彼女の居場所を奪わんとする敵対者にとっては正に悪夢の如き武器となる。
生体特徴:爪/嘴 その他 ワークスで取得。素手データを変更。
ドロップアウト 5 エンブレム/一般 UGN以外のエンブレムを1つ取得できる。ゼノスネットワークを選択。
今でこそ「ふらっふぃ〜♡さんくちゅあり」という居場所を手に入れた彼女だが、そこに至るまでには長い長い苦しみの日々があった。
ゼノスネットワーク 10 エンブレム/一般 ゼノス以外のエンブレムを3つまで取得できる。キルリーダー、†シークレットモンスター、フローズンリリーを選択。
ゼノスからの逃亡の日々の中、彼らの保有するネットワークの一部を把握した事で、それらを麻痺させ、或いは逆に利用し、彼らの目を欺く術を身につけた。
キルリーダー 15 エンブレム/一般 オーヴァードに与えるダメージを+2D。
FHの行った、“対抗種”を保有するAオーヴァード達で蠱毒を行う実験。最後まで生き残ったのは彼女であった。そして…
†シークレットモンスター 25 エンブレム/一般 暴走中、与えるダメージを+3D。
…生物濃縮を起こした“対抗種”は最早人の手には余る代物であった。嫌悪衝動の高まりと共に解き放たれた“対抗種”により、実験を主導したセルは一夜のうちに壊滅した。
フローズンリリー 5 エンブレム/使い捨て 財産ポイント+5。シーンに登場している他のキャラクターが行う、財産ポイントを使用できる判定にも自身の財産ポイントを使用できる。
裏オプでじゃんじゃかクソボロ儲け!

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
0 0 64 70 0 134 0/134
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

キャスト紹介:一夜

Personal Data

Name: 一夜ひとよ
Birthday: 7/19
Gender: メス
Like: 店長の膝の上、cha○ちゅ~る、レコード鑑賞
Dislike: 裏切り、過度なスキンシップ、水

Looks

本来の姿は黒のサイベリアン。長毛種特有のボリューミーな毛並みと、レネゲイドの影響で赤く染まった瞳が特徴的。人に化けた際もこの二つの特徴は受け継がれており、軽くうねる嫋やかな黒髪と、氷の如く冷たい目線を投げる真紅の吊り目は見る者に「クールビューティー」の9文字を印象づけることだろう。また人間の姿の際は176cmとそこそこ高身長でもあり、更に全体的に肉付きもよく、端的に言ってかなりスケベである。

普段はメイド服姿を崩さず、《シェイプチェンジ:ヒューマン》を使用した際に生成されるデフォルト衣装もメイド服だが、買い出しなどで外出する際は動きやすいストリートファッションを好む。特に猫耳や尻尾を隠せるキャップとオーバーサイズのパーカーを愛用しているようだ。

Background

詳細

彼女がこの世界に生まれ落ちた時初めて見たものは母猫の姿ではなく、無機質な培養器と、自らをそこから取り上げる白衣の人間の姿であった。彼女が生まれたのはFHの実験施設。表向きは一般的な生物学研究所として機能していたその施設では、犬や猫、鳥に熊、果てはスベスベマンジュウガ二に至るまで、様々な動物が各地から集められたり、人工授精や複製体技術を用いて生み出されていた。彼女は「生み出された」側の1匹だったわけだ。種類も生息域もバラバラな彼らに共通していたことは、その全員が肉食或いは雑食であったことと、人工的に対抗種レネゲイドに感染させられ、Aオーヴァードとして覚醒していたことである。

勿論、彼らの目的は対抗種のAオーヴァードを集めて悦に入ることではない。生まれて約半年後、彼女は突然森の中に放り出される。当然こんな状況に心当たりなどない。周囲を見れば、彼女と共に育ってきた同胞達も同じ様子であった。暫く歩けば高い壁がそびえ立っており、空はガラスの天井に覆われていた。どうやらこの森から出ることは叶わないらしい。仕方なく待ってみるが、しかし日が暮れても研究者達が迎えに来る様子はなく。彼女は戸惑いながらも、ひとまず同胞達と身を寄せ合って夜を越すことにした。…彼女の覚えている平和な記憶は、ソレが最後である。夜が明ける頃には、地獄の門は既に開かれていたのだ。

先述した通り、森に放り出されたAオーヴァード達は全員が肉食或いは雑食であり、生きるためには肉を必要とした。しかし、森の中に生肉が転がっていることなど当然あり得ない。…彼らが生きるためには、共に育ってきた同胞達を喰らう他なかったのである。Aオーヴァードとして高められた知性は、人間の目線では食人にも等しいその行為に激しく抵抗したものの…しかし己のうちに眠る獣性と生存本能は綺麗事への逃避を許さなかった。森に放り出されてから約半日後には、各地で喰い合いが始まっていた。一日も過ぎれば、彼女も自衛という形で否応なく争いに巻き込まれた。三日もすれば争いはより激化し、生き残るためにはエフェクトを用いることを強いられるようになった。1週間もする頃には…研ぎ済まされた生存本能が、彼女から安息を奪い去っていた。睡眠時間は極限まで切り詰められ、起きている時間は常に辺りを警戒する。少しでも動くものがあれば、それが何であるかを頭で認識する前に、身体が全身全霊の殺意と嫌悪を込めて攻撃を叩き込んでいた。そして、それがかつて同胞と呼んだモノであったなら――彼女はその肉を貪り、血を啜り、骨で爪を研いだ。…彼女は最早、中途半端に知性を持つだけの獣に戻っていた。そしてその知性が、彼女を苦しめ続けていた。

…そんな修羅のような生活がどれほど続いただろうか。ある日彼女は、自分より何倍も、何十倍も大きな熊を打ち倒した。といっても、その頃の彼女にはそんなジャイアントキリングも珍しいものではなかった。長きに渡る戦いの日々が、彼女の対抗種の扱いを高めていたのだ。だがそれ以上に、“エサ”と巡り会うことの方がこの頃の彼女には珍しくなっていた。既に、かつて同胞と呼んだ者たちのほとんどは死に絶えていたのだ。数日ぶりの食事に浮き足立ち、その硬い肉に牙を突き立てようとした時――突然、視界が傾き、暗転する。首筋に走る鋭い痛みから、麻酔銃を打ち込まれたと彼女が気づく頃には――既にその意識は、闇に落ちていた。


…目が覚めた時、彼女は見知った天井の下にいた。彼女が生まれた、FHの研究施設。自分を取り囲んで話す研究員達は、皆一様に興奮した様子であった。状況を呑み込めない彼女であったが、しかし漏れ聞こえてくる会話から考えるに、どうやら次のような話らしかった。

自分は“対抗種”を持ったAオーヴァード同士を共食いさせて生物濃縮を引き起こす実験の被検体にされ、そして最後まで生き残った。

ついでに言うなら、その実験は研究員達の賭けの対象にされていたらしい。「まさか猫が勝つとは思わなかった」「賭け金は次回にキャリーオーバーだな」etc…。呆けた顔で彼らの話を聞くうちに、彼女の内にふつふつとドス黒い衝動が湧き上がってきた。こんなヤツらの私欲の為に、その為だけに、私は何度も死にかけ、幾数もの同胞を手に掛け、その血肉を啜る羽目になったのか?…許せなかった。その事実が。そして、自分は実験体の哀れな畜生共とは違うと、高みの見物を決め込んでいられる彼らの精神性が――その全てが、堪らなく「嫌だった」。

…彼女の内で、その衝動と…それに呼応するかのように、彼女の対抗種が叫ぶ。…かつて、彼女が手に掛けてきた同胞達の声で。嫌だ。嫌だ!嫌だ!殺せ。殺せ。殺せ!殺せ!殺 せ ! ! !
…その声に従うかのように。前足が、動いた。血の如く赤く染まった瞳が、研究者達を見据える。――彼女を突き動かすその衝動の名は、「嫌悪」。まるで、世界そのものを敵に回したかのような、臓腑を腐らせるほど強烈な嫌悪の全てが、今、研究者達に注がれていた。そうだ。嫌なら壊してしまえばいい。お前には今、そのための力があるのだから。彼女に何かが囁いた。…そして、彼女はその声に身を委ね――

――次の瞬間。意識が、遠くなった。認識が、世界が、揺らぐ。耳をつんざくのは、歓喜の声か、断末魔の叫びか。それらさえもまるで泡沫の如く歪んで、泥濘の如く鈍く、彼女の頭蓋にリフレインするばかり。ただ、陽炎の如く揺れ動く意識の薄膜の向こうに、深く昏い赤色がこびり付いていた。

――気づけば、彼女は研究施設の焼け跡に1匹佇んでいた。後で知ったことであるが、どうやら嫌悪衝動の高まりに伴って、蠱毒の果てに超強毒化された対抗種が解き放たれ、研究員達を侵蝕、鏖殺したらしい。

…彼女は、また1匹ぼっちになった。


幸か不幸か、野生での暮らしは先日までの蠱毒よりずっと易しいものだった。ワーディングで野生動物を昏倒させれば餌には困らず、Aオーヴァードである彼女を畏れた野生動物たちが彼女に襲いかかることもない。…皮肉にも、あの地獄の経験は、野生での暮らしに役に立つものではなかったのである。そして、そんな虚無感を抱えた放浪生活が数週間続いた後のことであった。樹の上で雨風を凌ぐ彼女に声を掛ける人影が一人。その人物は、自らを「ゼノス」なる組織に所属するレネゲイドビーイングであると名乗り、ゼノスに加わるなら、身の安全とある程度の生活を保障すると提案した。…あの地獄の経験を経て、彼女は人間への嫌悪を隠そうともしなくなっていた。しかし、レネゲイドビーイング…すなわち、自分と同じヒトならざるモノならば?…もしかしたら、もう一度信じてみてもいいのかもしれない。――そんな甘い考えに酔わされて、彼女はその提案を呑んでいた。その判断が、目の前にいる者が行使したソラリスの能力により歪められたものであることも、そしてその先に更なる絶望が待つとも知らずに。

ゼノスでの生活は悪いものではなかった。雨風を凌げるねぐらがあり、待っているだけでエサにもありつける。それに何より、ゼノスには多くの「同胞達」ヒトならざるモノ達がいたのだ。かつて多くの同胞を殺し、喰らってきた罪も、ここでなら雪げるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて始まった新生活は…あの日のように、突然打ち砕かれた。

ある朝目が覚めると、彼女の内で見知らぬ力が渦を巻いていた。それは稲妻のようでも、疾風のようでも、薬毒のようでもあり、まるで貪欲な蛇の如くに荒々しく、その力が振るわれる時を待っていた。…力の正体は分からなかったが、上手く使いこなすことが出来れば、自分を助けてくれたゼノスに貢献出来るかもしれない。彼女は喜び勇んで“プランナー”に報告に向かった。しかし…彼女に待っていたのは歓待と賞賛の言葉ではなく、失望と明確な敵意、そして無数の銃口であった。

…これは彼女の知り得ないことではあるが、件の蠱毒の実験は、ある巨大な計画の一部であった。「プロジェクト・インフィニティコード」のひとつ、「ウロボロス計画」。ウロボロスの持つ、他者のレネゲイドを喰らい、害する能力は、対抗種のそれと部分的に類似している。そこに目をつけた研究者達は、太古に封印されたウロボロスシンドロームと接触するため、対抗種に関する研究を無数に行った。それらの膨大な研究の、末端の末端、その末端。その一つこそが、かの蠱毒の実験であった。故に、と言うべきか。彼女は自らも知らぬ内にウロボロスシンドロームへの適性を獲得しており、そしてゼノスで多数のオーヴァードと…別種のレネゲイド達と接触したことにより、その種が萌芽したのであった。…ゼノスにおいて、ウロボロスシンドロームの保有者は撃滅の対象である。即ち、彼女がゼノスへの貢献となると期したウロボロスへの目覚めは、そのゼノスでの居場所と、生まれて初めて手に入れた安寧をも破壊することを意味したのである。


――それからのことを、彼女はよく覚えていない。気づけば彼女は、どこかの街の裏路地で冷たい雨に打たれていた。街は夜だというのに煌びやかで、その灯りと喧噪は、まるで雨粒という尖った武器を携えて全身の傷を抉ってきているかのように思えた。…あれから、どれ程の時間が経ったのかも分からない。ただひとつハッキリと分かるのは、最早自分の心には、他者を信じられるような余地は微塵も残されてはいない、ということだった。誰かを信用して、手酷く裏切られる。そんな経験を二度も重ねてしまえば、「次こそは」と希望を持つことも難しくなる。――彼女は、再び放浪の暮らしに戻り、そして二度と戻らないことを心に決めた。

…だが、そんな暮らしも長くは続けられなかった。野生での暮らしと都市部での暮らしには、ひとつ決定的な違いがある。それは衆目の存在だ。野生の頃のように《ワーディング》で獲物を狩ろうとすれば、無関係な多数の人間を巻き込むこととなり…そして、そこに紛れて暮らす多くのオーヴァード達に目をつけられることに繋がる。彼女を追う影は格段に増えた。暴走するEXレネゲイドを確保して事態を収めようとするUGNや特調、戦力や実験体として利用しようとするFHやその他民間組織、そして逃げおおせたウロボロスシンドローム保有者を今度こそ完全に排除せんと猛追するゼノス。…安寧という言葉が、まるで遠い昔の亡霊に思えてしまう程に、彼ら人間達の攻撃は熾烈だった。まるで、ヒトの作り上げた世界が、彼女という異物を排斥せんとしているかのように。…「絶望」という死神の足音が、刻刻と彼女に迫りつつあった。

…だが。
世界が彼女の敵になったとしても。
全ての人間が、彼女の敵になった訳ではなかった。


2度目の放浪生活を始めてから、およそ半年ほどが経過したある日。この頃の彼女は散発する戦闘に鍛えられ、生半可な奇襲程度であれば鎧袖一触に蹴散らせるほどの戦闘力を得ていたが、しかし、この日ばかりは――しくじった。正面からゼノス、裏からSoG、おまけに空からUGN。自分自身を巡る3勢力の揉み合いと、どこぞの莫迦が空気を読まずに市街地で使用した「塩の爆弾」によって、彼女は浅からぬ傷を負っていた。幸い、その派手な爆発と大量の岩塩がもたらした混乱に乗じてその場から逃げ出すことには成功したが、しかしこの傷では――最早長くはないだろう。オーヴァード御自慢の再生能力も、どうやらゲリラ戦によって侵蝕率が上がりすぎたらしく発動しない。最後の寄る辺たるロイスも…彼女にとっては持つべくもないもの。何処とも知らぬ路地裏で、彼女は腐臭の漂うゴミ箱を己の墓標に定めた。

…だが、運命は彼女に安易な救いを与えなかった。間の悪いことに、或いは運のいいことに、肉塊と生命の中間の存在となっていた彼女の前を、一つの人影が通り過ぎようとし――そして、ソレを目に留め、足を止めた。その人影は、纏ったメイド服が血と泥で汚れるのも厭わず一夜を抱き上げると、駆け足で1つの店舗へと向かっていった。華やかな街の片隅にひっそりと佇むその店の名は、メイドカフェ「ふらっふぃ〜♡さんくちゅあり」。…後に、彼女の居場所となる店である。

…目が覚めると、見知らぬ天井。回らない頭と霞む視界で、一夜は状況の把握に努める。まず鼻に飛び込んできたのは、見知らぬヒトの…オーヴァードの匂い。次いで薬品の刺激臭が鼻を突き、そして最後に食欲をそそる、食べ物らしい芳香がそれら全てを洗い流していった。身体を動かせば分かることが2つ。どうやら傷を負った部分が何かでキツく縛られているようであることと、自分は柔らかい布の上で寝かされていたこと。そして、寝ぼけ眼を強引に開けば…そこには、彼女をじっと見つめる、1人のオーヴァードがいた。

「あら!目を覚ましたのね、よかったわ~。買い出しに行ったらきゃわいい猫ちゃんが倒れてるんだもの、心配したのよ~?」

甲高い悲鳴を上げるその女を前に、ヒト嫌いの彼女は反射的に《ワーディング》を展開、臨戦態勢やんのかステップをとる。しかし目の前の彼女は威嚇にも動じず、少し困った様子で諭すように言った。

「この子…オーヴァードね、今まで人間にひどいことでもされてきたのかしら~…でももう大丈夫よ、ここには強くてきゃわいいメイドちゃんもいるし、ゆめめちゃんの美味しいごはんもあるもの。」
「…だからどうしたっていうんだ?私は他の人間とは違うと?…そんなこと、信じるとでも思ってるのか?私は何度も人間共に裏切られてきた…!そんな甘言に絆されるほど、私はお人好しじゃあないんだよ…!」
「あら~♡きゃわいい上にお喋りもできちゃうのね~!とりあえずお風呂に入って温まれば心も落ち着くと思うわよ~、すごく汚れてるみたいだし…私が洗ってあげるわ♡」

…理解ができなかった。色んな意味で。コイツ全然こっちの話聞かねぇし。てかきゃわいいってなんだよ。…待て、コイツ今風呂って言ったか??????――その言葉を彼女の脳が認識するよりほんのわずかに早く、女が一夜を抱き上げる。気づけば彼女は腕の中、その足は迷い無くどこかへと向かっている。…ゼノスにいた頃、彼女が最も嫌いなものの1つに挙げたのが風呂であった。本能が逃げろと叫ぶあの感覚は、殺し合いの日々を彼女に想起させるものだったからだ。故に、このままでは、大変マズイ。刹那、彼女は身体をひねり、そのままの勢いで回転の力を加えたコークスクリュー猫パンチを放つも…

「ンなっ…避けられた…!?」

無駄のない最低限の動きで、彼女の渾身の猫パンチはあっさりと躱される。二度、三度と打ち込んでも結果は同じ。ならばと身をよじり抱擁から抜け出そうとするも、オーヴァード膂力によって腕と豊満な胸の間に挟まれ、身動きが取れない。彼女の十八番のカウンター能力も、しかし向こうが攻撃してこなければ発動できず。…この状況は端的に言って、詰み、であった。

――そしてこの後、「ふらっふぃ~♡さんくちゅあり」の給湯室から、猫の悲痛な鳴き声が広域に亘って響き渡ることとなる。


数時間後、丹念な入浴によって、血と泥に塗れさながら棘の如く逆立っていた毛並みがサイベリアン種特有のふわモフさを取り戻した頃。最早抵抗する気力も削がれ茫然自失といった状態の一夜に、彼女をそうした張本人が声を掛けた。

「(落ち着いたっぽいし自己紹介しよか 名を名乗れ ちなみに私の名前は御船ノアでここの店長だドヤ)」
「名前…?…そんなものは無いし、必要も無い。私は1匹で生きるんだから、そんな他者との馴れ合いを前提としたシステムに組み込まれる道理はないだろ。」
「(まぁええわ一旦後回しな 決めにゃならんのはお前の処遇じゃ UGNに引き渡して保護が1番いいと思う、お前ほっとくとまた追われる暮らしに後戻りやぞええんか)」

UGN…聞いたことがあった。自分を追ってきた人間共がたまに口に出していた名だ、おそらく組織名だろう。そして目の前の女は彼らと繋がりがあるらしい。…彼女への不信は募るばかりであった。

「ハッ、そのUGなんとかいうのが何かは知らないが、私はそんな連中に与するつもりは無いぞ。私をしつこく追い掛け回した連中だ、捕まれば大方何をされるかは見え透いてる。お前は連中と繋がりがあるらしいが、少し助けた程度で私を手篭めにできると思ったら大間違いだ!」
「(こいつぁ困ったな ほなウチで働くのはどうや?衣食住ぐらいは担保してやるし嫌んなったら出てけばええ 金も出すぞ)」

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 4

チャットパレット