結論、天空の隼が全てを破壊しただけなのだが。
彼が所属していたセルは言わずもがな遺産を積極的に蒐集•利用する集団だった。
まだ瞳に光があった頃、影というものへの恐れから彼はエンジェルハィロゥの力を乱用した。
FHも隼もここまでは容認した。
しかしFHがより能力を伸ばそうと魁の体を改造しようと彼の体を手術室に搬入した時、隼は宿主以外の全てを破壊した。

──天空の隼は暗闇を忌避させるものだ。
これさえ無ければ、と彼は天空の隼を壊そうと、してしまった。
結果、彼は報復され、盲目の狙撃手となってしまった──。

具体的なことは何一つ不明。
自我と呼べるものはないが、ある一定のプログラムに沿って動いているものと思われる。
光を求め、影を忌み嫌い、契約者が思い通りにならなければ報復する性質を持つ。

神宮司とある程度連動している部分があると推定される。
隼の性質の一部、とりわけ影を嫌う特性は神宮司に引き継がれている。
逆に神宮司は気づいていないが、隼の片翼から胴にかけて深い亀裂が走っている。
彼自身にも左肩から腰にかけて深い傷が治らない。
流血すら止まらず、毎日の包帯交換が欠かせない状態だ。（このため彼は常に貧血•低体重である）
この遺産がFHによる神宮司の改造手術を拒んだのは自身が改造されることと同義だからだと思われる。

諜報担当。
彼自身はFHから脱走してUGNを頼れずに転がり込んできただけなので、あまり組織そのものに対する誠意はない。
力一つでのし上がれる環境自体は悪くないなと思っている。
「というか遺産なんて背負わされて全てがもうボロボロなのに、ロクな地位すら無かったら生きてる意味ないじゃん。」

なんだかんだ良家のボンボンの感覚が残っているのでスラムの人間と会話すると喧嘩になりやすい。
スラムだから物がない？敵全員ブチ殺して卸せばいいだけでしょ何言ってんの。
そんなワケで一回地雷を踏み抜いて刃傷沙汰になりかけた。
「俺は別に死んだってどうでもいいよ。君は死んだ方がマシな境遇になりかねないけど大丈夫？」
……と遺産を盾になんとか回避。
以来、思うところがあろうとなかろうと、構成員のメンバーには無関心を貫いている。

暗闇が怖くて、けれどもう自分の目に光が映ることはなくて。
発狂しながら毎日スラムの片隅で生きてるのか死んでるのか分からない状態で過ごしてた。
ついに起き上がれもしないほど心が病みきって物盗りが家とも呼べないような家に入って来て、
能力を使って殺した時だけ、天空の隼は満足したように背中の傷の痛みを少しだけ引かせた。

痛みなんて、暗闇の恐怖に比べればどうってことないのにね。

毎日毎日死にたくて自分の頭に拳銃をつきたてた。
何度太陽が上ったか分からない中、ようやく……ようやく引き金を引けた。
一瞬の痛みの後、意識が朦朧として「やっと開放される」と思った。

ぼんやり意識が浮上した。
痛みは無くて、天国だ！と喜び勇んでベッドから起き上がって、みた。

それは　ベッドじゃなくて
ただの　布団で

痛くて　頭じゃなくて　背中が　痛くて

死ねなかった