人間がうまれ文明を持ち出した頃、1体の植物型レネゲイドビーイングがおりました。
彼女はまだ出来立てのこの世界を知ろうと、彼女の手足となり目となる4体のレネゲイドビーイング「楽園樹」を産み出しました。
産まれた4体の「楽園樹」は、母の為にそれぞれの色と役割をもらい、人間と触れ合い始めました。

黒色を母から貰った彼女はより多くの人類と接触し、知見を深めて「妹たち」に人間の知識を与える任を受けました。
人間社会に降りた彼女は様々な場所を旅し、とてもとても長い旅の中様々な人達と交流を深めました。

色々な人たちと触れ合った彼女は、いつしか自分の役割に霹靂としてしまい、人間たちと深く関わるのをやめてしまいました。
彼女は人間たちと触れ合う中、人間の中には「綺麗」と「汚い」がある事に気付いてしまったのです。

心の擦り減った彼女は母から貰った役割を程々にこなしながら、吐き気のする「汚い」を見なくて済む場所を求めて、より多くの場所を旅しました。
けれどもどこを探しても見つからず、彼女は人間に対してある種の諦めを持ってしまいました。

ある時彼女は旅の中、一人のオーヴァードの旅人と出会いました。
何気ない話をする中、彼女は旅人の目的が「安らげる場所」であることを知りました。それを語る旅人の中に、不思議と「汚い」が無い事も感じました。
この人には今まで会ってきた人たちには無い何かがあるに違いない、そう感じた彼女は旅人の旅に付いていくことにしました。

旅人との旅は、彼女がいままで旅してきたものと変わりませんでした。
数千年と旅してきた彼女にとっては、どれも今まで経験してきたものだったのです。
それでも彼女は、旅人との旅をつまらないものだとは感じませんでした。

ある時、旅を続ける彼女たちはとある場所で、ひょんな理由からあるジャームを討伐することになりました。
討伐対象のジャームと相対した旅人は、深く悲しみ平常心を保つことが出来なくなってしまいました。
ジャームの姿は、過去旅人が重ねてきた「何か」の姿だったのです。彼女には、それを知る由もありませんでした。
動揺した旅人はジャームの攻撃で致命傷を負ってしまい、立ち上がれなくなってしまいました。

ジャームを討伐した彼女が旅人に近づくと、旅人の命が今にでも消えてしまいそうなこと、それに自分が悲しみを覚えていることに気が付きました。
旅人の命を消したくなかった彼女は、自分がとれる最後の手段として、旅人の命に自分の「宿り木」を植え付けました。
過去の旅人の身体を苗に、悲しみの素であった記憶を肥料に育つ宿り木は、旅人の命を繋ぎましたが、同時に旅人の身体を食らいつくしてしまい、彼女と同じ存在にしてしまいました。

旅人は助かりましたが、旅人という人と記憶は消えてしまいました。彼女が知る旅人は、もうそこにはいませんでした。
旅人と合わせる顔が無いと感じた彼女は、旅人ともう2度と会わないよう、遠く離れた所へ逃げるように旅先を決めました。
彼女は今も、消えてしまった旅人という存在と共に、終わらない旅を続けるのでした。