昔の経験もありかなり庶民的。安く済むなら安く済ませるし値が張る物なら代用品を探したりする。が、大事な物や人へのプレゼントには人一倍お金と気と時間をかける。

平和な時間が続くならそれで良いし、争いが無くなれば良いと思っている。思っているが…毎度何かしらに巻き込まれ戦闘を余儀なくされている。

他人の顔を見て行動する事が多く、その影響で自身の意見を心の中で抑え込む事がままある

幼少期に父が蒸発し、母と二人暮らしになる。が、母の夫に捨てられた失望と怒りの矛先はユウリに向かってしまい…ヒステリックになった母からは暴言と暴力を、一度落ち着いた母からは謝罪と偏愛と束縛を受けながら暮らしていた。

そんなある日、母が唐突に「旅行に行こう」と持ちかけて来る。違和感こそ感じたが、断れる訳もなくそれに応じた。

─楽しかった。
父こそ居ないもの、あの時のように家族で出かけ、笑うのは久し振りだった。
その日は日が暮れるまで遊び、笑い、そして帰りの車に乗った。
母が運転する車は心地良く揺れていて、気付けば夢の中に落ちていた。


それから、どれほど眠っていただろうか
顔を上げれば、母が運転席からこちらを見つめている。
見ると外はとうに暗く、月に照らされたそこには、冷たくこちらを見返すコンクリートと…ゆらゆらと揺れる水面があった。

きっと、何処かで間違えたのだろう。
何か言おうと頭を回す前に、アクセルを踏まれた車体は動き出し…冷たい海の中に沈んでいった。

…回らない頭の中でも、このままではマズいことだけは分かった。隙間から海水が入り込み、どんどんと空気が失われていく、逃げようとドアに触れるも、その試みは水圧によって拒まれた。

焦りが募る中、母を見れば…変わらずこちらを見つめる顔に、微笑みが浮かんでいるのが見えた
─何も、分からなかった。

─肺の中を水が満たすその感覚は、以外に苦しくは無かった。
死に近付く中、辛うじて動く目は何も考える事もなく、車窓から漏れ出る光を見上げる

…その日は、真っ白な満月が、空に浮かんでいた。




次に目が覚めた時、自分の身体は冷たい水の中ではなく、柔らかいベッドの上にあった。

見ればいつの間にか髪は白に染まり、あった筈の痣は消え…
そして、名前も知らない力を手に入れていた

研究セル『ツータイム』で実験体として利用されていた。