2歳の時に両親が亡くなった。
どうして死んだのか、何があったのか、まだ子供だった僕は何も知らずに孤児院に入れられた。
孤児院は院長の小さな国だった。教育という名目で虐待をするのが当たり前だった。
小学校でテストの成績が悪かった時は、躾と称して殴る蹴るの暴力や食事を抜かれることもあった。
中学生になった時には、感情は表に出さずただ淡々と作業をし続ける日々。
死ぬことは許されず、夢を見ることも許されない。
なぜ僕は生きているのだろう？
どうして僕は生きたいと思っているのだろう？
ずっと頭の中でグルグルと考えていた。

「お前の引き取り手が決まった」院長から急に言われた。
正直、どうでもよかった。
嬉しいという感情はなかった。
悲しいという感情はなかった。
ただ、何も感じなかった。

僕を引き取ってくれた人は、40代くらいの男性だった。
彼は、僕を見て驚いた表情をしていた。
何を驚いているのだろう？
僕は不思議に思いながら荷物を持っておじさんと孤児院を出た。

おじさんは『葉山誠一郎』と名乗った。
個人経営の喫茶店を運営してるらしく、彼から最初にもらったものはミルクコーヒーとカレーライスだった。
ミルクコーヒーは甘くて優しい味だった。