かつてギルドメンバーだった男

かつて、粗悪な密造酒を売りさばき、町の治安を悪化させていた男がいた。
密造酒そのものは男が製造していたが、その背後には地元ギルドからの強い圧力があった。
「しょぼくれた男だが、悪酔いできる程度の“ちょうど悪い”酒を造れる」──そう見込んだギルドのメンバーたちは、彼を囲い込み、密造酒の製造を強要していたのだ。
そんな歪んだ生き方を続けていた男は、ある出来事をきっかけに命を落とし、レネゲイドビーイングとして転生した。
生前は「William Bertrand」と名乗っていたが、再びギルドに目をつけられることを恐れ、姓を捨て、ただの「William」として新たな人生を歩んでいる。

うさん臭い男

地元フランスから逃げ出し、資産も身寄りもないまま辿り着いた男にとって、メヒコは決して優しい国ではなかった。
定まった住まいもなく、仕事がない時期には路上で眠ることもあり、土埃と草にまみれた姿を晒すこともしばしばだ。
身なりは粗雑だが、匂いには気を遣っているようで、他人に不快感を与えることは少ない。
それでも、不精髭と鋭い目つきが相まって、その雰囲気から“うさん臭さ”は拭いきれない。
そうした生活を続けていることもあって、裏社会の人間や半グレ、路上生活者などと、良し悪しはともかく一定の関係性を持っている。

UGNに協力する理由

悪人に囲まれ、気を緩めることすら許されない生活を数年にわたって続けてきたウィリアムにとって、FHや麻薬組織に身を置くなど、到底考えられることではなかった。
自分を「根は善人」などと言う気はないが、それでも悪人たちと共に生きるより、中庸な者や善良な人間と過ごす方が、ずっと息がしやすかった。それだけの善性は、彼の中に残っていたのだ。
そんなウィリアムにとって、メキシコシティ支部の事情は都合がよかった。
人材を選り好みできる余裕などないその支部では、かつてギルドに属していようと、死人の姿をとったレネゲイドビーイングであろうと、過去を理由に拒まれることはなかった。

その寛容さが、ウィリアムには心地よかった。

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