ウチは羽衣舞春。年齢？んー、いくつやろ…長いこと生きとぉから、よぉ覚えてへんわ。これでも警察官で、みんなからは｢武芸者｣なんて呼ばれたりもする。まぁウチもこんなんやし、そんな堅ぉなってんと、なかよぉしてな〜

キリッとした顔つきに、クセの無い真っ直ぐなセミロングの髪を後ろに結って作るポニーテールは、スーツ姿に良く似合う。背筋を伸ばし、真っ直ぐ前を見つめて歩くその姿は、誰が見てもさながら｢デキるキャリアウーマン｣を連想するだろう。
舞春の性格はとてもシンプルで、｢好きな物は好き、嫌いなものは嫌い｣。これ以上もこれ以下も無い。護るべきものは護るし、それを脅かすものは完膚なきまでに叩きのめす。非常に子供のような考えだが、舞春はこれを実行出来る強さを持ってるし、それゆえこの性格が変わることも無いのだ

今でこそゼノスエージェントだが、警察官という以上UGNと仕事をしたこともある舞春。この二つ名はそんな時に付いた。どんな相手にも物怖じせず、何事も真っ直ぐな意見を真正面からぶつけにいく舞春の性格。現代社会においてこれ以上にキツい人間は、恐らく法を犯している者だけだろう。
そんな舞春を嫌うUGNの連中が付けた二つ名は『Forever Honest(どこまでも真っ直ぐな少女)』。UGNの仇敵『FH』の名を冠するこの二つ名だが、当人は気にするどころか、興味も示さなかった…

これは彼女たちにとって少しだけ前のこと。中国の山奥で一人修行を行っていた時のこと。気配を感じた舞春は、瞬間身体を揺らす。常人ではその場から動いていないように見えるが、舞春はこの瞬間に『弾丸を避けている』。現に、舞春の背後の木には口径12.7mm、へカートⅡの弾痕が残っている。その後、追加3発の弾丸を同じように避けた舞春はシビレを切らし、弾丸の飛んできた方向に急行した。

向かった先に広がるのはまっさらな草原。そして、そこに佇む1つの『兵器』(戦争屋)。

｢なんでウチの修行邪魔するん？｣
｢あなたに用があってね。私の仲間になってくれない？｣
｢…あんな試すようなマネして、仲間になってくれると思たん？｣
｢あら、あれは『挨拶』みたいなもので、別に試したつもりはないわ。だって…あなたはあんなの、避けられて当然でしょ？｣
｢好き勝手言ってくれるなぁ…そないな事言われたら…本気出すしかないやん！｣

刹那、舞春が"消え"、その『兵器』に飛びかかった。どこからともなく来る怒りを力に変えながら。しかし、その『兵器』はその攻撃を簡単にいなすと、軽く距離をとり、ベレッタを2発放った。舞春には"当然"避けることが出来る弾。しかしその弾は、『兵器』の狙った通り舞春の右肩と左腿を貫いた。

｢…っ！｣
｢久しぶりでしょ、ここまでやられるの。…ただ、やっぱりその力、放っておくのは勿体ないわね。｣
｢余裕で勝っといて何言うとんn｣
｢…あなたの血への渇望、"永遠に"満たせるとしたら…？｣

その一言で、舞春は『兵器』について行くことに決めた。毎日のように理性を保ちつつも血に飢えていたのは事実。そんなことを言われてはついて行く他なかった。加えて、この『兵器』か嘘を言っているように見えなかった。舞春の真っ直ぐな性格。それを知ってか知らずか、この『兵器』も真っ直ぐに交渉してきた。それだけで、この『兵器』について行く理由は十分だった…