ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

夢乃 七重 - ゆとシートⅡ for DX3rd - ゆと工公式鯖

残響(イメージズ・アンド・ワーズ)夢乃 七重(ゆめの ななえ)

プレイヤー:ちあり

自由登録 基本ステージ

年齢
24
性別
星座
蟹座
身長
158
体重
血液型
AB型
ワークス
フリーター
カヴァー
フリーター
ブリード
ピュアブリード
シンドローム
エンジェルハィロゥ
HP最大値
24
常備化ポイント
2
財産ポイント
0
行動値
14
戦闘移動
19
全力移動
38

経験点

消費
+48
未使用
28
フルスクラッチ作成

ライフパス

出自 父母共に死去しており、後見人の親戚は不干渉である。
天涯孤独
経験 中学二年生の頃に、一人親だった父、夢乃九が他界した。
永劫の別れ
邂逅 孤独の身となってから役所回りをしていた時に神城早月と出会い、時折世話を焼いてもらっている。オーヴァードの能力についても相談している。
家族
覚醒 侵蝕値
渇望 17
衝動 侵蝕値
嫌悪 15
侵蝕率基本値32

能力値

肉体1 感覚6 精神2 社会1
シンドローム0×2 シンドローム3×2 シンドローム1×2 シンドローム0×2
ワークス1 ワークス ワークス ワークス
成長 成長0 成長 成長1
その他修正 その他修正 その他修正 その他修正
白兵1 射撃 RC 交渉
回避 知覚 意志1 調達
運転:二輪2 芸術:音楽3 知識:レネゲイド2 情報:ウェブ1

ロイス

関係 名前 感情(Posi/Nega) 属性 状態
Dロイス 光使い このDロイスはエンジェルハィロゥのシンドロームを持つキャラクターしか取得できない。あなたは≪光の指先≫のエフェクトを1レベルで取得する。これには経験点は必要ない。また、通常のルールにしたがってこのエフェクトを成長させることもできる。≪光の指先≫はエンジェルハィロゥのエフェクトとして扱う。
固定ロイス 父親:夢乃 九(ゆめの きゅう) 遺志 悔悟
固定ロイス 友人:牧島 聡子(まきしま さとこ) 友情 疎外感
シナリオロイス 友人:五十嵐 高嶺(いがらし たかね) 友情 劣等感
篠崎 綾音 親近感 劣等感
紅 美月 有為 恐怖
暮内 棗 好奇心 嫌悪

エフェクト

種別名称LVタイミング技能難易度対象射程侵蝕値制限
リザレクト 1 オートアクション 自動成功 自身 至近 効果参照
(Lv)D点HP回復、侵蝕値上昇
ワーディング 1 オートアクション 自動成功 シーン 視界 0
非オーヴァードをエキストラ化
リフレックス:エンジェルハイロゥ 3 リアクション シンドローム 自身 至近 2
反射能力を発揮するエフェクト。組み合わせた判定のクリティカル値を-Lvする(下限値7)。取得時に自分の取得しているシンドロームから一つを選び、≪リフレックス:サラマンダー≫のように記述して、シンドロームごとに別エフェクトとして扱う。また、このエフェクトは選択したシンドロームのエフェクトとして扱うこと。
神の眼 1 リアクション 〈知覚〉 対決 自身 至近 1
全知覚を使って攻撃を避けるエフェクト。このエフェクトを組み合わせた判定で、あなたはドッジを行える。
鏡の中の人形 2 オートアクション 自動成功 単体 視界 3
幻像を操って、対象に的確な動作を指示するエフェクト。対象がリアクションとしてドッジを行い、失敗した直後に使用する。あなたは、対象の代わりに、リアクションとしてドッジを行う。これに成功すれば、対象がドッジに成功したかのように回避する。このエフェクトは1シナリオにLv回使用できる。
ミスディレクション 2 オートアクション 自動成功 単体 視界 5
光学的な囮を作り出し、広範囲の攻撃から身を守るエフェクト。対象が行う「対象:範囲」または「対象:範囲(選択)」の攻撃の判定が行われる直前に使用する。その攻撃の対象を「対象:単体」に変更する。対象はあらためて選択させること。このエフェクトは1シナリオにLv回まで使用できる。
ヘヴンアイズ 1 オートアクション 自動成功 単体 視界 4 80%
光の屈折を操り、他者の行動を支援するエフェクト。対象が判定を行う直前に使用する。その判定の達成値を+10する。ただし、あなたは5点のHPを消費する。このエフェクトはあなたを対象にできず、1シーンに1回まで使用できる。
ミラーイメージ 2 セットアッププロセス 自動成功 自身 至近 4 80%
鏡像を作り出し、敵を攪乱するエフェクト。そのラウンドの間、あなたの行うドッジの判定のクリティカル値を-1する(下限値6)。ただし、そのラウンドの間、あなたの行う攻撃の攻撃力は-5される。このエフェクトは1シナリオにLv回まで使用できる。
ウサギの耳 1 メジャーアクション 自動成功 自身 至近
聴覚の指向性を高めるエフェクト。たとえ雑踏の中であっても、遠く離れた場所にいる人物のささやき声を聞くことができる。また、特定の音のみを聞き分けることも、10キロ以上離れた場所で落ちた針の音を聞くことも可能。GMは必要と感じたなら、<知覚>による判定を行わせてもよい。
光の指先 5 メジャーアクション
リアクション
シンドローム 2 Dロイス
光を操る技術に長けていることを表すエフェクト。組み合わせた判定のダイスを+[Lv+2]個する。

コンボ

残響(イメージズ・アンド・ワーズ)

組み合わせ
リフレックス:エンジェルハイロゥLv3神の眼Lv1光の指先Lv5
タイミング
リアクション
技能
知覚
難易度
対決
対象
自身
射程
至近
侵蝕値
5
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力
100%未満
6+7
7
1
100%以上
6+8
7
1

C値-3。ドッジを知覚で判定。判定ダイス+7個。

全知覚を使って攻撃を避けるエフェクト。

聴いてよ(テイク・ザ・タイム)

組み合わせ
鏡の中の人形Lv2
タイミング
オートアクション
技能
難易度
自動成功
対象
単体
射程
視界
侵蝕値
3
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力

対象のドッジ失敗直後に使用。代わりにドッジ判定。1シナリオにLv回まで。

幻像を操って、対象に的確な動作を指示するエフェクト。

空蝉!(プル・ミー・アンダー)

組み合わせ
ミスディレクションLv2
タイミング
オートアクション
技能
難易度
自動成功
対象
単体
射程
視界
侵蝕値
5
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力

「対象:範囲」or「対象:範囲(選択)」の攻撃判定直前に使用。攻撃対象を「対象:単体」に変更。1シナリオにLv回まで


光学的な囮を作り出し、広範囲の攻撃から身を守るエフェクト。

夏の日(アナザー・デイ)

組み合わせ
ヘヴンアイズLv1
タイミング
オートアクション
技能
難易度
自動成功
対象
単体
射程
視界
侵蝕値
5
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力

対象の判定直前に使用。達成値+10。自身のHP-5。1シーンに1回まで。

光の屈折を操り、他者の行動を支援するエフェクト。

生存本能(ラーニング・トゥ・ライヴ)

組み合わせ
ミラーイメージLv2
タイミング
セットアッププロセス
技能
難易度
自動成功
対象
自身
射程
至近
侵蝕値
4
条件
ダイス
C値
達成値修正
攻撃力

ラウンド間ドッジのC値-1、攻撃力-5。1シナリオにLv回まで


鏡像を作り出し、敵を攪乱するエフェクト。

一般アイテム常備化経験点種別技能解説
サーチレーダー 2 0 その他 電磁波によって周囲の存在を探知する装置。サイズは携帯電話ほど。あなたが行う<知覚>判定の達成値に+1する。

経験点計算

能力値 技能 エフェクト アイテム メモリー 使用総計 未使用/合計
10 3 137 0 0 150 28/178
侵蝕率効果表

現在侵蝕率:

容姿・経歴・その他メモ

設定

ダウナー気味な人生諦め系フリーター。
高校卒業後にメジャーデビューしたものの、4年後に解散。
当時のメンバーも徐々に疎遠になり、内向的な性格に拍車をかけることになった。
趣味でギターを触ってはいるが、もう何もうまくいく気がしない。貝になりたい。

・母親が3歳の頃に病死、父親が14歳の頃に自殺。兄弟はおらず孤独の身。
 ┗未成年後見人として叔母が選任されるが、不干渉。父親の不幸があってからはずっと実質一人暮らし。
 ┗父の死亡届や遺産分割の手続きで役所回りをしていた時に神城早月に見かけられ、時折世話を焼いてもらっている。
  オーヴァードの能力についても相談している。
・小学校の頃に死にかけのセミ(実はEXレネゲイド)と接触し、レネゲイドウイルスに感染。
 父親の不幸を機に活性化し、オーヴァードとして覚醒した。
 ┗セミの生存本能が深く作用し、危険を避ける能力に結び付いたイメージ。
・生前バンドをしていた父親から譲り受けたギターが趣味。
 ┗父親の死以降内向的な性格となっていたPCに、NPCである五十嵐高嶺、牧島聡子が話しかけ、
  中学二年生にバンド"stray sheep"の結成に至った。
・バンドもうまくいかないし、人付き合いも苦手だし、オーヴァードといっても回避特化でろくに戦えるわけでもないので、
 24歳現在は雑にコンビニ店員とかをして食いつないでいる。

◇"stray sheep"当時のパート

・七重 ギター
・高嶺 ベース/メインボーカル
・聡子 キーボード/コーラス/ドラム(打ち込み)

経歴

「死ぬって、なんなんだろう?」

自我の発達とともに、誰しもが到る疑問。
そんな思考に(わたし)が傾倒したのは、周りより少しだけ早かった。

    ◇◆

小学二年生の夏。
昼下がり。友達と別れ、七重はひとり家路をたどった。
日光はいっそ厭味なほど熱を放ち、アスファルトの照り返しがじわじわと体力を奪う。
拭えど額に浮かぶ汗は、それこそが生きている実感ではあるものの、幼い彼女がそれに情緒を感じるのはまだ難しい。
うだるような暑さに辟易しながら、寄り道もせず歩く少女。おうちまであと少し、と、意気込んで一歩を踏み出す。
そんな彼女の目に留まったのは、歩道の隅に置き去りにされた異物。
――セミだった。
ひっくり返った姿勢で、物音ひとつ立てずにそこにいる。
いっぱいに伸びた肢が僅かに痙攣を繰り返す様は、もののあわれを誘う情景だった、かもしれない。

    ◇

わたしには母親がいなかった。
わたしが三歳の頃に病気で死んでしまったのだと、お父さんから聞いていた。
人は、死んでしまうと、もう会えないのだという。実際その通りなのだろう。
現にわたしは、その教えを聞いて以来、一度も母親と再会できていない。
「死」という別れの概念を、幼いわたしは、経験則的に理解した…………。

とはいえ。
お母さんのことは正直よく覚えていないし。
家に一人でいるときは少し寂しいこともあるけれど、お父さんはなるべく家を空けないようにしてくれていて、
たくさん気にかけてくれているのが子供ながらにわかっていた。
ホームビデオに写る知らない顔の女性の、優しく細めた目を見ていると、ふしぎと涙が流れてしまうこともあったけれど。
隣で同じように涙をたたえたお父さんが優しく頭をなでてくれれば、とても温かい気持ちになった。
だから、大丈夫だった。とにかく、全然、大丈夫だった。

    ◆

物言わぬセミは、ただそこにいる。抜け殻ではないが、魂の抜け殻。
熱を帯びたアスファルトの上で、土に還ることもできずとどまっている。

死ぬと、もう会えない。
幼く、単純な理解で。しかしそれがゆえに――矛盾なく正しき、絶対のルール。

しゃがみこんで、じっと様子を見る。なぜだか頭がくらくらする。
おそらく名前を付けられたことすらないだろう、野生のセミとの突然の出会いと別れに、七重は視界が眩むほどの動揺を覚えた。
周囲から聞こえるセミの鳴き声は夏の風物詩たる明るい印象をすっかりひそめ、まるで同族の死を悼む挽歌かのように、混乱した頭に鳴り響く。
ふらつく身体で立ち上がることもできず、七重はただ、死を見つめていた。

しかし、数秒、あるいは数分そうしていた頃だろうか。
ジジッ」と、特徴的な音が耳朶を打った、その直後。
セミは勢いよく飛びあった。
驚く間も与えず、跳躍の勢いのまま、セミはその全身で七重の額に突進する。反射的に「ぐえっ」と、いささか可憐さに欠ける悲鳴が上がった。
一寸の虫にもなんとやら。まだ七重の語彙にはないその教訓通りに、全霊の力で攻撃を繰り出したのだ。
人間に肉体的なダメージを与えるにはいささかもの足りないはずの一撃は、しかしその少女にはまさに効果覿面だった。
なにせその虫は、彼女の信じる絶対のルールを無視したのだから。
しんでたのに、うごいた――と、うわごとのように呟いて、七重はそのまま、通学路に仰向けに倒れこんだ。

    ◇

「熱中症ですね」
ほどなくして父親に発見され、担ぎ込まれた病院で下された診断結果はそれだった。

あの頃のわたしは、物思いにふける癖みたいなものがあったらしく、ずいぶんお父さんを困らせていたように思う。
そのたびにお父さんは嫌な顔一つせず助けてくれた。
ひとり親で娘を育てるのが、想像を絶する苦労だったろうというのは……今になるとよくわかる。

今になると、よくわかる。
あの頃は、よくわかってなかった。
お父さんが、どんな思いでわたしを育ててくれているのかなんて。

お母さんを失った悲しみに、毎晩一人で耐える恐怖も。
身体の弱いお母さんに無理をさせてしまったわたしに対する、やり場のない怒りも。
わたしの面倒を見るために、大好きな仕事を辞めてしまった無念も。
わたしには、まるで全然理解できてなかったんだ。

    ◆

中学一年生の春。
無事中学生になった七重は、クラスメイトから孤立していた。
提出物の受け渡し以外で話す級友などおらず。
休み時間はイヤホンをかけ、眠ったふりをする。そんな毎日。

客観的に判断すれば、彼女の人間性に大きな問題はなかったといえる。
しかし、父親の仕事の都合による転勤がちょうど中学校に上がるタイミングだったことや、
転校先の学校が地元小学校からのエスカレートが殆どで、若干閉鎖的な空気感だったこと。
くわえて彼女の気質として、その閉塞感を破る程のコミュニケーションを図ることが苦手だったことなどが災いした。

いじめはない。ただなんとなく、腫れ物のように距離を置かれる学校生活。
まだ幼い彼女にとって、当然歓迎すべき事態ではなかったものの……とはいえ実のところ、然したる問題もなかった。
彼女には、没頭できるなにか(音楽)があったからだ。

    ◇

あの頃のわたしは、部活にも入らず習い事もせず、かなり模範的な帰宅部だった。
かといって、無趣味ってわけでもなかった。って、勿体付けることでもないけど。まあありていに言って、音楽だ。これは聴く方も、する方も。
小四くらいだっただろうか。お父さんから譲ってもらったギターを振り回して、毎日のように遊んでいた。
大学生の頃のお父さんが、清水の舞台からダイヴやらモッシュやら決めるつもりで買ったらしい、ヴィンテージのジャズマスター。
年季と使用感がしっかり見た目に出ていたが、子供のわたしの目にはそれがかえって大人のカッコよさとして輝いて見えて、宝物のように大事に扱った。
ロングスケールの手触りは年齢的に少し酷なサイズ感だったが、そんなこと、一切気にせず、とにかく沢山触った。

お父さんはわたしが少し難しいフレーズを弾くと、宝くじでもあたったみたいに喜んだ。
今にして思えば拙い演奏だったが、褒めて伸ばすお父さんの手法にわたしはすっかり気を良くして、どんどん教えをねだるようになった。
難しいテクニックに挑戦するのが楽しくなって、いい演奏もたくさん聞いた。イングウェイ、スティーヴ・ヴァイ、インペリテリ、ほかにもたくさん。
なかでも特に手になじんだのは、お父さんの作った曲だった。血は争えないってやつかな、なんて楽しそうに笑ってたのが記憶に残っている。
そんな感じで。中学に入るころには、年齢を考えたら割とうまい方になってたと思うけど、それでもお父さんには全然かなわなかった。

sevens(セブンス)。お父さんがやってた、4ピースのプログレ系ロックバンド。
長いインディーズの下積みを経て、着実にファンをつけてメジャーデビューした実力派バンド。
インディーズ時代はバリバリの実地派で、超ハイペースでツアーをしまくってた、らしい。
もう解散しちゃったけれど、わたしの大好きなバンドだ。子供の頃から、これからもずっと。
最近は……色々思い出しちゃうから、あんまり聞いてないけれど。

    ◆

七重が六歳の頃のことだ。
sevens(セブンス)は、ファンクラブのHP上で唐突に、活動停止を宣言した。

日本の音楽シーンにおける技巧派バンドの商業的地位は、実のところあまり高くない。
華やかなメジャーデビューから数年、最低限軌道に乗った活動をしてはいたものの、
その反面、ブレイク以降の再ヒットを狙うことができずに伸び悩んでいた。
また、メジャーデビューによってコアなファンの離脱が年々散見されており、何らかの手を打たなければ先細りは確実だった。
先の見えない暗雲の中。バンドは、そんな状況に置かれていた。
インディーズ時代のように地方を回って、小規模な箱でワンマンライブを打ちまくろう、という意見もあったが、
そうするとどうしても、家を空ける時間が長くなってしまう。
不安定な収入と、過密になるスケジュール。幼い娘を一人養うには、あまりに歪み(ひずみ)が大きい。
幾度も、幾度も相談を重ねた結果、sevens(セブンス)は、バンドの解散を選んだ。

SNSや業界誌では、引退を華々しく飾る美辞麗句が並べられた。
商業的大成功を収めたプログレバンドの勇退である、立つ鳥跡を濁さず、と。
その裏で強いられた苦渋の決断を、第三者が推し量れないのは当然無理からぬことだろうが。
いずれにせよ、この日。彼らのバンドは天寿を全うし、終わりを迎えることとなった。

現代はコンテンツ飽和が騒がれて久しい時代だ。
どんなセンセーショナルな話題も、然程の時を置かず、次なる話題でどんどん塗り替えられていく。
新バンドの発掘、各地のフェス情報、大物アーティストとの対談コラム、人気機材の紹介。
専門誌やWebは無数の記事で上書きされ、やがてsevens(セブンス)の名前が話の種に出ることさえ見られなくなった。

そんな風に、世間の関心もすっかり過去になった頃。
業界人たちは、歴史に埋め立てられた彼らの記事を、再び引っ張り出すことになる。

sevens(セブンス)のギター、夢乃九(ゆめのきゅう)の自殺報道を契機として。

    ◇

まだ若いのに。大変だったね。
口々に並べられるテンプレじみた追悼のフレーズが、私の頭をすり抜けていく。
サジェストされた興味ない曲みたいに適当に聞き流しながら、わたしは参列者を早送りでスワイプしていった。
未成年が喪主だなんて、えらく大層な肩書をいただいたけれど、実際の手続きは後見人の親戚が全てやってくれているのだ。
わたしのやることといえば、その親戚の面倒そうな顔や次々現れる参列者にヘタな愛想笑いを返して、気味悪がられたりすることくらいで。随分と、楽なものだった。

本当に。
あんまり楽だから。

大切な人が一人死んで、
大した苦労すら残らないなんて、
いやだな、とか。

そんな余計なことばっかり考えてしまうんだ。

とりとめのない思考が、頭の中に渦巻いて止まない。
耳についた音楽が離れないときみたいな、あの感覚。

ぐるぐると、
ぐるぐると、
ぐるぐると。


気付いたら私は、受付を離れ、ぽつぽつ降る小雨の中に足を進めていた。
別にどこへ行く気もなかったんだけど、ここにいる意味が分からなくなった。
そのときのわたしには、あの無機質な箱の中にお父さんが眠っているとは、どうしても思えなかったんだ。
いや、違うのかな。ただ単に、棺桶の中を確かめたくなかっただけなのかも。
それを本当にしてしまったら……本当に、もう会えなくなる。そんな気がしたのかもしれない。
いずれにしても、わたしは大切な葬儀に背を向けて、一人勝手に家に向かった。
踏みしめた地面はぬかるんでて、最悪だった。

お父さんはきっと、ずっと疲れてたんだと思う。
ずっと、またギターが弾きたかったんだと思う。
ずっと、またお母さんに会いたかったんだと思う。
それでもあの日まで生きてくれたのは、わたしが一人で生きられる年齢まで、待ってくれてたんだと思う。
本当に、むかつくほどに、いい人だと思う――なんて。

思わない。
思えない。
そんなの、思えるわけがない。

やがて勢いが増してきた雨の中、ごちゃごちゃの頭を抱え、ぐちゃぐちゃの格好で、わたしは家に向かって走った。
玄関を勢い良く開き、奥へ。スタジオ代わりに使っていた部屋には、いつもお父さんがいた。すぐに扉を開く。けれど。
そこにお父さんはいない。
今は、いない。
これからも、いない。

これからはもう、いないのだ。

お父さん。
お父さんが、いつか教えてくれた。死ぬと、もう会えないって。
お父さん。お父さん。
わたしは、お父さんがいてくれたから大丈夫だった。
お父さんは、わたしがいても大丈夫じゃなかったの?
お父さんは、わたしともう会えなくても大丈夫だったの?
お父さんは――

――ッ!!」

口をつく言葉が、
憎しみが、怒りが、蔑みが、無念が、
悲しみが、嘲りが、痛みが、無力が、
高ぶった感情が、
呟いても、喋っても、怒鳴っても、
身体から追い出せず、
わたしは、
泣きながら、
ギターに縋りついた。

アンプを乱暴に起こし、ゲインをあげると、
ジジッ」と、特徴的な音が鳴った。
真空管のハムノイズだ、いや、ちがう、もっと昔に聞いた何か。
とっさに何か、そう。

夏の日が見えた。

そうだ、熱中症で死にかけた、あの夏の日。
ゆらゆらと。視界が波立つ。
スピーカーが奏でる断続的なそのノイズが、あの日別れたはずのセミの幻影を見せる。
幻影? 違う。これは陽炎だ。だって、こんなにも――

照り付ける熱で身体が熱い。
喪服代わりに着てた制服も、息苦しくって、ブレザーを脱ぎ捨てた。
セミの合唱まで聴こえてきた。かまわない、騒がしいなら、ちょうどいい。
あの日の挽歌を、今度はわたしが歌うんだ。

激情に任せて、ピックを振り下ろした。
ひときわ大きく息を吸う。肺が焼けるような感覚は無視して叫ぶ。
タッピングもスウィープも忘れて、遮二無二、バカみたいに音をかき鳴らした。
大好きなリフ。ツーコーラス。終わったらギターソロだ。お父さんに初めて教えてもらったフルピッキング。
なぜだか、隣にお父さんがいるみたいに感じて、ふいに肩の力が抜けた。
そうだ、ここは冷静に、一音一音粒だたせて、リズムキープに気を付けて、
あ、ピックずれちゃった。はは、力加減かフォームに問題があるんだな。
ピックの向きはもっと平行気味に、ピックを挟む指と、振る腕の力加減に気をつけないと。バランスだよ。
そうだった。テンポが速くなるとつい雑になっちゃうんだよね。うん、うん。歪ませてると多少ごまかせちゃったりするしね。
でもね、わかる人にはわかるもんだよ。聴こえてくる音もそうだけど、うまく弾けてないなあって僕らが思ってるとね。
なんとなーくイヤな感じが、聴いてる人にも伝わるんだ。だから、七重。

『自分を、ごまかしちゃだめだよ』

洪水みたいな音の中。
つま弾く音の一粒一粒に、お父さんの姿(イメージ)を見た。お父さんの言葉(ワード)を聞いた。
たしかにここにいた。お父さんがいた。音楽の中に、いた。
死んでいても、また会えた。
あはは、なにが、自分をごまかしちゃだめ、だよ。
自分が一番、自分に嘘ついてたくせに…………。

大粒の涙がこぼれ、高く構えたジャズマスターのピックガードがそれをはじく。
もうそれすら音楽に聴こえてきて、おもわず手を止めて笑った。
鳴いて、笑って、泣いた。
もう、セミの鳴き声は聴こえなかった。
それでも。

わたしの頭の中で、まだ残響が止まない。

だれかが言ってた。ロックは死なない。とか、なんとか。
みんなが言ってるなら、そうなのかもしれない。けど、わたしにとってはそうじゃない。
ロックは死ぬ。
ロックじゃなくても、音楽は死ぬ。
音楽じゃなくても、虫だって、人だって、なんだっていずれは死ぬ。
死は、とても怖いものだ。でも、絶対じゃない。だってわたしは、お父さんに生かされた。
お父さんは、死にたいくらい悩んでても、辛くても。わたしを生かすために、これまで、ここにいてくれた。
だからわたしは生きよう! 生きてみよう、生きて、生きてみて。
それから、できるなら。
お父さんのように、誰かを生かせるような人間になろう。

お父さんがくれた、音楽で。

    ◆

暑い暑い、真夏の一週間。
そこで費える生命を、果敢ない最期だと感じるものは多いだろう。
ならば、天寿を全うしたセミ、彼ら自身はどう感じているのだろうか。
通説を述べるならば、彼らに感情は備わっていないと言われている。
中枢神経系の造りやニューロンの数の違い。届きうることのない種族の壁がそうさせるのだと。

しかし。
私は偶然にも、その壁を越える機会に恵まれた。
それを成したのは、未知と可能性の因子――レネゲイドウイルス。
後に理解したことではあるが、当時の私は、EXレネゲイドと呼ばれる存在となっていた。
いつから、なぜそうなったか。それは全く分からない。私の体には記憶や思考を保管しておく機構が備わっていなかったからだ。
理性も、記憶も、感情もない。ただ、衝動のみで種族の壁を超越した、そんな歪な存在。

だが、はっきりと憶えていることがある。
暑い夏の日。身を灼く太陽の熱。どれほど力を入れど、動くことのなくなった羽。機能を失った体。
肢が、幹から離れる。落下する。長く憧れ、そして遂に一時近付いた空。また、離れてゆく。

生きたい。
ただ、生きたい。

そう強く願ったことを、憶えている。
名もなきセミの不相応な願いは、最期に一つ、奇跡を生んだ。
役目を終えたはずの私の羽に、もう一度羽ばたく力をくれた。
焦がれたあの空に、近付くための能力(エフェクト)を。

まあ、その奇跡の結果は、全くもって私が想定していたものではなかったが。
しかし、人間の仮宿に住まう一片の因子となり果てたこの私は、それでも決して不幸ではないのだろう。

これほどまでに、死を厭う宿主に巡り合うことなど……それこそ、奇跡でも起きない限り、あり得ないのだから。

ともあれ、この日。七重のオーヴァードとしての能力が開花した。
危険を避けることに特化しすぎた能力は、私の願いがそうさせたのか、彼女の誓いがそうさせたのか。あるいは、その両方か。
いずれにせよ、元は野生の身としては、少なからず抵抗の手段を持つべきという感覚にもなるが。
七重にとっては、これが正解なのだろう。
不戦もまた、立派な戦いなのだから……というのは、少々身内贔屓に過ぎるかもしれない。

宿主の覚醒。
その気配と反比例するように、眠りに近づく意識。
最後によぎったのは案外そんな、益体もない内容だった。

    ◆◇

まあ、そんな感じで、中学二年生にして強い強い決意表明をした私は、それから頑張って、頑張って、頑張った結果……。
いまは夢破れて、コンビニで毎日レジを早弾きしています。うまいこと言ったでしょ。はは。
はぁ…………。

生きるって、なんなんだろう。

HO情報

PC①用ハンドアウト
シナリオロイス:五十嵐 高嶺(いがらし たかね) あるいは 牧島 聡子(まきしま さとこ)
カヴァー/ワークス 自由/自由(UGN勤務者も含めて可)

キミは音楽を愛する社会人、そしてイリーガル(あるいはUGNエージェント)だ。
過去にはスリーピースバンド stray sheep としてプロ活動していたこともある。

ある日、キミはとあるアーティストのライブを観覧しに行ったが
アンプ(スピーカー)の落下というトラブルの為に途中で切り上げとなってしまった。
その会場を出ようとしたとき、キミは
しばらく音信不通だったかつてのバンドメンバー、そして親友の、五十嵐高嶺と偶然再会する。

今、目の前にいる彼女は君がよく知る五十嵐高嶺とはすこし様子が違っていた。

※PC①は五十嵐高嶺、牧島聡子とスリーピースバンド、stray sheepを組んでいました。
 6年前、高校卒業と同時にプロデビューし、4年前に解散しています。

◇『五十嵐 高嶺(いがらし たかね)』について

PC①の親友。24歳。
高校在学時からバンド活動などで音楽に触れ続けてきた人物だ。
高校卒業後に PC①、そして 牧島聡子 とバンド"stray sheep"でプロデビューした。当時のパートはボーカル。
バンド解散後はソロで活動を始めたらしい、というところまではPC①も聞いているのだが
彼女が連絡を断ってしまったこともあり、現在どうしているのかは不明。

◇『牧島 聡子(まきしま さとこ)』について

PC①の親友。24歳。
かつてはPC①、五十嵐高嶺と共にバンド"stray sheep"のメンバーとして活動していた仲間。
当時の担当はコーラスと作詞作曲。
解散してからはアーティスト活動を離れている。

バンドを解散した後もしばらくはPC①と交友があったが、
このところは忙しいようで何年も連絡を取っておらず、彼女に関しても近況がわかっていない。

◇『stray sheep』について

PC①が五十嵐高嶺、牧島聡子と組んでいたスリーピースバンド。
高校卒業後にプロデビューし、「みずみずしい感性を持った10代のバンド」として注目を集めかけていた。
しかし、デビュー以降はこれと言ったヒットを出せることはなく徐々に勢いは停滞。
最終的に4年前に五十嵐高嶺が解散を宣言したことで活動は終わりを告げた。

セッション履歴

No. 日付 タイトル 経験点 GM 参加者
フルスクラッチ作成 20
1 2023-08-05 何度でも、アンコールを 28 もこもこ PC1:ちあり/PC2:ごま飯/PC3:藤和

チャットパレット