容姿・経歴・その他メモ

「俺の人生って……何のためにあるんだろう？」
「なんで、俺はまだ生きてるんだろう……？」

あの頃は、とても幸せだった。
優しい両親がいて、元気な妹がいて。毎日が笑顔で満ちていた。

父に空手を教わり、母と一緒に料理をし、妹とは公園で走り回った。
父は医者として多くの人を救い、その姿を誇りに思っていた俺は、将来は自分も医者になるんだと、父に勉強を教えてもらっていた。

母は身体が弱かったが、誰よりも優しい心を持っていた。
俺たち兄妹をいつも温かく見守ってくれていて、その笑顔は今でも鮮明に覚えている。

妹はお転婆で、いつも俺の手を引っ張ってどこかへ連れまわしていた。
そんな妹が、照れながら「誰にも言っちゃだめだよ」と、将来の夢を話してくれたのは――あの夜の、前日だった。

今となっては、語るほどのことでもないのかもしれない。
どこにでもある、ありふれた――けれど、確かな“悲劇”。

あの夜、俺はすべてを失った。

ジャームに家族を殺された。
言ってしまえば、それだけのことだ。

俺だけが、オーヴァードに覚醒して生き残った。
だが、それは家族が殺された“あと”だった。
誰一人守れず、敵を倒すこともできなかった。ただ――生き残っただけ。

家は壊され、帰る場所も失い、呆然としていた俺を保護したのは、後からやってきたUGNのエージェントだった。
あの時の記憶は曖昧だが、泣き叫び、罵声を浴びせたことは覚えている。

「なんでもっと早く来てくれなかったんだ」
「どうして、みんなを助けてくれなかったんだ」

そんな理不尽な言葉にも、その人は真摯に向き合ってくれた。
自分は何も悪くないのに、「すまなかった」と頭を下げてくれた。
その姿に、張り詰めていた心が少しずつ解けていき、俺はようやく、自分が“本当に家族を失った”ことを認識して――情けなく泣き喚いた。

その後の数日間、俺は部屋に閉じこもったままだった。
説明を受け、この世界の真実と、家族を奪った“化け物”の正体を知った。

喪失の痛み、世界の裏側への驚き、そして得体の知れない恐怖。
感情がぐちゃぐちゃに渦巻いて、思考もまとまらず、自問自答を繰り返す。

「俺の人生って……何のためにあるんだろう？」
「なんで、俺はまだ生きてるんだろう……？」

ぐるぐると思考を巡らせるたび、浮かんでくるのは、あの頃の記憶だった。

「一夏なら、多くの人を助けられる立派な医者になれるよ」
――大きな手で頭を撫でてくれた、父の声。

「あなたたちが笑っているだけで、私は幸せなの」
――優しい表情で語りかけてくれた、母の笑顔。

「わたしのゆめはね、けーじさん！　わるものから大好きなみんなをまもるの！」
――照れながら夢を語ってくれた、妹の真っすぐな瞳。

ああ、そうか。
俺に残されたものは、“家族の想い”だけなんだ。

――それを、継ぐんだ。

独りよがりで、自己満足かもしれない。
だけど、それでも構わない。
それが、唯一生き残った俺にできることだから。
俺にしか、できないことだから。

「誰かの笑顔を守れるように」
「誰かの大切な人を、失わせないように」

この世界は、不条理に満ちている。
理不尽が、唐突に牙をむく。
すべてを守ることはできない。俺は、そんなに強くはない。

だけど――
せめて、目の前で苦しんでいる人くらいは、助けられる人間でありたい。
もう、無力な自分のままでいたくはなかった。

未来への決意を固めた俺は、すぐに行動を開始した。
立ち止まっている暇はない。
俺は弱い。だからこそ、強くならなければならない。

UGNに加入し、訓練を受けた。
それだけでは足りず、危険を承知で実験にも参加した。
少しでも強くなれる可能性があるのなら――迷わなかった。

どれほど苦しくても、辛くても、家族のことを想えば乗り越えられた。
みんなが受けた痛みに比べれば、こんなものはどうってことない。

そして俺は、長い年月をかけて手に入れた。
守るための「力」を。

俺は生き続ける。戦い続ける。
表向きは教師として。裏ではUGNのエージェントとして。
俺にできる、精一杯の力を尽くして――。

――それが、俺“守護者（ヴェヒター）”の、生きる意味なのだから。

履歴

・12歳　 家族をジャームに皆殺しにされる。
　　　　UGNに拾われて訓練の日々に明け暮れる。
・13歳　 実験に参加。ロストナンバー。当時の呼び名は“neunzehn（ノインツェーン）”。白髪、赤目になったのもこの頃。
・15歳　実験は終了。最後まで残ったのは自分だけ。
・16歳　UGNエージェントとして活動を始める。
・18歳　あの事件から救ってくれた恩人から表でも活動をすべきだと提案される。自分が守るべきものを認識しておくべきだと。
　　　　UGNとして活動しつつ、空いた時間で教師を目指し勉強する。
　　　　教師を目指したのは守るべき存在として一番に思い浮かんだから。妹の影響が大きい。
・23歳　教師になる。
・27歳　現在。

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