オーヴァードとしての高い素質が確認され、誕生して間もなくは多く期待を寄せられていたものの、後の精神鑑定でFHエージェントとして不適切であると看做されたことや、精神矯正や洗脳実験でも良い結果を示さなかったことにより、廃棄処分が決定され、その際に右耳を引きちぎられてしまった。
地下牢に拘置されている間、同じ牢に入れられていたのが、｜灰崎 銀次《はいざき ぎんじ》である。ひんやりとした空気の漂う地下の牢獄の中で、彼の存在は大きな支えとなっていた。彼は何度か研究員に呼ばれ、牢獄から連れ出されていた。戻ってくるときには、彼はいつも暗い顔をしていた。暗い顔のわけは、何度聞いても教えてくれなかった。ある日にまた彼が連れ出された暫く後、地上から轟音が鳴り響いてきた。同時に牢のロックが外れたため、地下牢から出てみると、セルは火の海となり、壁や天井も一部が剥がれていた。セル内を動き回っていたとき、辺りの壁や天井が自分に向かって大きく崩れ落ちてきた。生き埋めになって死ぬ────、と覚悟したそのとき、鈍色の旋風と共に一筋の矢が、崩れてきた瓦礫を砕き、吹き飛ばした。同時に誰かに手を引かれる。手の主を見てみると、そこには彼、銀次がいた。左眼から血が垂れているのが見えた。彼に手を引かれながら外に連れ出されると、セルでは見ない様な人達が何人かいた。彼等は銀次に気が付くと近付いてきて、彼と話し始めた。彼等は、彼等がUGNという組織であること。自分たちを助けに来たこと。そして、銀次の兄がジャームとなり、FHの手で処分されたことを話してきた。銀次からは、明らかな怒りと憎悪を感じた。彼は、自分をUGNに所属させてくれと頼んだ。そして、無意識のうちに、彼と同じくUGNに所属させてくださいと、自分の口から話していた。

現在ではUGNエージェントとして前線で戦いつつ、
｜灰崎 銀次《はいざき ぎんじ》と同居している（迫真）。