代々古流剣術を受け継いできた武家の血を汲む曽我崎（そがざき）家の長男として生まれた。幼少より剣道・居合道を学び、その後は新陰流の流れをくむ曽我崎流宗家としての教育を受ける。生まれた時から剣が傍らにある環境の中で自身もまたその道を受け入れ、10代にして天才剣士として一目置かれる存在となる。
だが16の頃、試合の最中突如としてオーヴァードの力に目覚め相手に大けがを負わせてしまう。自身が人ならざる力を手にしてしまったと悟った夜一は以降剣の道を外れる決心をする。

覚醒の要因として当時の夜一は知る由もなかったが、曽我崎家に代々受け継がれてきた「神薙ノ剣」こそがレネゲイドの力をもつ"遺産”であったのではないかと考えられている。長く曽我崎家に家宝として伝えられてきた品であるが、剣の道を極めんとする夜一の強すぎる意志がその刀の持つ超古代文明の力を呼び覚ました可能性が高い。
なお、額の傷はこの覚醒時についたものである。

この事態の収拾のためにやってきたのはUGNの前身団体である「護人会」の轟源十郎であったが、メンバーから連絡を受け到着した際には呆けた様子の夜一と混乱する現場があるのみで、そこに「神薙ノ剣」の姿はなかった。また轟に連絡したはずのメンバーも行方知らずとなっており、以前から曽我崎家の家宝を"遺産"と目していた何者かの仕業であると考えられる。

夜一の覚醒に居合わせた者には轟によって記憶消去が施された。彼からレネゲイドについて聞かされた夜一は、友を傷つけた罪は一生自身が背負うべきだと考え記憶消去を拒む。「ならば今後、お前は今までと同じ道を生きることはできない」と詰め寄る轟であったが、それは今の夜一にとって好都合でしかなく、曽我崎の剣の道を捨てオーヴァードとして償いの剣を奮う決心をする。

この時の友の傷であるが、これは覚醒時のエネルギー爆発により吹き飛ばされ頭を打ったものであり、それが原因で手に痺れが残り剣を奮うことができなくなってしまった。だが轟にいわせればレネゲイドが関わる事件でありながらこの程度の被害で済んだのは非常に幸運なことである。これは夜一の中に「他者を圧倒したい、相手を傷つけたい」といった気持ちがみじんもなく、ただただ「己の剣を磨きたい」という非常に純粋な意思にレネゲイドが応えたためであると轟は考えており、夜一へ信頼をよせる理由の一つともなっている。

事件後曽根崎の家は弟が跡を継ぐこととなり、夜一は護人会に所属し20年以上活動することとなる。護人会はコードウェル博士の支援を強く受けており夜一もその名前はよく知るところではあるが、直接的な面識はない。またこの際七ツ屍ラヴェンデルとも多くの任務をこなしている。

長く活動する中で信頼のおける仲間はいたが、贖罪のために粛々と任務をこなす夜一にとって気を許せる相手というものはいなかった。己の命を顧みない戦いぶりに対し「紅蓮の鬼神」の二つ名がつけられ、仲間内でも少し浮いた存在であった。

35歳の頃任務で列車の爆発事故に遭遇する。夜一らエージェントの活躍により大きな被害はなかったが、今のUGNほど組織としての体制が整ってはいない護人会では多数のけが人への対処がおいつかず現場が混乱する中、懸命に乗客の手当てを行う一人の女性と出会う。看護師をしているという彼女、遠嗣芳乃（とおつぐ　よしの）は応急処置だけではなくパニックになりかけた乗客を落ち着かせ、見事に現場をいさめて見せた。そしてまた、戦いでひどく傷ついた様子の夜一を見てほおってはおけないと口にする。自分に治療は不要だと拒否する夜一であったが、あまりの剣幕に押されしぶしぶ手当てを受ける内に、オーヴァードでもなく一回り以上も年下の女性にこんな力があるものか…と不思議な感情が芽生えはじめる。それは己の力を磨くべく日々研鑽し、その果てに暴走し贖罪の日々を生きる今の夜一にとってとても衝撃的なことであった。

芳乃のもつその稀有な能力は、巻き込まれた一般人に対するフォロー体制の整っていなかった当時の護人会には必要なものであり、記憶消去されることなく一般の協力者として重用されることとなる。
他人に心を開かない夜一を心配した轟のおせっかいもあり、夜一と芳乃との距離はゆっくりと、だが着実に近づいていく。
「異能で人を傷つけてしまった自分は一人でも多く普通の人々を救わなければならない」という強い迫観念に駆られていた夜一であったが、彼女の存在により剣を奮わずとも贖罪する道はあり、また異能を持たざる者も決して誰かに救われることを待つだけの非力な存在ではないということを強く感じるようになった。

40歳の頃芳乃と結婚。それを気に護人会を抜け、妻の姓である遠嗣を名乗り理容店を営みながら一般人としての生活を始める。
これは自身が日々研鑽してきた力が破壊のためにしか使われず、何も生み出しはしないのではないかという思いに駆られたためである。異能を使わずとも妻のように人を助けたり何かを生み出したい。それこそが自分が目指すべき本当の強さなのではないかと考えたのであった。

その年には子宝にも恵まれ一人娘・夏穂（かほ）が誕生する。
沸き起こる衝動に苛まれることもあったが、家族と幸福で穏やかな生活を送る。だが安穏とした日々の中でも剣の稽古を怠ることはなかった。体に染み込んだ修練は、己の力や技術の鍛錬という意味合いだけではなく、精神の安定をはかる意味でも夜一にとって非常に重要なものであったからである。

63の頃、娘が出産し孫の菜奈佳（ななか）が誕生する。またちょうどそのころUGN初代日本支部長に就任していた轟が引退するという話を聞きつけ、近年増え続けるレネゲイド事件を憂いていた夜一はUGNへの所属を願い出る。贖罪のために剣を奮っていた昔とは異なり、今は愛する家族と世界の秩序を守るためにその力を行使する決意を固めたのであった。
なおわずかではあるが、一度護人会を脱けた夜一に対し反感を覚える古株もUGNには存在している。

神無月聖と古藤田光とは度々チームを組み任務を行ってきた。UGNエージェントとして活動を始めて3年がたった現在は毒島大和の元でES支部のエージェントとして活動している。

支部長への勧誘の声も度々あがるが、それらはすべて高齢を理由に断っている。ES支部の居心地が良いということもあるが、本当の理由はもしもの際に自身の身を犠牲にする心づもりがあるためである。
護人会をやめてからの人生はボーナスステージともいえるものであり、これらを与えてくれた家族や世の中に対して感謝の気持ちから、それらを守るためならば自身の命を引き換えにする覚悟をしており、このことは妻にも伝えている。部屋にはもしもの時のための遺書も用意している。

若い頃は生真面目で己にも他人にも厳しく人を寄せ付けない雰囲気だったが、結婚後は穏やかになり今では軽口もたたくくらいの気安い雰囲気になった。理容店の客や新参のUGN関係者といった今の夜一しか知らない者は、穏やかでユーモアのある老紳士といった印象をもつことが多い。だが丸くなったとはいえ己に厳しい性格はいまだに変わらない。

物事に動じることがなくいつも落ち着いているが、怒ると丁寧な口調は崩さないまま静かに怒気を発するタイプでしかも案外その沸点が低い。今は完全に孫バカになっており、孫の写真を見た同僚が何気なく放った「いつかお孫さんも大きくなってお嫁に行っちゃうんですかね～～」の言葉にブチキレて大参事になったことがある。
ちなみにサラマンダーではあるが彼の攻撃スタイルは炎を用いたもののみである。「炎を操るのは容易いのですが冷気の方はどうにも…」とは本人談であり、キレた際にはすさまじい冷気を発し半径10mほどを氷点下の世界に陥れていることに本人は気付いていない。

電子機器の類には苦手意識があったが、孫の写真や動画欲しさにスマホを持つようになる。以前は「孫の写真が保存できないのですが…？」とデータがいっぱいになったスマホ片手に神無月に助けを求める姿がよく見られたが、今ではLINEやアプリを使いこなし、外付けHDDを駆使して孫の様子を日々撮り溜めている。

妻からもらった懐中時計を肌身離さず身に着けており、中には家族写真が入っている。（これでジャーム化して自我を失っても身元が判明して安心だよ◎）

オルクス固有の能力である領域は彼にとって間合いと同義である。そして相対する者にとっては不運なことに、その間合いとは彼の視界にうつるすべてを差す。
以前は日本刀にサラマンダーの炎をのせた攻撃をおこなっていたが、ブラム=ストーカーの能力に目覚めトライブリードとなってからは自身の血液から作り出した赫き剣を用いている。愛刀の姿を模した真紅の剣を奮う今も、長く命を預けてきた日本刀は戦闘時においては常に身に着けている。

自身の血肉を削る戦闘スタイルには、自分に厳しい夜一性格がよくあらわれているといえる。
若い頃は「紅蓮の鬼神」の二つ名がつけられたが、UGNに所属してからは普段と戦闘時のギャップから「阿修羅」の異名で呼ばれるようになった。

老いはしたが以前のような我武者羅な戦い方をしていたころと比べ、その力は衰えを感じさせない。己の命を賭してでも大切な者たちの平穏を守りたいという強い覚悟が彼の剣をより研ぎ澄まされたものへと昇華しているのだろう。

理容店を営んでおり手は商売道具なため、戦闘時は皮の黒手袋をはめる。

結婚後に始めた理容店の名前は「バーバー　 伊達男(だんでぃ)」
クラシカルな内装で、ネクタイにベストというフォーマルな姿で接客を行う。UGNエージェントとなってからは店の営業は不定期で、予約制で常連客たちの散髪のみ行っている。実家とは事件以降直接的に関わってはいないが、跡を継いだ弟が店の客として毎月顔を出しており兄弟仲は良好である。
ちなみに店の名をいじってもめちゃくちゃキレるので深く触れてはいけない。

店を始めて10年が経過した頃、レネゲイド覚醒時に傷つけた友人と偶然店で再会している。練習時の事故でけがをしたという風に記憶処理をされていた友人も、今では家族をもち幸せに暮らしているという。夜一が護人会をやめ一般人としての生活を送る決心をした際、一番ひっかかっていたのはこの友人のことであり、他人の人生を歪めた自分が普通の幸せを手に入れてもいいものかという葛藤にうなされることも少なくなかったが、この日を境に悪夢を見ることはなくなった。

妻：芳乃（よしの）55歳
元看護士。家庭菜園と料理が趣味。夜一は特に趣味を持たないが、妻と一緒に庭の手入れをしたり料理を手伝うこともある。とれすぎた野菜は支部に持っていくと毒島の手によってお礼のお菓子に変わって返ってくる。「野菜もしっかり食べないといけませんよ」と、神無月や古藤田に押し付けることもある。
結婚記念日に毒島のサロンに妻を連れて行った際に話がかなり盛り上がったらしく、それから毎年記念日には毒島の店に通っている。

娘:夏穂（かほ）26歳　
エスティシャン。この職を選ぶきっかけとして理容室を営む夜一の影響が少なからずあった様子。夜一夫妻の家から歩いて5分ほどのマンションに住んでおり、夫は激務で出張が多いためよく実家に顔を出している。職業柄毒島とは話がかなり合うようである。

孫:菜奈佳（ななか）3歳　
夜一のことは「よいじい」と呼んでいる。じじいは孫にデレデレである。
最近のマイブームははさみ。ケープをかけた人形の髪を切って理容店ごっこを披露したところ、母親にはしこたま怒られたがそれを見た祖父は感動して号泣していた。ちなみに孫バカのじじいはこっそり「赫き剣」ならぬ「赫きはさみ」（安全性バツグン！）を創って孫に使わせていた前科がある。
幼稚園にとても仲良しの男の子がいる。

夜一の理容室に何度か訪れたことがあり店主と客の関係である。店を閉めることを告げた際には残念がってくれており、夜一としても好感を持っていた。
UGNに所属してからは神無月や古藤田から名前をよく聞いてはいたが、まさか彼が店の客と同一人物であるとは思っていなかったため任務で姿を見た際にはかなり驚いた。なお当の春日は神無月や古藤田と相対しており夜一には気付かなかった様子である。

その後UGNからFHメンバーの情報として春日のブリードやUGNとの戦闘履歴といったデータが共有されたが、添付されていた顔写真が人目にさらすにはなんとも忍びないものであったため、それを見てしまった夜一はいたたまれなさから顔を合わせづらくなっており、任務で対峙した際にはそそくさと春日以外の敵の方へ向かっていたりする。FHであれども店の客であった以上不必要に恥をかかすようなまねはしたくないと思っているが、その牙が家族や身近なものに向けられた際には容赦するつもりは一切ない。
ちなみに共有されたデータの顔写真は宵ノ水倖子が撮った、戦闘時に敗れた際の彼の写真である。機会があればもう少し見られるものと差し替えてあげたいと思っている。