あれは高校2年生の夏休み。
父と母と妹と一緒に家族旅行に出かけた帰り道。
楽しかった思い出も、終わりがダメなら思い出すのもつらい悲しい過去になってしまう。

旅行中は楽しかった。だけど、今は思い出すのがつらい。
楽しい思い出だからこそ、余計につらい思い出。

あの事故は誰も悪くなかった。
運が悪かった。ただそれだけで、私達は死んでしまった。

崖から落ちて、潰れて燃えて。
助かるはずはなかった。苦しかったけど、みんな一緒だったから怖くはなかった。

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なんで、あの時一緒に死ねなかったんだろう。
私は、あの事故で死ねなかった。生き残ったんじゃない。死ねなかったの。

私達が発見されたのは事故から数日たった後。
親戚の手に渡ったのはそこからさらに数日後。

葬式も行って、残すは火葬だけ。

私は目を覚ましてしまった。

死んだはずの私は、目を覚ましてしまった。
葬式まで終えた私を受け入れる場所などなく、葬儀屋の一人として参加していたUGNエージェントに発見され、保護された。

それから、色々聞かされた。
レネゲイドのこと、これからのこと。

私は死んだ人間だ。だから、もう表の世界で生きることは出来ないのだと。

私はレネゲイドというものを呪った。これがなければ、私は置いて行かれることはなかった。
私以外にもこの力があれば、私達は死ななかった。
どうして、私だけ。

一人になった私は、何度も死のうとした。でも、この体はそれを拒んだ。
死人は二度も死ぬことは出来ない。誰も覚えていなかったとしても、この世に留まってしまった死人は死ねなかった。

だから、諦めた。考えを改めた。
きっとこの世界に残ったのは、何か理由があるのではないかと思いたかったから。
私はUGNエージェントとして生きることを決めた。

元々の性格は明るい性格だったが、過去の事件以降その性格は真逆の暗い性格になってしまった。
基本的にダウナーで後ろ向き。自分に執着しない性格をしている。
しかし、長い間死人として扱われていたためか、誰かから認められたい、忘れられたくないという承認欲求もひそかに秘めている。

他人に自分から近づくことはほとんどないが、相手から来た場合は、遠ざけたりはしない。

彼女の能力は自身の体内から生み出した植物を操る能力を持つ。
生み出された植物は、周囲に根を張るように爆発的に広がっていく。
この植物に触れた生物は、その生命力が吸われて生き、竜の鱗のようなその蔓は周囲のものを削り取る。

強度も高いこの蔓を何かに使えないかと考えられたときもあったが、生み出されてからすぐに枯れてしまうため、実用には至らなかった。

また、彼女は死人であるためか驚くほどに影が薄く、オーヴァードでなければそこにいると気がつかれないほどだ。
ただし、カメラ越しであれば一般人であっても認識可能となっている。
さらに、彼女の言葉は他者を惑わす能力も備えているようで、それはまるで寄生して操るかの如く。

彼女の肉体は死人のように冷たく、死亡した時から肉体の変化が止まってしまった。

死人ではあるが、同時にレネゲイドによる生命活動も行われているため、生理現象は発生する。
その為、食事や睡眠を必要とするが能力の影響か他者から奪った生命力や日光に当たるだけでも活動を行うことが出来る。

配信者としての名前は「忌龍 シオン(いみた しおん)」。
5年前からオカルト系の配信者として活動しており、怖い話とか都市伝説とかの動画を主に上げている。
配信では、心霊スポットに行ったり、実証できそうな都市伝説をやったり、たまにゲームをしたりもする。

配信スタイルは顔出しで行っており、表情はほとんど変わらないが、ミステリアスな雰囲気で人気がある。
心霊やオカルト関連は、ただその場所に行くのではなく、本物かどうかの実証も同時に行う。

また、見た目も変わらず、カメラもドローン撮影だと思われているが音が全くないなどの様々なことが合わさって、幽霊が配信しているのでは？などと都市伝説のように扱われているところもある。

さらに過去を探ろうとしたものが、彼女によく似た人物にたどり着いたが、その人物は既に事故によって死亡してしまっているため、彼女の正体は未だ謎のまま。