幼少期の記憶はない。家族がいたのかも、何があって一人なのかも。
気がつけばUGNに保護され、UGNに忠誠を誓う身となっていた。

少女漫画や幼児向けの絵本が好きで、特にアリスやシンデレラ押し。
いつか自分にも時計うさぎや白馬の王子が来てくれるなど夢見がちな子。

友人関係のような人間性はほぼなく育った。あの日まで、何の疑問もなく。

けれど何か満たされない。だんだん広がる心の穴。
ある日ふと眼に入った施設内の花壇に咲く花。それは私に何も言わず、美しく咲いているだけ。
それだけなのに、美しいだけなのに、咲いて枯れるだけなのに愛でられている。
比べて私は愛でてもらえているのかしら？　憎い。喰らえば自分も花のように美しく、愛される。
そんな行為は愛でられることもなく、ただ叱咤されるだけだった。……知ってた。

施設で頭のレベルが同じくらいだった友達ができたので、
コードネームではなくお互いにごっこ遊びで名前を付けあった。それが「嚆矢」だった。
なぜだろう、彼と過ごす日々だけは何か満たされた気がした。
癖になっていた花壇の花を喰らおうとする手も、抑えられた。

2,3年前、嚆矢の死を聞かされてからN支部に派遣され、仕事の合間に彼を探している。
彼のことは友達以上恋人未満。今も行動を共にしていれば、それ以上の関係に……なっていたかしら。
今は彼の死を認めたくないという心の穴を、また、花を喰らうことで埋めようとしている。

今の支部長は優しいわ。施設とは違って、私にある程度の自由をくれたわ。
普通がよくわからないけれど、これが幸せなのよね。

(もっと時間があったらRPしたかった感。つまり)……花食べ放題ッ！