幼い頃いつものように友達と公園で遊んでいれば、男の子の意地悪をするような声と、女の子の嫌がる声が聞こえた。
庵奈がそちらに行けば、同い年くらいの女の子が男の子から遊具を取られて泣いていた。
物心ついた時から正義感はそれなりに強かったためすぐに助けに入ればばつが悪そうに男の子たちはすぐにどこかに行き、それに安心したのか、助けた女の子は安心したように微笑んだ。
その笑顔が可愛くて、折角の縁だし仲良くなりたいと思い声をかけてその日は1日一緒に遊んだ。
その後も度々公園であっては一緒に仲良くしていた。
ある日少し待ち合わせの時間に遅れて行ってしまえば、また彼女は意地悪をされていた庵奈はすぐに助けに入るが2度も意地悪をされてしまったせいか彼女は落ち込んでしまった。そんな彼女を放っておけなくて「何かあったら私が絶対に助けるよ。だから心配しないで！」と彼女と約束をした。彼女は嬉しそうに、安心したように笑ってくれてそれがとても嬉しかった。

しかしその次の日の事だった。その日は祝日で家族で遠出をしようと車に乗っていた。
そんな自分たちが乗っている車に暴走して突っ込んでくる車があった。
とっさに避けようとするがスピードが速くそのまま衝突してしまう。
後部座席で一緒に乗っていた母が急いで庵奈を庇い、庵奈も恐怖で必死に母に縋りついてそのまま気絶してしまう。
次に目を覚ました時は病院だった。
どうやら事故で両親は亡くなってしまったらしい。母は自分を庇うように覆いかぶさり、そのせいで絶命したそうだ。
ショックで泣きじゃくっても両親は帰ってこず、そのまま親戚に引き取られることになった。
しかし家族に溺愛されていた母親を身代わりに生き残った子供と言われ母型の親戚には忌み嫌われてしまった。
幸い父型の親戚である祖母はそんなこともなく庵奈を引き取ってくれた。
だが祖母の家は遠いところにあり、引っ越しを余儀なくされる。
入院や葬式、引っ越し等も重なり公園に行く余裕などなく、彼女に別れの挨拶をすることも叶わなかった。
守ると約束したのに約束してから一度も会いに行って上げることが出来なかった。

その後祖母は庵奈を大切に育ててくれた。庵奈も元々祖母が大好きだったので幸せに暮らしていたが、そんな生活は長く続かなかった。5年経った13歳の時に祖母は病気で亡くなってしまう。
そして母型の親戚に引き取られることになるが嫌われてる庵奈はあまり良い扱いを受けなかった。
何かをされるということはないが、誰もが庵奈をめんどくさそうに扱い人によってはいない者として扱った。
と言っても親戚がいないと生きていけないのは分かっているので、手のかからない良いことして振舞った。
高校生になったら一人暮らしもできる年齢だからそれまでの我慢だと耐えた。
2年耐えれば自分は自由になれるのだから。
その時は両親と暮らしていた街に帰ろうと思っていた。幸い両親と祖母が残してくれた通帳があったのでお金には困らない。
無駄遣いしなければしばらくの一人暮らしの生活費には困らない。
そうして中学を卒業した彼女は早々に諸々の手続きをして親戚の家を出て行った。

現在は都内に１人暮らしをして毎日を過ごしている。
学校はそこまで離れていないので、バス通学で通っている。
高校生になってからは、今まであまり出来なかったことを沢山したくて、高校生活をとても楽しんでいる。
最近はカフェ巡りしたりタピオカ飲みに行くのが気に入ってる。
オシャレするのも楽しくてよくウィンドウショッピングしてる。
友達はかなり多い。これからはいろんな思い出を作っていきたいな。

・綾瀬 真花について
なんとなく懐かしさを感じている。放っておけないような、そんな感覚がする。
と言っても事故の一件から暫くここを離れて別の場所に住んでいたので、自分の勘違いと思っている。
真花と仲良くなりたいと思いつつ、普段だったらここまで緊張しないのに、なんだか上手く話しかけられない。
クラスは一緒だから会話することはある。でも特別仲良くするようなタイミング等はなく、クラスメイトの関係性。
普段は誰とでも仲良くなりに行けるのに、どうしてこの子にはいつも通りにいかないんだろうと不思議に思ってる。
それはちょっとした罪悪感かもしれない。そのせいで話しかけられないかもしれない。
と言っても、庵奈は過去の出来事も約束自体も覚えているが、相手が誰だかわかっていない。
そもそも幼い頃仲良くしてたとはいえ、そこまで頻繁に会えてたわけではないうえで、10年近くも前の出来事なのだ。
しっかり相手の顔を覚えている方が珍しい。
それに覚えていても10年も経っていたら、全然気づかないのも無理はないだろう。
庵奈もあの時の子を探しているが、まさか同じクラスにいるなんて夢にも思っていない。