生前は「友子」という、田舎に住むたった一人の少女の理想の詰まったスケッチブックであった。
ランチを友達とたくさん食べる、透き通った小川で疲れるまで遊ぶ、遊園地でくたくたになるまではしゃぐ……

8歳の誕生日に、夢はひとつ叶った。叶ったのだ。
遊園地ではしゃぐ彼女は、一人の男に誘拐され、そして見知らぬ山で殺されて死んだのだ。
もっと遊びたかった、という純粋な「後悔」は「理想」の詰まったスケッチブックと共鳴し、
怪異としての『メリーさん』が誕生した。

メリーさんは、電話を繰り返して人の後ろまで近づき……そしてどこかへ連れて行く。
それは果てなき永遠の理想郷、だとも噂されているが、真相を知るものはいない。
なぜなら、帰ってきた人はいないのだから。
そんな彼女は都市伝説級の、有名な怪異になった。友達も増えて、賑やかな世界を作り上げていた。

しかしある時から、メリーは力を大幅に失った。
『メリーさん』が摩耗してきたというものあろうが、何よりメリーさんの恐怖は薄まりつつあった。
やがて、誰もが彼女を忘れていくようになったのだ。

年月が経ち、ある時。誰かが「メリーさん」の名を呼んだ。
忘れられていたわけではなかった。そばにあった魔導書の力とも共鳴し、メリーは再び力を得た。
その場にいたサークルの人たちを世界に巻き込み、友達を集め始めようとしたのだが。
……見事なまでにたらい回し(物理)され、あっけなく完敗してしまったのだった。

あの女を筆頭に、彼らを帰してしまったのは大きな失敗だった。
だが、一人の執筆した記事により、再びメリーさんは舞い戻る。
本来の力を持った、「都市伝説級のメリーさん」として。