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「常識的に」が口癖の男。常に眉間にしわが寄っており、彼の人相を凶悪にしている。何もないのに「怒ってる?」と言われる。
【剛腕政治家】倶利伽羅明王(くりからみょうおう)の息子であり、所謂ボンボンの息子だが、既に両親は他界しており、遺産も親戚にかっさらわれてしまっている為そこまで金がない。現在は妹の倶利伽羅彩(くりからさやか)と一緒に暮らしている。
巨乳派の年上好き。
彼の覚醒の話をしよう。
彼はどこにでもいるような少年だった。
強いて違うところを挙げるとすれば、彼の父親が弁も立つが腕っぷしも強い、【剛腕】とあだ名される政治家であったことか。子供の教育に対してもそれは健在で、悪い事は悪いと断じてこぶしを振り上げ、正しい事は「なぜ正しいのか」を理路整然と教えていた。
しかしはたから見たらガキ大将にしか見えなかったのだろう。その手腕とは裏腹に人には好かれなかった。
大人たちから「あの倶利伽羅家の子供とは仲良くするな」と言い含められた子供達からは避けられていた。
ただ一人、浮舟やる夫を除いて。浮舟やる夫は生来の楽観主義者であったが、それ故かやらない夫と遊ぶ唯一の人物だった。時に主義主張が違うこともあったが、最後には肩を組んで笑い合えるそんな「親友」と呼べるようになるのにそう時間はかからなかった。
二人仲よく遊んでいると、やがてやらない夫が大人たちの言うような人物でないことが分かって来た同級生たちもひとり、またひとりとやらない夫を受け入れて行った。
さてここからが本題。
高校1年生、やる夫と同じ高校に進学したやらない夫は父親の後援会の手伝いに駆り出されていた。なんだかんだで父のことは尊敬していたし、小遣いもくれるというからやっていた。
後援会は滞りなく進み、立食パーティーにて乾杯のグラスが高い音を奏でた時、事件は起こった。
倶利伽羅明王は確かに政治家としては傑物だった。しかしそれ故に敵も多かったのだ。
突如後援会の天井を破り、オーヴァードが現れた。どこかの政治家が裏社会と繋がっており、支援を受ける代わりに送り込んだ刺客だ。
そのオーヴァードはワーディングをすることもなく、目撃者を次々と殺害していった。照明のシャンデリアが落下し砕け、倒れたロウソクの火がテーブルクロスに燃え移り、メラメラと後援会場を火の海に変えていった。明王もそれに立ち向かっていったが、多少粘ることはできたものの、やはり生身の人間とオーヴァード、その名は歴然。
数分の格闘の後、父、倶利伽羅明王はそのオーヴァードに殺害されてしまった。
その時、やらない夫の中で何かが弾けた。
突如、殺戮の愉悦の笑みを浮かべていたそのオーヴァードは吹き飛び、壁に叩きつけられる。何が起きたかわからない、そんなマヌケ面に変わっていた。壁から剥がれ落ち、床に転がったそのオーヴァードをやらない夫は何度も踏みつける。高校生の蹴りではない、バロールのシンドロームによる魔眼が織りなす破壊の超重力を足に纏わせ何百倍の重さになったストンピングが一撃ごとにオーヴァードの身体を踏み砕く。覚醒したてのやらない夫にはもちろんそんなことは分かる訳もない。ただ「こいつは殺さないとだめだ」と思ったその時身体が動いていたとしか言えない。
やがて動かなくなったオーヴァードに火が燃え移った時、周りは火の海になっていた。そこで我に返ったやらない夫は、急いで逃げ出そうとした。その時、小さな女の子が倒れているのが目に入った。どうやら生きてはいるようだが、自分も逃げ出さなければ危ない。それに彼女の両親も死んでいるようだ。ならばこのまま見捨てた方が良いのではないか。そう思った時、脳裏に父の声が響いた。
「男なら目の前の全ての人間を助けられるようになれ。人間は神じゃない。救える人数には限りがある。
だったら、手に届く範囲の人間は必ず助けてやれるような人間になれ。
そうすれば、いつかお前がピンチの時、誰かお前の近くにいる奴がお前を助けてくれるさ。」
やらない夫にはそれが父の遺言のように思え、その少女の手を背中におぶり、窓を開けて脱出することができた。
まもなく救急隊と消防隊が駆け付けて救助・消火活動に当たり始めた。
しばらくして彼女が目を醒まし、辺りをきょろきょろと見回す。気が付いたやらない夫は彼女に話しかけた。
しかしどうやら、彼女は記憶を失ってしまったようで、自分の名前すらも思いだせていないようだった。オマケにオーヴァードの襲撃の際に負った怪我の影響で下半身が思うように動かなくなってしまっていたのだ。
これは困ったぞと思ったやらない夫はとっさに「俺はお前のお兄ちゃんだろ」と言ってしまった。もちろん安心してもらう為の方便だったが、彼女はこれを信じ切ってしまった。覆水盆に返らず、後の祭り。やらない夫はこのウソをつき続けるハメになった。
その後、UGNに保護されて自分がオーヴァードになったということを告げられた。そんなことはあり得ないと思いつつも脳裏に浮かぶは自分が踏み潰した父の仇。そして見せられた鏡には右の瞳が変化した自分が写っていた。
そして突き付けられた二者択一。「UGNに入るか否か。」UHNに入ればオーヴァードとしての生き方やシンドロームの扱い方を教えるだけでなく、妹の分まで面倒を見る。入らなかった場合、フリーランスのオーヴァードとして生きることになり、最悪の場合は敵性人物として処理されてしまうこともある。
「常識的に」彼に選択の余地はなかった。
彼はUGNに入り、チルドレンとして戦闘訓練・能力訓練を打ち込むことになった。
その為に学校を辞めることになり、昨日までバカな話で盛り上がっていた親友たちと別れ、彼は彩と名付けた妹と一緒にUGNの訓練施設へと行った。もちろん非オーヴァードである彩には普通の学校教育を受けてもらっている。
そして今回、晴れて訓練課程を卒業し星見市に異動することになったのだ。
パーソナルデータ:倶利伽羅 彩(くりから さやか)
性別:女 年齢:10
ブリード:未覚醒
シンドローム:未覚醒
銀髪が美しい少女。下半身は上記の事件により動かない為車椅子を使っている。。記憶も失っており、現在やらない夫を兄と慕っている。物静かな性格で本が好き。特に占いの本を熱心に読み込んでいるようだ。
お兄ちゃんっ子であり、いつも兄のやらない夫について回っている。というよりももはやブラコンという域を超越した独占欲を発揮している。寝るときも兄と一緒でないと嫌だと言い、やらない夫が寝た時を見計らって肩口に歯形を付けている。
やらない夫には変なクセが付いたなとしか思われてないが、彼女にとってはマーキングじみた意味を孕んでおり、彼に近付く女への牽制にしている。