「地獄の沙汰も金次第」が謳い文句の何でも屋。
サラーブの外れに小さなオフィスを構えている。
貨物や要人の護衛、近隣住民のトラブルの調停、果てにはペット探しまで。
殺しを除いた多種多様な依頼を請け負っている。

「如何なる依頼も確実に達成する」と評判だが、同業と比べて報酬は割高。
なお報酬については、仕事の方針に口を出されないよう手付け金は貰わず、
成功報酬だけ受け取るスタイルで運営している。
また報酬を支払う資金を持っていない相手には、分割支払いに対応する他、
代わりのもの(物品やコネ等)を対価とするなど、寛大な措置を取っている。

そういう事情もあって、
財産を持つ都市の人間から、貧困に喘ぐ郊外の人間まで、
萬屋 GOLD DUSTを訪れる依頼人達は、人種も性別も何もかもがバラバラ。
……彼らに必ず共通している点は、ひとつだけ。
「為す術もないような大きな悩みを抱えてくる」ということだけなのだ。

なお萬屋 GOLD DUSTでは、金魚を飼っている。
名前はシャルル。真っ赤な琉金で、ヒラヒラと揺れる美しいヒレが特徴。
金魚鉢は依頼人に見える場所に置かれているが、
ベツに"金魚は金を運んでくる"といった験担ぎで飼っている訳ではない。
普通に可愛がっている訳でもない。断じてない。
無害な動物は、依頼人達を油断(リラックス)させるのに効果があるのだ。
　

小さな教会の隣に併設されている児童養護施設。
萬屋 GOLD DUSTの社長が経費で支援している。
わざわざ経費を投じてまで支援する理由は三つ。
1.節税
2.投資(未来ある子供に教育を施す事で恩を売る)
3.印象操作(慈善事業によって信頼と依頼を買う)
児童養護施設が建っているサラーブの郊外には、教育機関が一切ない為に、
真っ当な人格があって勉学ができる若者は希少。
故に、そうした人材を養育して恩を売る"投資"は重要と考えているらしい。
だが、実は損得勘定を抜きにした点にメアリーの"真の狙い"が隠れている。かもしれない。

余談になるが、支援者であるメアリーは孤児院の子供たちに懐かれており、
月に一度、感謝の気持ちとして、畑で収穫した野菜や手紙が送られてくる。
その日は手紙に目を通しながら、調理した手作りの野菜を口に運ぶ事が習慣になっている。
……しかし、メアリー本人は子供が苦手なので、孤児院に自らの足を運ぶ事は滅多にない。
　

黄金の血液の持ち主。
"黄金の血液"とは全ての人間に輸血ができるRh null型の稀血の事だが、
メアリーの血の色は、普通の人間の赤い血とは異なる文字通りの黄金。
……というのも、メアリーの身体に流れている血液は"本物"ではない。
その実態は、自我の無いレネゲイドビーイング。
≪ヒューマンズネイバー≫の応用によって、血液と同じ機能を持っているだけ。
実際には血液ではないのだ。色が赤くないのも当然というものだろう。

"黄金の血液"は、第一次レネゲイドウォーの動乱と流血によって生みだされた。
激化の一途を辿る、ヒーローとヴィランの戦闘。
相反する二者が織り成す破壊の嵐は、彼ら自身の命を奪うのみならず、
その余波で、力無き一般市民までをも蹂躙した。
オーヴァード同士の激しい戦闘が生みだすのは、涙。瓦礫。負傷者ばかり。
それゆえヒーローの戦線維持のために、また一般市民の救命のために、
第一次レネゲイドウォーでは"移植用臓器"と"輸血用血液"が多く必要とされた。

この緊急事態に対応するために考案されたのが"黄金の血液"。
すなわち、死刑執行を待つ囚人を加工して作り出す人造レネゲイドビーイング。
ウロボロスと≪ヒューマンズネイバー≫の模倣能力を用いた、
『万能で完全な人体の代替品』である。
数多くの人命を救うために考えられた代物だが、人道的なのか非人道的なのか。
その由来は"血涙結晶の工房"が作成している装備に近いと言えるかもしれない。
なおメアリーは戦闘において、この黄金の血液で様々な"処刑器具"を生成する。
おそらく、死刑囚達が材料になっているコトが影響しているのだろう。
　

第一次レネゲイドウォーの動乱と共に生を受ける。
そのレネゲイドの戦火は、平凡で幸福な日常から焼いていった。
ある日の事。ヒーローとヴィランの戦いに巻きこまれた両親は、
生まれて間もない我が子を守るように抱いたまま、諸共に死亡。
両親の抵抗も空しく、メアリーも深い傷を受けて、出血多量によって瀕死状態に陥ってしまう。
　
そんな絶望的な状況でさえ、確かに希望はあった。
……その現場には偶然にも、一人の医者が居合わせていたのだ。
医者は何を思ったのか、死亡した両親の腕の中から瀕死のメアリーを取り上げ、
所持する貴重なEXレネゲイド"黄金の血液"を輸血。
その結果、メアリーは"黄金の血液"の力でオーヴァードに覚醒。
リザレクトによって死の淵から甦ることができた。
　

物心つく頃には、砂上都市サラーブの最貧困層で暮らしていた。
その街外れの区域には"薬指"の手も及んでおらず、水道さえ通っていなかった。
並ぶ建物は、貧民が個人で建てたボロボロのバラック小屋だけ。
「屋根があるだけマシ」と言える環境で幼いメアリーは育った。
普通の身寄りもない少女では、生きていけるハズもなかったが、
メアリーは持ち前の戦闘能力を生かし、街の人から受ける依頼を解決することで日銭を稼いだ。
生活はいつでも苦しかったが、それでもどうにか生きていけた。

その際にお世話になったのが、"神父"が運営する孤児院である。
ある日、負傷によって依頼を受ける事ができなくなったことで、
日銭が尽きた少女が飢えと渇きに苦しんでいた時、彼はひとつのパンと水を恵んでくれたのだ。
おかげでメアリーは九死に一生を得た。
────それ以来、メアリーは"神父"にいつか恩返しをしようと思っていたが、
メアリーが"萬屋 GOLD DUST(よろずや ゴールドダスト)"を立ちあげる前に、
たったひとつのパンと水への"お礼"を伝える前に、彼は命を落としてしまった。
　

"なんでも屋"のような仕事を生活のために続けてきた経験から"萬屋 GOLD DUST(よろずや ゴールドダスト)"を設立する。
まだ社員は数名のみ、と小さなサービス会社だが、サラーブの都心でも評判になってきている。
詳細は【事業】の項目を参照。
────また萬屋を営む傍ら、空席の"小指"の座を狙っている。
"小指"が管轄していたカジノの経営権が目的だが、今のメアリーに"小指"の座に就く器は無い。
戦闘能力(瞬間火力)は立派なものだが、人の上に立つカリスマが足りていない。