両親を早くになくした孤児で、施設出身。ただ、非常にいい町かつ施設も馴染んでいたため、多少の苦労はあれど町に愛されて育ったと言える。町の助けになりたいという思いと、その頃からの愛読書も影響して私立探偵になる。町からの評判は非常に高かった。

ある時、一人の少年に弟子にしてくれと頼まれる。彼は自分がいた施設の子供で、自分が憧れなのだと付きまとってくるようになった。最初は邪険にしたものの、己を慕う子供に絆されて、なんだかんだ面倒を見ていた。己の真似をしたがる彼と、事件の話を聞きたがる彼の親友、そしてそれにため息をつきながらも答えていた自分…。いつまでもこの平穏が続くのだと信じていた。

――少年が、左澤翔真が死ぬまでは。

自分は何もできなかった。気が付いたのは全てが終わった後だった。自分が育った施設も、半ば弟子として認めていた少年も戻ることはなかった。ただ一人生き残った彼の親友：園田未来は心を壊してしまった。事件の情報はほとんど集めることができなかった。…代わりに分かったのは、翔真が町のために戦っていたことだった。当時起きていた怪事件を秘密裏に片づけていたのが彼だった。自らに宿った異能を使い、身を削っていたのだ。

…あぁ、何が町の助けだ。何が名探偵だ。自分は何一つ分からなかったと言うのに…誰一人救えなかったと言うのに…！

残された子供の何も映し出さない瞳は、自分を責めているように見えてしまって。何も知らないまま旅立たせてしまった少年に、顔向けも出来なくて。大きな絶望を感じた竜吉は町を出た。全てから逃げ出してしまった。

あれから６年。別の場所でレネゲイドについて調べ、あの事件の周辺情報を探りながら。それでも、あの町には戻れないまま。過去を振り切ることができないまま、彼はそれでもあがいている…