ヒーローの父と、ノーマルの母のもとに生まれたオーヴァード。生まれて間もない頃から能力を発現し、幼少期は父の背中を見て憧れを抱いていた。

だが、日々ヒーローランキングを駆け上がる父は、何時の日か多忙になり家に帰ってこなくなってしまう。
優しかった父は自分の事など忘れたように、日々ヴィランを退治し、人々を守っている。
子供の燕には、テレビの向こう側に映る父の姿を目に焼き付けることしか出来なかった。
しかし、お遊戯会にも授業参観にも来てくれない父に対し、悲しみは次第に嫌悪感に変わってしまう。

そんな燕が母と共に13歳を迎えた日を祝っている最中、突如としてヴィランが現れる。
そのヴィランは父を恨んでいたらしい。家族を殺し、父に生きるよりも辛い地獄を見せてやると豪語するヴィランに対し、燕は能力を使い応戦するものの、圧倒的な力の差に健闘虚しく敗れてしまう。
倒れ、動かなくなった燕に対しヴィランが止めを刺そうとした瞬間。目の前に現れたのは母だった。

母は心臓を貫かれ、倒れた。母は燕に対し笑顔を向け、「強く生きて」と言い残し他界する。
自分の無力を知り、泣き崩れる燕を前に、ヴィランは高笑いしていた。その顔は今も忘れることはない。
母の亡骸を前に、死を覚悟した時、今まで家に帰って来なかった父が現れた。
父はヴィランと交戦。激闘の末に勝利するが、燕は重傷、母は他界してしまう結果となる。

燕は入院中、見舞いに来た父に対し、父のせいでこんなことになった。父が母を殺したんだ。と言い放ってしまう。
この事件から、燕は父を拒絶する様になり、一人で何でも熟そうと躍起になっていく。

燕は自分の力の無さを嘆いた。自分がもっと強ければ。自分があの時母を守れれば。その思いが次第に募っていく。
あの日から脳裏に焼き付いた、母の「強く生きて」という最期の言葉を思い出し、全てを守れる程強くなりたいと願う。

中学3年生の冬、燕は、父には何も言わず夜来高校に受験、合格を果たす。全てを守り、強くなるために。

三年間。血も滲む努力を続け、成績トップを取り続けた。在学中にインターンに参加し、トップヒーロー達と関わり、その姿はテレビでも紹介される程。ただ唯一、勝つことに固執する短所は三年間の勉学でも治らなかった。

高校3年生の夏頃、父の事務所からの連絡を断り、かつて異端審問官とまで呼ばれたヒーローの事務所の門を叩く。

夢は「全てを救うヒーロー」になること。その為ならば、どんな困難だって乗り越えてみせる。

紫電庵に加入して初めてのおお仕事。無事に完了することはできたが、心残りが多く残った。
母の仇が脱獄に成功してしまったこと。猿が父を死天王に誘っていたこと。そして一番悔しかったことが、仇を殺せなかったこと。
母を殺し、殺人を繰り返す犯罪者を何故裁いてはいけないのか。ヒーローとは何なのか。考えたが答えは出なかった。
唯一。世界が裁けないのであれば、自分が裁くしか無い。それだけは理解できた。だからもっと強くならなければならない。
ヒーローとして…一人の人間として。

紫電庵がまた襲われた。今度も死天王。猿の上が姿を現したそうだった。
私は生き急いでいた。社長に散々心配をかけた。それだけじゃない。気付けば周りのヒーローにすら心配されてしまっていた。
もっと強くならなければ、その気持ちだけが先行し、身体が言うことを聞かなかった。
自分も護れない人間が誰かを護れる訳がない。改めてそう感じることができた。

思えば、学生の頃から独りよがりだった。全てにおいて上でなければいけない。守られる人間じゃないと知らしめなければいけなかった。私が目指す道はただ強くなればたどり着けるモノじゃなかった。一人じゃない。仲間が居て初めて強くなる意味が分かるんだと、実感した。

ヒーローチームが壊滅。刃さんの妹さんも狙われた。父の件も含めて、偶然とは思えない…。
亡者の様なヴィランがヒーローが使う武器を所持していた。社長が言う死神と戦うなとはなんなのか。何れ聞かなければいけないのだろう。