容姿・経歴・その他メモ

UGNに回収されたFHの研究レポート

20XX年X月X日
　回収したレネゲイドビーイングを調べた結果、面白い事が判明した。対象は他者のレネゲイドウイルスを沈静化させる特異な能力を保持しているとされる。理論上、レネゲイドビーイングでは持ち得る可能性があるとされたが、実際に見たのはこれが初だ。

　また、古代種のレネゲイドウイルスと起源種のレネゲイドウイルスも確認が取れた。このレネゲイドビーイングは何十、いや何百何千年前から存在しているのか分からない。もしかしたら何万年もの昔かもしれない。古代種には古代種特有のエフェクトを持つとされているが、ここでもレネゲイドウイルスの沈静化の能力が確認できた。まさにオーヴァード、ないしはジャームを救う為に生まれたレネゲイドビーイングと言っても過言ではないだろう。このレネゲイドビーイングが居れば安定的なジャームの運用も可能になるのではないか検討する必要性がある。

20XX年X月X日
　素晴らしい能力だ！！その場にいたすべてのオーヴァードのレネゲイドウイルスを沈静化させることに成功するとは！！まさかこれがその場にいるすべてに作用するなど、まさに神の領域だ！！

　しかし、問題があった。レネゲイドウイルスの沈静化にはよほどの負担がかかるのか身体の一部がひび割れる現象が起きた。細胞を採取しようとしたところ、即座に消滅した。元々が何らかの伝承などの概念である故か、細胞を本人から切り離したり、保存することが出来ないようだ。

20XX年X月X日
　ジャーム化した対象に対する沈静化実験を行った。まさか、私は奇跡の瞬間を見ているのか！？ジャーム化した者がオーヴァードに戻るなど！！

　この時の対象は一体のみであったが、これの身体の損傷が激しい。恐らく二体以上は難しいだろう。

20XX年X月X日
　上からの命令でこれは厳重に管理することになった。全てが判明出来た訳ではないが、オーヴァード優位の社会の為にこれは不穏分子になりかねない。最悪、オーヴァードから人間に戻せる可能性すらあるという。レネゲイドビーイングである関係上食事は必要ないらしい。しかし貴重な検体であることに変わりはないので、管理の元、研究を続けていく。

20XX年X月X日
　しばらくレネゲイドウイルスの沈静化が出来ない環境に置いたが、少しづつ精神が不安定になっている。自分の存在価値が揺らいでいるのだろうか。しばらく経過観察を行う。

20XX年X月X日
　さらに身体の不調を確認。このまま続けた場合、最悪貴重な検体に何らかの影響が出ると思われる。定期的にレネゲイドウイルスの沈静化が検討される。

20XX年X月X日
　管理していたレネゲイドビーイングが壊れた。研究施設内でジャーム化した被験体の元に瞬時に移動し、対象のジャーム化を解除後、崩れる様にして消滅した。貴重なサンプルだったが、壊れてしまっては仕方ない。

履歴

イメソン：幽世　https://www.youtube.com/watch?v=cp529TCm4lg

　　　「死にたくない、死にたくないんだ」

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　「嫌だ、化け物に近づくこの体が嫌だ」

　　　　　　　　　　　　「誰か、誰でも良いから助けて欲しい」

　……人間の集合意識……いや、“化け物の集合意識”というべきか。

　救済の具現化、罪の代行者、赦しの手……まるで誘われるかのように、太古の昔に“彼”は目を覚ました。生まれたばかりだというのに、彼には“今まで生きた記憶”があった。

「あれ……僕……なんで……え？」

　周りには誰もいない、ふらふらと、目的もなく“彼”は彷徨う。

「……なん……だい……あれ……」

　何も知らぬ“彼”を襲ったのは悍ましい姿の怪物。中途半端に人間の姿を残しているのが、更に恐怖を煽る。逃げようと思った。それは事実だ。しかし、ふと、怪物の“感情”が読めてしまった。

苦しい、怖い、嫌だ、なんで、どうして



助けて



……助けなきゃ

　“彼”は、その手を怪物に差し伸べる。その瞬間、怪物は人の姿を取り戻し、気を失ってしまう。ほっ、と胸をなでおろすのもつかの間、“彼”の身体が崩れる。

「……え」

　“彼”は怯え、抗おうとも身体の崩壊は収まらない。そして、“彼”の身体は崩れ去る……



　と、いう記憶を持って“彼”は目を覚ます。どこか、また違う場所で。恐怖で心臓が早鐘を打つ。しかし、調べなければ、どうして、こうなったのかを。そうして、“彼”は自分の状況と、世界の状況を知ってしまう。

　抗ったかと言えば抗った方ではあるのだろう。しかし、駄目だったのだ。特に、“彼”の性格がそれを赦してはくれなかった。誰かを救い、自らの身体は崩れ、また目を覚ます。嫌な言い方をすれば、慣れてしまった。

　慣れて、慣れて、慣れてしまった。

　その途中、珍しい特性に目を付けた組織にも狙われ続けた。信じていたのに。そうして、裏切りと抗いと諦めの末に、“彼”は初めの頃には残っていた“人間だった記憶”も、今ではもう朧げで、大切だったはずの人達の顔も思い出せなくなってしまっている。名乗り続けた自分の名前と大まかな性格しか覚えていない。同類であっても、必ず“彼”を置いて逝ってしまう。そうして、また積み上げた記憶を失っていく。



　彼は、誰かを救う為だけに彷徨い歩くだけの舞台装置と成り果てた。

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