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ある日、心乱した一体の夜者が、とある鍛冶師の妻子を喰った。
鍛冶師は家族の亡骸を丁重に弔うと、自ら打った刀を携え、単身、夜者のねぐらへと向かった。
そして自らの命と引き換えに、仇討ちを果たしたのである。

……彼が自我に目覚めたとき、己を握る男の手からは、既に力が失われていた。
それでも、彼は自分が生み出された意味を、決して過つことはなかった。

鬼喰清忠は悪鬼を喰らう。
そこに人鬼の区別はない。
人であろうと鬼であろうと、誰かのささやかな幸せを踏み躙る者あれば、彼はその身を走らせるだろう。

『正しき人たち、優しき人たち。
　鎧うすべなき、か弱き人たち。
　彼らの手には、爪などない。
　彼らの口には、牙などない。
　それ故にこそ、己が立つのだ。
　彼らに代わり、鬼となるのだ。』

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