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業血鬼によって家族を喪い、SIDに拾われた。
ある種この業務においていっとうありふれた経歴を持ち、かつては平凡であった男。

良く言えば生真面目、悪く言えばあまり融通の効かない性格。
毎日三食の食事、食後の歯磨き、一日一回の入浴、十分な睡眠時間……
〝普通〟の生活をこよなく愛し、任務の中でも可能な限りそのルーティンを欠かさない几帳面さを持っていた。
「食器より銃を持つ時間が長くなったとき、俺は日常から断絶されるんだ」とは、いつ漏らした言葉であったか。
見ようによってはマイペースとも言える。

かつて教師を夢見たこともあってか、何かと年少者の世話を焼きたがる節があった。
SIDの新人たちから冗談めかして「教官」などと呼ばれていたのは記憶に新しい者も多いだろう。
突出した才こそないが、何事にも真剣に向き合う姿勢のおかげで射撃や体術も人並み以上のそれは身に付けていた。
人並みの感性で人並み以上のことをこなし、人並みに死を恐れて、人並みに誰かを愛していた。

もっとも、今やその全ては過去形に過ぎない。
過ぎなかったはずなのだが。
どういうわけか、彼は今、ここにいる。

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