容姿・経歴・その他メモ

履歴

ロスレは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の王を除かなければならぬと決意した。

ロスレの親は放浪をするもので、色々な場所に連れて行ってくれたがロスレが性成熟したころには弟と共においてかれてしまった。
ロスレは政治がわからぬ。選挙権がないからだ。ロスレは、村の牧人となり、笛を吹き、羊と遊んで暮して来た。けれども邪悪に対しては、人一倍に敏感であった。
きょう未明ロスレは村を出発し、野を越え山越え、十里はなれたある都市にやって来た。もっかい言うがロスレには父も、母も無い。女房も無い。多分十代の、内気な弟と二人暮しだ。この弟は、村の或る律気な一牧人を、近々、嫁として迎える事になっていた。結婚式も間近かなのである。ロスレは、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。

なんやかんやあり老人から王が邪知暴虐な秘密を持っていることを知り、聞いて、ロスレは激怒した。「呆あきれた王だ。生かして置けぬ。」ロスレは、単純な女であった。脳が単細胞だ。買い物を、背負ったままで、のそのそ王城にはいって行った。たちまち彼女は、巡邏の警吏に捕縛された。調べられて、ロスレの懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。ロスレは、王の前に引き出された。
王様にこっぴどくキレられたロスレだったが逆ギレし返したので磔にされることになった。
「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」王様はまともであった。
「ああ、王はリコウだ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――だ、私に情をかけたいつもりなら、処刑までに猶予をくれてやるべきだ。私には実力がある。しばしの旅の後、王の秘密を解決して見せよう。」
「ばかな。」と暴君は、嗄しわがれた声で低く笑った。「とんでもない嘘を言うわい。逃がした小鳥が帰って来るというのか？」
「そうです。帰って来るのです。」メロスは必死で言い張った。「私は約束を守ります。私を解放しろ。弟が、私の帰りを待っているのだ。伝説の勇者にもなる。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にナントカティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、ここに帰って来なかったら、あの友人を絞め殺して下さい。たのむ、そうして下さい。」
それを聞いて王はドン引きした。ナントカティウスことセリヌンは絶句し「いや俺関係ないよな！？」と言い張ったが、ロスレがぶっ叩いて事なきを得た。

ロスレは、すぐに出発した。初夏、満天の星である。ロスレはその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで村に付き、弟の式を挙げ、宴会で騒いでからその足で冒険に出かけた。全てはセリヌンのため、そして邪知暴虐の王の秘密を解決してやり、自らを顧みさせるためである。

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