設定

イシュトリアン

　災害孤児のイシュトリアンは、聖職者に拾われた後に樹林の町で生まれ育った。
　だが、大火災によって家族や友人と共に全てを失ってしまう。
　彼はその火災の中で目覚めた庭園術の力により、溶岩を生み出すことができるようになったのだが……
　しかし、この力故に村人たちは彼を異端視し、疑念の目を向けるようになる。
　不当に恨みを買われたがゆえに、死に目に遭うような事もあった。

　家族と友人を失ったことで深い孤独に襲われたイシュトリアンは、自身の力と孤独感との葛藤に苦しみ続けている。
　故郷をも失ったことで生きる目的を見失い、他者とのつながりを断たれたと感じる日々。間違いなく彼の中では大きな傷となっていた。
　生きる事の苦しさと、故郷を失った辛さから、彼は時折死への葛藤に取りつかれるようになった。
　…だが、どこかで生きる意志を見つけたいと、心のどこかでは望んでいる。

島に来た経緯

　すべてを失った後、逃げるように大陸を後にした。それからただ当てもなく続く放浪の旅。これからどう生きていくべきか、いやそれとも死ぬべきか。自問自答を続けるうちに辿り着いたのがエスタ島であった。
　この島からは出られない。どこか自罰を求めていたイシュトリアンは、その島の厳しい環境を嫌がらなかった。

島からの脱出の意思

　正直なところ、イシュトリアンは島から脱出したいとは思っていなかった。だが今後この島で育まれるであろう新たな人間関係が、彼の生への諦念を消していくかもしれない。

妖精との出会い

　夜のエスタを歩いていると、海辺の浜に淡く光る飛行体があった。近寄ってみれば、それは妖精(スプライト)である。妖精はただ静かにイシュトリアンの肩に乗り、優しく微笑んだ。──思い出せない。俺はどこかで、彼女に会ったことがある。

《ガーデン：空洞》

　施療院にて傷病者を治癒し、時折届く手紙に従い剣闘士として試合にも出る日々が続いた。そんなある日、導かれるままに島内を歩いていると、妖精が示した先で思いがけず、何者かが掘った空洞を発見することとなった。
「いったい誰がこんなものを……」
　恐る恐る中に入り、思案する。この地下空間は庭園術の実験に丁度よい。そう思い至ったイシュトリアンは、それからしばらく空洞の中で錬金術を磨くこととなった。──冷たく、静かな暗闇が心地よい。
　そうしているうちに、イシュトリアンの燃やし溶かすばかりだった庭園術に変化が訪れる。それはまさしく"空洞"であった。溶岩の庭園術に加え、空洞の庭園術に目覚めた彼は、遂に庭園術の深奥に達したのだ。結果、彼はついに炎と空洞の神髄について理解する。かつて故郷を焼いた炎は、自らが引き起こしたものなどではないということも分かった。故に自罰的な心や、生への諦念は薄れていった。ああ、大火の記憶が蘇る。そして炎から身を守ってくれた、故郷の小さき空洞の記憶も。
「もう俺は、迷わない」
　今、エスタにもまた災禍が降りかかりつつある。かつての自分のように故郷を失うような思いは、もう誰にもさせたくはない。多くの人にとっていい思い出はないであろうこの島だが、それでも誰かの故郷なのだ。イシュトリアンは"抗う者"として、迫る大火に庭園術をもって立ち向かう道を選んだ。
　

セッション履歴

収支履歴