わたし、リコピーナ・トゥーメイット！田舎の小さな村に住んでる16歳の女の子なの！
　実はわたし、最近カレシができたの！気配りができるし爽やかなイケメンで、わたしにはもったいないくらい！今日はそんなカレとデートなの！
　ふふっ！早起きしちゃったしカレのお家に行ってびっくりさせちゃうの！おじゃましま～す！
「…A子。もうデートの時間になっちゃうよ…。君との時間は名残惜しいけど、今日もあのバカ女から絞れるだけ絞ってくるから…。」
　は？今なんて？
「…！？な、なんでここに…！？」
　う…
「う…？」
　浮気なんてサイテー！！わたしのこと騙してたの！？もう絶対許さないの！！しねしねしねぇええええええ！！！

　こうしてわたしの初交際はサイアクな形で玉砕したの…。怒りのあまり相手を全治6ヶ月にしちゃったけど、いたいけな女の子の気持ちを利用する浮気男にはそれぐらいしてもいいと思うの！むしろ返り血まみれになったわたしの服弁償して欲しいの！
　あんなクズのことなんかキッパリ忘れて新しい恋を探すの！…と思ってからそこそこ経って、今度は裏表のないカレシと付き合うことにしたの！
　新しいカレはたまにデリカシーがないけど、隠し事はしないし変にせびってこないし今度こそ絶対大丈夫！今日はそんなカレとデートなの！
　森の奥に星がキレイに見える場所があるんだって！そこでロマンチックな一時を…
　そんな時、獰猛な獣の遠吠えが鳴り響いたの…！いつの間にかわたしとカレは狼に囲まれてて一斉に襲いかかってきたの…！！
　わたしとカレの大切な時間を奪うなんて許せない！！獣如きがデートの邪魔するなぁ！！しねしねしねぇええええええ！！！
　はぁ…はぁ…。どうにかなったの…。カレも無事みたいだしこれでデートの続きができそうなの！さ、早く行くの！
「いや、助けてもらったのは感謝するけど、素手で狼殴り殺せる女は普通に無理。あと、返り血まみれなのも衛生的に…。」
　な、なんでそうなるのぉーーーーー！！

　わたし、わかったの。女の子に気を使えないデリカシーのない男は駄目だって。別にいいじゃん！狼を素手で殴り殺せてもわたしがか弱い女の子なのに変わりはないはずなの！！それなのにぃ…！
　決めたの。こんなわたしでも守ってもらえるような強くてカッコイイカレシを見つけるの！そのために、わたしは冒険者になるの！！
　…こうしてわたしは冒険者になったの…。そして！なんと一緒に冒険してくれる二人の仲間に出会ったの！！
　一人は魔法使いの女の子。そしてもう一人は！わたしの理想100%の美青年剣士様～！！キャー！
　最初はよそよそしかったけど、一緒に冒険する中でイイ感じに距離も縮まって…
「リコ、ちょっと話があるんだ。いいかな？」
　き、キター！！これなの！この時を待ってたの！もうこっちは準備万端なの！！
「実は…」
　じ、実は…わたしも…
「魔法使いのB美と結婚することにしたんだ。」
　好きなの～！！…って、え？
「俺達二人がピンチになった時、君が魔物と血みどろになるまで戦って守ってくれただろ。あの時気付いたんだ。人の命はかけがえのないもの…。三人での楽しい冒険に悔いはないけれど、これからの人生はB美と一緒にこの命を大切にして生きていくよ。急な話になってしまって本当にすまない。でも、本当にありがとう。」
　お…、
　お幸せにぃーーーーーーー！！！

―――わたしは歩み続けるの。わたしの恋が実る、その日までぇ…！えぇーん！！！

―――呼吸が乱れる。動機が収まらない。視界いっぱいに赤が広がる。
　目の前には、さっきまで×××だったものが転がっている。
「ひ、ひぃ…！わ、わたしは関係ない…！な、なんにも知らない…！だ、だから…」
「殺さないで――」
　×××が弾け飛ぶ。世界はもっと赤、赤、赤になっていく。
　あれ…？わたし、何してたんだっけ…？これは何だろう…？なんだか…、とっても真っ赤。まるで…、そう…。
　甘くてみずみずしいトマトみたいなの。

「――なんで、ただのガキ一人殺せって話だったじゃねぇか…！いつも通り、森に誘い込んで…。なのに、こんなの聞いてな――」
　ずちゅっ
　あーあ、またトマトが潰れちゃったの。お洋服がまた汚れちゃうの。でも、真っ赤で…、とってもキレイ…。

「―――お、お前は…ずっと仲間のフリをして…。許さない…！よくも…よくも彼女を！！この俺が絶対にお前を――」
　ずちゅっ
　またなの。潰れて、弾けて、真っ赤に染まって。キレイなのに、悲しくて、なんでだろう。トマトが赤いのは―――

　ずちゅっ