かつて、あるサーカス団にフィルボルの少年がおり、道化師、そして魔術師として名を馳せていた。少年が織りなす幻惑の魔術と奇術は、まるで夢のような光景を創り出し、見る者を魅了し続けたという。個性豊かな団員たちと共に、少年は各地を巡り、歓声と驚嘆の中で日々を過ごしていた。

しかし、ある日、少年の運命は狂気に満ちた魔術師によって変えられる。寿命を超越することを目指す魔術師に目をつけられ、少年は「レムレス化」の実験体として誘拐された。

実験は不完全な形で成功し、少年はレムレスとなったが、その代償として大切な記憶をすべて失ってしまった。さらに、その陽気で無邪気だった性格もまた消え去った。以前は観客を笑顔にすることが喜びだった彼だが、今や不安に怯え、かつての自信や輝きはすっかり褪せてしまった。

しかし、少年には一つだけ失われなかったものがあった。幻術の技術が、本能のように体に沁みついており、意識的な記憶はなくとも、その力を行使することができたのだ。

記憶と共に明るい性格をも失った少年は、かつての自分とは異なる姿で、魔術師の手から逃れるため、無意識に幻術を駆使し、なんとか脱出することに成功した。その後、彼は様々な苦難を経て、やがて冒険者としての道を歩み始める。

少年の過去はもはや語られることはなく、彼自身もかつての輝きを知らぬまま、不安に満ちた日々を送っている。ただ幻術だけが彼の中で今も生き続けている。