「転生したらメカだった件。……なんて言っていられる状況じゃないわよ！」
その正体はアーシアンと呼ばれる、異世界からの来訪者。本名は高木原 美音(たかぎばら・みおん)。
元の世界では政治家として一般に認知されており、民衆人気は高い一方、改革急進派として保守勢力には煙たがられていた。
ある時、議員選挙の演説中に対抗の過激派により襲撃され、美音は犯人により刺殺されてしまう。
そのまま絶命することを覚悟したが、突如聞こえてきた謎の声の導きに応える形でエリンディルへと転移、異世界にて目を覚ます。
——までは良かったものの、何の因果か魂が古いゴーレムに宿ってしまい、機人種族(エクスマキナ)として転生を果たすこととなった。

「目指せ悪のカリスマ！ このクラン＝ベルでアジャ〇ングになってみせましょう！」
元々『異世界転生モノ』というジャンルに理解があった彼女は、「どうせするなら悪役令嬢とかしてみたい」と考えていた。
しかし、転生したのは庶民ですらない無銘のエクスマキナ。このままでは面白くもない、折角第二の人生を得たのだからやりたいことをしたい。
悩むミオンの目に入ったのは、クラン＝ベルのコロシアムの広告であった。
「そうだ、コロシアムで悪役(ヒール)をすればいいのではないか？」
そう思い立ったミオンは即座にコロシアムの剣闘士に志願。副業冒険者として鍛錬と経験を積みつつ、着々と功績を積み上げていった。

しかし、貴族的且つ悪辣な彼女のスタイルと革命を経て成立したクラン＝ベルは相性が悪く、当初は冷ややかな目で見られるばかりであった。
途方に暮れるミオンはいつものように貧民街を訪れ、売上の一部を孤児院や修道院に寄付をしていた。
その時、偶然出くわしたパパラッチによりその現場をすっぱ抜かれ、次の日にはコロシアム広報で拡散されてしまう。
イメージを壊され選手生命の終焉すら覚悟したミオンだったが、この誌面がまさかの大ヒット。
「二面性のあるダークヒーロー」として取り上げられ、平凡な剣闘士は一躍コロシアムクイーンとしての栄光を手に入れることとなる。