"機械の街"カナンの一般家庭で生まれた少女。
　争い事と無縁で小さな幸せで満足する、ごくごく平和な家に生まれた彼女。
　だが、彼女の誕生は誰もが不幸と言う誕生であった。
　
　何気ない日常を過ごす最中、生まれて間もない彼女の様子がおかしい事に両親は気づく。
　心配した両親は、神官に見てもらった時に不幸の報せが届く。
　――この子供は生まれた時から両目と右腕に障害を抱えており、機能を失っている。
　どうにか治療ができないか。　願う両親だが、神官は重い表情を浮かべて首を横に振る。
　神はこの子に試練を与えた。　試練の傷病に対して神の奇跡は届く事はない。
　生まれた時から抱えている"障害"に対して神々の奇跡で癒やす事はできない。
　両親は我が子に課せられた試練を嘆いた。　まるで自分達が受けたかのように、涙を零す事しかできなかった。

　何もできない日々が続いてく。　しかし、両親は諦める事はできなかった。
　あらゆる手段・方法を用いても、両親は我が子を救う方法を探し続け、―――ついに見つける。
　その方法は錬金術。　肉体の機械改造・改造した生体部品の移植という方法であった。
　しかし、その方法は実験段階の存在。　況してや、赤子に使用するなど違法どころか犯罪そのもの。
　だが、それでも両親はその手段を取った。　…例え、罪やエゴと言われても構わない。
　何も知らない、無垢な我が子。　光も知らず、片腕も動かないままの日々を過ごすなんて見過す事はできなかった。

　幾時が経ち、その家族は犯罪者として神殿に囚われた。
　前科者となった両親がどうなったのかは不明。　ただ、彼らの子供は試練を克服した。
　その子供の瞳は闇の中でも光を見る事ができ、右腕は未知の物でも自在に扱える程に"正常"と化した。
　だが、その代償に――彼女の記憶は喪った。　愛していた両親との記憶をすべて。
　まるで、神が彼女を罰したかのように。　…あるいは両親が不幸をすべて持っていってくれたかのように。

　その後、彼女は「名無し」として孤児院を過ごし、最終的には神殿の使徒となる。
　とはいえ、記録上は犯罪者の娘である事から立ち位置としては冒険者そのもの。
　…いや、むしろ冒険者そのものと思われている。　…ララ本人も勘違いしているし、よく忘れる。（
　今日も彼女は「ピース」を広める為に冒険の日々を過ごし続ける。　楽しい日々が続くように。

　余談になるが、彼女の瞳と右腕は機械化はされてない。
　改造された生体パーツを組み込んでる事から、完全に生身の肉体そのものと同じとなっている。
　とはいえ、明らかに異質である事からララ本人は錬金術による生体移植だと認識している。（というか調べた）
　隠してはいないが、口語をする必要がないので知ってる人はごく僅かにしかいない。

　名前に関しては、両親しか本名は知らない事から不明。
　二つ名の"空の子守唄(ララディ・フェクト)"に関しては神殿から頂いた二つ名。
　意味は「空の子守唄(からのこもりうた)」であるが、ララ本人も知らない事だったりする。
　

　一見、自分の活躍をアピールしている行為に思えるピースサイン。
　ただの自己顕示欲を露わにしていると思われるが、実際は大きく異なる意味で彼女は使用している。

　その意味は「幸せ」あるいは「平和」という意味。
　嬉しい事や感動事は勿論、事件や窮地の解決ができたら他人の出来事でも彼女はピースをする。
　むしろ、他人の方だと口元が少し緩んだりする。　誰かが幸せなら、自分も嬉しくなるもの。
　この為に本当は他人に尽くす事を生き甲斐だったりする。