「ヒトは見た目ではなく中身だ」と、ヒトは頻繁にそう言う。
でも、リードはそうは思わない。
だって、リードは見た目で悲しい思いをしてきたから。

そんなリードにも、ついに仲間ができた。
とっても素敵で、強くて、頼れるギルドの仲間たち。
みんなの戦いに挑む姿は、なんだか見ていて勇気が湧いてくる。
リードはあまり戦えないけど、それでもすごく居心地が良かった。

そんなギルドの仲間の中で、リードがとっても気をつけたいヒトがいる。
そのヒトの名前は、ボンドルド。
リードに似て、見た目で辛い思いをしてきたヒト。
非力であるよりも、強さを強いられる方が、きっと苦しくて寂しくて、きっとリードが感じてきたものの何倍も悲しい。
なのに、彼はとっても優しい。
そして、優しさの分だけ、とっても繊細。
だから、リードは彼を傷つけないように気をつけたいと望んでいる。
いっぱい笑って、いっぱい泣いて、彼の望むありのままの彼で居て欲しいから。

出会ったばかりの彼のことで、一つだけ考えてることがある。
彼は、他人を観察すること……特に、他人の成長を見るのが好きなんじゃないかなと、リードは思う。
きっと、強くなるのを急いでしまったから、ゆっくり強くなる他人が羨ましいのかもしれない。

リードは、強くない。見た目に相応しい、非力な自分になる事を望んでいたから。
でも、彼と同じ景色に、少しだけ立ってみたいと思った。
だから、少しだけ強くなったリードを、彼に見てもらいたいと考えてる。
そして、『ひとりぼっちじゃないよ』って、何度も教えて、安心させてあげるんだ。
……少しでも、喜んでくれたら嬉しいな。

ーーー追記ーーー
ボンドルドの本当の名前は、『明星 望（あけぼし のぞむ）』って言うみたい。
望を夜明けに例えるなら、リードは何？って、望に聞いてみた。そしたら、一番星って答えてくれた。

だから、リードは《明星卿（みょうじょうきょう）》と名乗ることにした。

そしてリードは、強くなるって決めた。
望がもう二度と《黎明卿》を名乗らなくてもいいように、望が自分らしくあるために。
明星卿として、黎明卿を超えるんだ。

リード達はこの先、どんな冒険者になるのだろう。
それぞれの強みや特技を活かすかもしれない。
新たな何かを見つけて、その道を歩むのかもしれない。
リードは、きっと後者だ。

ヒルダさんの歌で、望が結晶化した。
とても悲しかったけど、望にとっての理由があるって、リードは信じてる。
それに、生きて再会するって約束したから。
また、『おかえり』って言わせてって、約束したから。
だから、リードは強くならなきゃいけない。

強くなるって、すっごく時間がかかる。
リードはまだ、戦いにおいて大きな貢献をすることはできない。
だから、みんなのことを理解してみることにした。
望がそうしたように、リードも副ギルドマスターとして、みんなのことを支えてあげなきゃいけないから。
それに、新しい仲間も増えたからね。望と再会したら、アルスィのことを紹介してあげなきゃ。

『夜明けのビヨンドエタニティ』にとっての一番星。
誰かを導ける強さと優しさ。
そしてーーー流星〈ステラ〉。

夜空に煌めく星のような、迷える者を導ける存在に、リードはなりたい。
それが、リードの憧れ。

光にも速度はある。リード達が見ている星の光は、何万年も前に星が太陽からもらった光だ。
つまり、星が輝くのにも、時間はかかる。

……強くなるまで、もう少しだけ時間をかけたって、良いよね？
その分、きっと強くなってみせるから。