容姿・経歴・その他メモ

「お酒は飲みません。決して」
偽名：ベルベット
一人称：私　二人称：あなた

　調合師の親の元で育ったネヴァーフ。家族共々ネヴァーフの血に違わぬ酒好きで、家にはリベルの小祭壇を祀り頻繁に飲み明かしていた。
　フィズは成人して調合師として働き始めた。親の指導もあってか仕事は順調そのもので、昼は調合、夜は酒と充実を体現した毎日を過ごしていた。しかし、それも長くは続かない。
　その日の宴会は過去一盛り上がった。錬金術学会の打ち上げで、話の合う者が多かったのだ。ベテラン術師から知見を得られて最高に充実した夜だった。だから、珍しく泥酔しまったのだ。
　次の日は急な仕事が舞い込んだ。珍しいことじゃない。フィズの腕も工房も小さな街ではそれなりに名が売れていたのだ。フィズは痛む頭と眩む視界で嘔吐を我慢しながら、ポーションの調合を行った。深く酔ったのは初めてだったから、冷静な判断力もなくなっていたし、周りの人も心配していなかった。酔いが醒めたのは、自分のせいで人が死にかけたのを知った時だった。
　この噂は瞬く間に広がり、フィズの名前は学会から抹消された。
　あの日からずっと、酒は口にしていない。

　それでも調合は好きで止めることはできなかった。他にやることもなかった。そうして、フィズは素晴らしい成果を生み出した。
　しかし、その話を聞くものは誰もいない。当然だ。フィズの信頼は地の底の遥か下に落ちていた。
　この革新的な調合法は必ず人々の役に立つ。困っている人を助けられる。しかし、フィズという人物が話すから誰も信用しない。
　だから、フィズは名を隠して場所を変え、その成果を喧伝することにした。せめて成果物が認められて人の役に立てれば良い。そこにフィズの名前が刻まれている必要はない。

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