容姿・経歴・その他メモ

身長

256cm

体重

512kg

髪

不明

瞳

不明

肌

不明

「ソウシャ」と名乗るエクスマキナ。
　竜と機械が融合したような通常の鎧型エクスマキナとは全く異なる構造、見た目をしており、体格も大柄。胸、外殻、頭部、機関部に大きな損傷、汚染があり、それが原因か記憶機能にシステム障害が見られる。

　過去、数例ほど遺跡やダンジョンなどで出没が報告されていたが信憑性がないとして公式的には存在が認められてなく、冒険者の間で語られる都市伝説のようなものであった。しかし冒険者たち……のちの「Search&Destroy」のことだが、その働きによって奇妙なエクスマキナの存在が確定された。

　性格は機械然としていて迂遠な行動よりも直接的な言動を好む。また、どうやらとても古い型式のエクスマキナのようで初めは受け答えにぎこちなさがうかがえた。しかし今では現代に適応できているようだ。



　………………


　…………


　……

　「———……縺医?√ｉ繝ｼ鬥呵、庄笆ｳ縺……プログラムの実行にはパスワードが必要です」


　「Pass：『虚栄(Lie)混じりて現(True)と生す』」　


　「……確認しました。ロックを開放します」




　——————デッドロックシステム「運命の奴隷」、リリース。記憶領域を解放します。




「さぁ、真実と向き合う時だ。環送者(魂の送り手)よ」




　……


　…………


　………………



『……目覚めろ、そして立ち上がれ。神々の編んだ鎖をぶち壊して、その足を一歩前に』『……貴様には期待している。そして認めよう。お前は確かに勇者(拓くもの)であったと』『行きなよ。きっとその先に後悔なんてないからさ』『がんばって、機械の兄ちゃん！』『ヌシを見てると心が燃え上がってくるわい！』『ふはははは！我がライバルに敗北なし！……いや、それだと俺が超えることも不可能ってことになるんじゃないか？』『僕に任せてよ。絶対に失望なんてさせないから』『大丈夫だよ。後方支援は任せて！』『もう、私のお菓子食べないでってば！……食べてない？検分しただけ？……あなたのそれは、世間一般では食べたって言うの！』『ナイス連携！やっと私もこの子に慣れてこれたし、次はもっとダイナミックな感じでいこう』『……ううん、大丈夫。気を張っていこう。……心残りが無いように』『——————はは、君のそんな様子、初めて見た』







『…………朝焼けが瞼を焼くんだ。……静かな朝に、微睡みに揺蕩っていて。友人と、知り合いと、それと背中を預け合える仲間……大切な人と、決して飽きることのない日常を送っていた。……一緒に喜んだり、一緒に悲しんだり……時々、喧嘩なんかしたりしても。……ずっと君(あなた)のそばにいる』

『——————……絶対命令完遂(グランドオーダーコンプリート)：……最高討伐対象「ブレーグ(エイル)」の生命活動の停止を確認。測定：破損組織の再生兆候なし、魔力循環器の賦活化に失敗、意識修繕の見込み無し……蘇生確率0%。実行、失敗。再計算。実行、失敗。再計算、失敗。再計算………』『検索完了(ヒット)：総数1件。必要権限を申請……応答なし。緊急領域突入(レッドサイン)：保護機能を強行突破します。——————：成功(コンクエステート)。命令改変(オーダーブレイク)……成功』




『命令更新、灰色の蛇(リ=インカーネーション)。実在証明、対象「エイル(Eil)」』








「……——————そんな、素敵な夢を見たんだ」「『親しき友』(エイル)よ——————私はずっと、共にいる」



　
　…………。




　————————————ひとつ、昔話をしようか。……神々の為に造られ、竜の為に天空を駆け、そして人の為に死んだ、在りし日の英雄——————いや、勇者の話を。


　
　
　EVosoR-Specialist1-Dragonias、造物銘「環送者」……いや、「エウルト(Eurt)」。それが彼。

　遠い、遠い昔の風の時代。エルダ達が神々に反旗を翻し邪神を生み出した後の、地上に邪神と魔族が蔓延り街を妖魔が闊歩する、そんな時代。欲の暴走から始まった神々と邪神たちの戦いはもはや地獄の様相を呈していた。
　最初は純粋な互いの力のぶつかり合いだった。力と質に勝る神々とその仲間たちは協力して、邪神たちの手勢を順調に倒していった。あのとき皆は世に再び平和がもたらされると信じて疑わなかった。……今思うと自分達の力に酔いすぎていたと痛感するよ。

　しかし邪神たちは、魔族たちは神々が思っていたよりもひどく狡猾で、酷薄で、醜悪だった。彼らは自分たちが持つ魔性を用いて多くの生命を犯し、自らの手駒として操っていった。神々の側が崩壊していくのは必然だっただろうね。戦いが進むにつれ多くの動物が死に、竜や巨人は穢され、精霊や霊獣は力を失い、最終的にはもはや世界が魔障に侵され尽くされるのも時間の問題という、そんな絶望的な状況へと陥っていくことになったんだ。

　だが。そんな苦境の中で、一つの英雄が産み落とされた。

　それはもともとエルダ討滅のための兵器として生産された機兵で、この戦いの初期に犠牲の出ない兵士(便利な消耗品)として……戦場を覆しうる切り札(ジョーカー)として造られようとした兵器だったんだ。もし始めから造っていたなら、今の世界に魔族は存在していないだろうね。しかし、それが実行にうつされることはなかった。「D計画」…………人、竜、機械の融合を前提とした製造方法とその研究に多くの問題を抱えていたからだ。

　……え？どんなものなんだって？

　気分が悪くなるから聞かない方がいいと思うけど……「それでもいいから」？
　……君がそういうならいいけど。うーん、ちょっと内容が内容だからぼかして言うと、今でいうウィザード、ソーサラー以上の人間一人一人の脳みそを混ぜ混ぜして……適性のある赤子を強制的に発育させ、機械につないで竜の魔力とさっきの——————

　——————んん。語りすぎちゃったね。

　とにかくいろんな課題があったんだけど、切羽詰まった神々と竜、人々は無茶をしてそれを行ったんだ。
　「D計画」の強行は多くの犠牲を伴ったし、中止にするか何度も検討された。始めの予定だと兵士は量産してみんなの代わりに戦うはずだったんだけど……プロトタイプの製造でトラブルが起きて施設が全損、修繕の見込み無し。最終的に完成したのはたった一機。正直、あの時は絶望したね。

　神々の内でも何柱かは狂気に呑まれそうになってたし、竜は自分の巣に閉じこもり始めるし、人間は内輪で揉め始めるし……そんなだったから、だれもその竜機に期待する人はいなかった。彼の出陣はいつも独りぼっちだった。

　……だけど。

　彼は強くて、孤高で、優しくて…………たった独り魔族と戦い、そして世界を浄化していったんだ。
　
　全エルダの65％の殺戮、数多の魔族の軍勢の駆逐、そして「傲慢」、「猜疑」、「虚栄」の封印。とくにかっこよかったのは「猜疑」の幻惑幻覚をものともせず真正面から戦って打ち破った時かな……邪神の力に怯まず啖呵切ったあの瞬間は、映像にしてずっと残しておきたいよ……。

　……ゴホン。その活動期間余38年。——————永い永い戦いの中において、刹那とも思えるその時間……たったそれだけの間で竜機は圧倒的な戦功を挙げ、劣勢とも呼べる状況を覆し、邪神たちから戦局を引き戻した。誰も彼もが手のひらを返して褒め称えて、神々と竜とを賛美した。……彼の後についていこうとする者も増えたし、全員が一丸となって魔族たちに立ち向かっていった。

　しかし、その英雄の、最後まで戦い続けた竜機(彼)の最後は悲惨なものだったとされている。

　竜機の軌跡をなぞるだけだった人々には気づくはずもなかった。彼に刻み付けられた傷がある一点に達したとき、あまねくすべてが崩壊の一途をたどることになったんだ。その竜焔は人魔全てを燃やし尽くし、その矛先は今まで守っていたはずの存在にすら向けられた。

　竜機はその後人にも魔族にも甚大な被害をもたらして、最終的に数多の神々の権能と、風の精霊王による粛清とともに彼の舞台は幕を閉じた。今では……殺戮しか知らなかった機械の最後は、ちっぽけな「死」という空虚で飾られることになったのさ。
　めでたしめでたし。世界は元の姿を取り戻したとさ。



　…………ん？何か聞きたいことでもあるのかい？




　——————「それが勇者(本当)の結末(終わり)か」？
　



　……はは、鋭いね。

　いいや。まだこの話(竜機の物語)は完全じゃない。

　一見狂ってしまったように見えた彼は、そうじゃなかった。たった一つの「目的」を達成するためだけに文字通りその身を削って、魂をも天秤にのせていた。その目的は、たった一つの嘘(Lie)の存在証明。消えてしまった(何にもなれなかった)夢幻が、ただそこに在ったことを示すための果てしのない旅路。
　それは天の星々をその手につかみ取るような、あるいはそれ以上の机上の空論。人も、竜も、神々でさえも不可能と断じるような馬鹿げた挑戦。底なしの深淵に進み征くような、蛮勇極まりない行動。

　ある時は上位魔族の領域に赴き、魔性の者の死について観察した。4059の妖魔が干からびるように死んだとき、ついに上位魔族に見つかって、相手の命を12削りながらも撤退した。

　ある時は、霊魂の研究が盛んであった死霊術師の国に訪れた。部外者として人々に避けられながらも、自分に師として術を教授してくれる老人を見つけたが、実はそれが邪神の家来で、間一髪基幹システムごと逝かれる寸前に包囲網を破壊して逃げ出せた。

　またある時は永遠の使者たる蛇王ヨルムンガンドの住処に行って直接魂の在り処について問おうとしたが、ちょうど機嫌が悪かったヨルムンガンドと対立、戦闘が始まり周囲一帯が焦土と化した。
　
　……彼は愚直に挑戦し続け失敗し続けた。時にはすべてがひっくり返ってしまうような選択をも取りながら。しかし、ついにやり遂げた。終わりのない証明を。死の淵まで止まることのない前進を。
　いろんな人に嘲られた。殺意すら向けられていた。英雄どころか、裏切り者とも呼ばれるような毎日だった。最後の最後に達成できたとて、その終わりは変わらぬ「死」で埋め尽くされることになったし、やりきれなかったことも山ほどあった。
　
　

　——————けど、ね。


　
　その姿に救われた人がいて。自称ライバルがいて。その背中を応援していた人がいて。腐れ縁の蛇がいて。その最後に敬意を払った人がいて。
　終わりのない戦火の中で、その人たちは確かにその生きざまに、「勇者」を見たんだ。


　……二度の粛正があって、きっと、今。彼の目的が成し遂げられたのか断じることができる人はいない。かつて彼が生きた証はもう示すことはできない。



　だけど、彼が遺したその「心(道標)」は、誰かの奥底に生き続けているんだ。

　それは、きっと。今でもなお、煌々と。






　……どうしたんだい、何か不思議そうな様子だけど。






「貴女にとって、『彼』はどういった存在なのですか」






　…………ふふ、意地悪なこときくね。


　私にとって、彼は仲間であり、友人であり、家族であり、取引相手でもある……背中を預け合える相棒？……ううん、それだけじゃない。

　だから、きっと。



　「彼(あなた)は、私の————————————

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