ぼろぼろになったサラシを両腕に巻き、マスクで口を隠した子供。
ぼさぼさの髪にやせ細った体。それに不釣り合いな装備品の数々が目立つ。

物心ついたとき、かすかにそうだったと思い出せるのは盗みに失敗し、店主にボロ雑巾にされた記憶だ。
折れた右足を引きずりながら、歩く。──刺さるのは、同じように道端で生活する者たちからの拒絶の目。
薄い目に、平たい顔立ち……。
自分とただ見てくれが違うというだけで、自分よりもこの世のシミのようにうつむき何もしない彼らに蔑まれているという事実
そんな現実が、嫌いで嫌いで、仕方がなかった。

ある時、住処にしていた小さな森に数人の『武器を持った奴』がやってきた。
一人、偉そうなやつがいた。

小さな剣で回りに傷をつけるし、先頭を進んでいる。

住処を荒らされるのは嫌だ。そう思って、イタズラを仕掛けることにした。
夜、彼らが火を煌々と焚いている彼らに向け、ひどく腐った匂いの肉を投げつける。
この森で死んだ、魔獣の子供。群れを成す彼らについていけなかった肉を餌に魔獣を呼ぶ。

ざわざわと森が騒がしくなっていく……。

彼らは奮闘するも、最後は魔獣の腹の中。

やってやったと誇りながら、荷物を漁る。

「ない……食べるものが」

食料は魔獣に根こそぎ奪われた後だった。
残ったものは2本の短剣と偉そうな冒険者が着ていた服だけだった。それも、魔獣の牙で穴だらけだ。

それらをまとめて、森を出る。
近々、どこか遠くへ馬車が出るらしい。これで顔は隠せる……。

そして、塵のように扱われた子供は旅へ出る。業を背負いながら。