ヴェルトールは、何名かの平民生まれの冒険者と個人的なつながりを持っていた。

そのうちの一人がガリア・ウェビウスだった。明るく聡明な戦士であり、仲間と共にいくつかの功績をあげた優秀な冒険者だった。

彼女には二人の娘がいた。

長女のミリシャは彼女によく似た赤髪で、次女のフィオラは…どの親族とも似つかない、真っ白な髪を持って生まれてきた。


―――同じころ、二人の父が命を落とした。

当時、騎士団を束ねる立場であったヴェルトールは、開拓団構想の真っ最中だった。

母を亡くしたばかりの、自身の娘であるアリス。ミリシャとフィオラの二人の少女のことは、他人事ではなかった。無論、冒険者としてのガリアの戦力が欲しかったというのは間違いない。

二人とアリスは、すぐに仲良くなった。少しだけアリスの方がお姉さんではあったが、幼馴染と言っても差し支えない関係を築いていった。

憧れの姉だった。

運動神経もよく、明るくて誰からも好かれる少女。ミリシャは、姉としては理想の姿だった。お母さんに似てるのも…

―――今も、それは変わらない。

けれど、額から血を流し、意識も混濁した状態で支えられて帰還した姉の姿は、あまり見たくないものだった。

積もった雪に滴る血痕のことは、忘れられそうにない。



漠然と、今のままではいけないのだという事実を突きつけられた気がする。

私は何者なんだろうか。

母とは似ていないね、とよく言われる。父のことは…よく知らない。

でも、なんとなくだけど、似てないんじゃないかなと思う。

…私は、誰なんだろう。

アリスと仲が良かったのは、どちらかと言えばミリシャの方。私は、時々フラムさんにお話をせがんだりはしたけど、なんとなく距離を測ってしまうようなところがあったかもしれない。でも、優しくしてくれたことをよく覚えている。

今のところ、故郷のために役に立つこと以外の目的はない。