平凡そのものの山田未亜には、平凡な理想があった。
「悩んでる人を助けられたらいいなぁ」

未亜は幼い頃、友達になんかいい感じのひとことをもらって気持ちが楽になったことがあった。
自分をかわいそうだと思う気持ちがなくなったのだ。
それ以来、そんな心地いいひとことを自分も言えたらいいなぁと思っているが、なかなか機会がない。アイデアも浮かばない。
ていうかあのとき言われたのってどんなひとことだっけ？

ひとを元気づけたり癒やしたりできるのが理想だなぁと常々思っているけれど、思ってるだけだった。
まあでもいいじゃないですか。人生そんなもので。探してないわけじゃない。

……そんなふうに凡々と生きていたある日、彼女は階段から転落死した。
足を滑らせた誰かにしがみつかれたような気もするがよく覚えていない。


目が覚めると彼女は別世界にいた。
「あいたたた……」
体を起こす。するとどよめきが起こった。
「お目覚めだ！」「守り神さまじゃ！」「200年ぶりのご降臨じゃ！」

彼女は古代種族エルダとして転生していた。
おまけに転生した際に《ユグドラシル》にアクセスもできるようになっていた。
おかげで村人たちの「お悩み相談」を受け、耳に心地いい助言を乱発できた。顔も可愛い。スタイルも抜群。
この世界、エリンでなら理想をかなえられるかも……！

だがさすがにスマホで検索したことをそのまま言ってるみたいで不安になってくる。

せっかく転生したんだし……もうちょっとこう……あるでしょ！
2年くらい村人にちやほやされて満足したし、その間にこのGoogl……じゃなくて
《ユグドラシル》の使い方も多少はわかってきた。

だから旅にでも出てみよう。

『転生したら古代種族になっていたので時代の悩みを解決した件』はじまります！

「い……いけるでしょ！　なんてたって《ユグドラシル》の力があるし、戦いは仲間に任せれば……！」

……などとお気楽でいられたのは旅を始めて3日ほどだけだった。

最初に訪れた町。
人にじろじろ見られるのは可愛すぎるゆえかと思い調子こいていたが、すぐに衛兵にも呼び止められる。
「ちょっと来てもらおうか」
「え……え！？　どうして！？　何もわるいことしてないのに！」
「…………」

衛兵の顔は怖かった。いかつかった。目つきも鋭い。
「……まさかとは思うが、山間の”エルダ崇拝の因習村”から帰ってきた行商人が妙なことを言っていてな……」

ん？　え？　エルダ崇拝？　何？　因習村？　　”ユグドラシル”で《ネットサーチ》してみる。
そこで初めて、”エルダ”がこの世界では忌み嫌われていることを未亜は知った。
チヤホヤしてくれたあの村が特殊だったのだ。
そういえば旅に出ると伝えたとき、村人たちは「ついに革命が」「”粛清”を塗り替える」なんて言っていたっけ。

「さあ来い」
わたしの古代種族の体は……大罪人！？
衛兵なんかにつかまったらただじゃすまない――。

（……まずいかも！）
「何がまずい？　　言ってみろ」
「ひい！　いえ、あの、わたしはほんとに村から出たばかりで――」
「やはりあの因習村からか？」
「ち、ちがいます！」

そのとき、ひとりのヴァーナが視界に入った。妙に特徴的で茫洋とした雰囲気のウサギ。
彼？彼女？はふところからおもむろにグレネードを取り出して、衛兵の頭上に投げつけた。

あとはあっという間だった。

衛兵が混乱している間にヴァーナは未亜を誘導し、逃がしてくれた。

何が何だかわからない。しかし”ラパン”と名乗ったヴァーナが未亜を助けてくれたことは事実だった。

「あ、あの……、すみません！　わたし、その……記憶喪失みたいなもので！　しばらく案内してくれる人が必要で！」
わらにもすがる想いでそう言うと、ラパンは目を丸くした。
「記憶喪失？」「わ、かる。うん　わかるよ」
……なぜかわからないが親近感を持ってくれたようだ。

”外の世界”は未亜にもこの転生した肉体にとっても危険すぎた。しばらくはラパンについていくしかないだろう。

ラパンとの道中ではなぜか走って逃げることが多く、未亜は一般スキル《ランナー》を習得した。
毎朝のジョギングもなるべく継続している。もうすぐ《トレーニング：筋力》がとれるかも。
ダッシュダッシュ！　エルダだってバレるな！　バレそうになったらダッシュダッシュ！


ところで、ラパンはたまにボールをリフティングして遊んでいる。蹴鞠……なのか？
未亜も現代地球のサッカーの知識を活かして何度か一緒に遊んだ。
「ミア、うまい　ね」
そうなのだ。これでも運動神経は普通くらいはある。褒められて気分良くボールを高く蹴り上げる。
「でも、強く蹴るの、だめ」
「……どうして？」
「そのぼーる、ぐれねーど」
「！？！？！？！？！」
未亜は一般スキル《サッカー》を取得した。

ラパンを慕ってついていき、温泉街ルネスを訪れた未亜。
眼鏡とマスクで顔を隠すのはもうお手の物だ。

人の出入りが激しい観光地なら紛れて隠れやすい。好都合かも。

しかし……こう……、なんだろう……。

旅立って以来、このエルダの肉体が、たまに何かを「バラバラにしたい」という衝動に突き動かされている気がする。
いったい何をバラバラに？

疑問を抱きつつも未亜は今日ものほほんと過ごす。
ラパンと一緒にする朝のジョギング。からの温泉。最高やね。

ぼへ〜〜〜〜〜。

●人間性決定表：普段は「かわいそう」なふりをしているが、本当は「凡人」である。
立場表：学生・劣等生
大切表：思い出せぬひとこと・あなたには思い出せそうで思い出せない記憶がある。

●特異表（転生）
転生前：あなたには理想がある。それを実現するまでは死んでも死にきれない。
転生後：理想をかなえられぬまま死んだあなたは、転生でやり直せる機会を得た。今度こそ失敗しない。《リサーチ》

転移表（転生）：転落・あなたは階段で落ちそうになった他人にしがみつかれて落下した。激しい痛みと衝撃に、あなたは死を思った。だが、なぜか目覚めたあなたは、見知らぬ場所にいることに気づいた。
目的表（転生）：時代・あなたがエリンに転生したことは、時代を変える契機だった。時代はあなたに何を求めるのか、それはこれから明らかになる。

### ■探索
《ネットサーチ》：単体対象：エネミー識別、トラップ探知、および情報収集に+1D、シナリオ3回
アンラッキー：【感知】の判定直後に達成値に+2、シナリオ1回
6+2D 危険感知判定
6+3D 感知判定＋リサーチ（情報収集）

6+2D トラップ探知判定
3+2D トラップ解除判定

11+2D アイテム鑑定判定

※：大きな目でアイテム鑑定+3

###■セットアップ

《クイックサーチ》《エンサイクロペディア》《コンコーダンス》　【MP4】
11+3D エネミー識別判定
11+4D エネミー識別判定＋ネットサーチ

《スキャニング》物理防御-6 魔法防御-6　【MP4】

※：大きな目でエネミー識別+3

### ■戦闘中
8+3D+2 魔術判定
5D+5 クラックマジック 【MP3】
5D+5+8 クラックマジック+プログラムマジック【MP7】
《ディレイコマンド》　対象にノックバック(2)付与　【MP4】


魔術判定：1Dコンセントレイション、+2ニーヴンズゴーグル
ダメージ：1Dマジシャンズマイト、+7プログラムマジック【知性】
ムーブで《ウィルスコマンド》　クラックマジックに毒(1)付与 【MP5】

### ■戦闘中・リアクション
3+2D 回避判定
《ロジカルウォール》 ダメージ-12 【MP2】


### ■1回のみ
5D+5+50 クラックマジック＋リゼントメント 【MP3】
5D+5+50+8 クラックマジック＋リゼントメント+プログラムマジック 【MP7】