とある遺跡で発掘されたエクスマキナ。
高い技術力が使われてることは確かだが、当人にその記憶がなく、知識もないため大半の機能が詳細不明となっている。
発掘後、アヴァルシア王国の貴族の老婦人、アルメリア婦人に引き取られる。
婦人は、アイナがエクスマキナであることをまるで気にせず、実の娘のように接してくれた。
アイナは最初はその扱いに困惑しかしこまった態度を取っていたが、アルメリア婦人のもっと我儘を言ったりしていいんだよ。という言葉を聞き、不器用だが少しずつ、彼女に甘えるようになっていった。
アイナは戦闘能力はあまり高くなかったが、使用人としての能力はなぜか高く、アルメリア婦人の代わりに家事や買い物などを行っていた。
その度にアルメリア婦人がほめてくれるため、アイナの自己肯定感はめちゃめちゃに上がっていった。
アイナはこの穏やかな日々がずっと続くと思っていた。

しかし、そんな日々は徐々に終わりに向かっていった。
アルメリア婦人は高齢だ。
少しづつ体力がなくなっていき、起きていられる時間が少しづつ減っていっていた。
アイナは献身的に彼女の世話をするも、寿命には抗えなかった。

婦人が寝ている時間の方が多くなってきたころ、アイナはアルメリア婦人の寝室に呼び出される。
もしかして、なにか粗相をしてしまったのか？アイナは心配しながら寝室へと向かった。
寝室に入ると、婦人は穏やかな顔でアイナに言葉をかける。
「ずっと私たちの傍にいてくれてありがとう。娘ができたみたいで本当に楽しかったわ」
まるで、それが最後の言葉かのようにやさしく語りかける。
「でも、それも今日でおしまい」
どういうこと！？アイナは思わず叫んでしまいそうになるが、必死に抑えて次の言葉を待つ。
「アイナ、ずっと私たちのところにいなくていいのよ？世界はとても広い。素敵なところだっていっぱいある。あなたには、もっといろんな物を見てほしい」
「私たちはもう長くない。私たちがいなくなったら世界中を旅して、いろんな物を見て、学んできてちょうだい。これが私たちからあなたへの最後のお願い」
アイナは涙を流しながら、その言葉を静かに聞き
「かしこまりました」
と一言返事をした。

それから数日後、アルメリア婦人はアイナに看取られて息を引き取った。

アルメリア婦人の葬儀から数日、アイナは旅支度を済ませアヴァルシア王国を旅立った。
「アルメリア様、あなたの願いパーフェクトに叶えてみせます」