昔、お母様やお父様に壮大な冒険の物語を読んで頂きました。
仲間と共に困難を乗り越え、強大な敵を打ち果たし、眩しい光を、美しい景色を目に焼きつけるという＿＿在り来りな、御伽噺。
でも、私はそれが好きでした。とても魅力的で、私もそれを体験したいと思ったのです。
…ふふ、成人の儀も控えているのにこんな事……子供っぽい、ですよね。
それでも、いつか私も＿＿＿＿その景色を、仲間と共に見たいと思うのです。

リアはとっても良い子だよ。優しくて、真面目で…ちょっとやんちゃではあるけれど。僕達の都合で連れ出してしまったから、心配していたんだけど…仲の良い友達も出来たみたいで良かった。
＿＿全く、あの子ったらまたお屋敷を抜け出して。いつも門限迄に帰ってくるからいいけれど、危ないから一言伝えてから出かけて欲しいわ。一体誰に似たのかしら…
…君しか居ないだろう、と言ったら怒るかな。

…れって、俺ァ見たんだよ！
おお、ほら、お前さんも聞いた事があるだろう、狐の噂！
月が綺麗な夜に化け狐が踊ってるっつーアレだよ！
狐の面をつけてて顔は見えなかったんだが、ありゃあ間違いなく別嬪さんだ！
黒い髪に白い肌でよ、そりゃあもう綺麗な舞だった！
…踊り？嗚呼、見た事ない踊りだったな、だから狐の仕業に違いねぇ！
あ、おい、俺ぁ嘘なんざついてないぞ！お前達も見りゃあ………