遂にお嬢様の我慢が限界に達しました。いつかはこうなると思っていましたが、想像よりも早かったというのが正直な感想でしょうか。本来であれば、もう少し"リハビリ"を熟してから行きたかったのですが。
　さて、愛馬のラモーヌで駆け抜けた２日。無事に遺構都市「メイズハルト」へ辿り着く事が出来ました。妙に懐かしい感覚がしますが……旦那様に拾われる前に、ここに立ち寄った事があるのでしょうか。思い出せません。

　お嬢様と共に街を散策していると、妙な男……左にこだわる不審者に絡まれました。冒険者は荒くれが多いとは伺っていましたが、あそこまで行くと危険な薬物に手を染めている可能性もありますね。その男に絡まれた為、お嬢様を守るべく立ちはだかったのですが……今度は右にこだわる不審者が現れ、妙に影を纏う女も現れ……。気がつけば、共にパーティとしてダンジョンに向かう事になりました。お嬢様の社交性の高さには感動いたしましたが、次期当主としてその素直さには少し心配がよぎります。旦那様に言われた通り、お嬢様をしっかりと導かねばなりません。
　あぁ、そういえば件の2人は「デストラ」と「11号」というお名前だそうです。変ですね。

　さて、ダンジョンに挑む事になった私たちですが、どうやらここは「ランダムダンジョン」という性質がある様で、入る度に構造が変化するのだとか。この街はその法則性を調べている様です。道中は……特筆する事もありませんが、奇妙なダンジョンだったとだけ。私の盾を貫く存在はいませんでしたわ。
　……いえ、最後の空間の、あのゴーレム。お嬢様の持つ"資格"を理解している様でした。果たして資格とは？本家の者でも詳しい者はいないというのに……それに……あの戦闘の途中から、記憶、が……覚え、て……な……

　……まぁ、目を覚ました時には戦闘が終わってましたし、お嬢様やパーティの2人が無事に何とかしてくれたのでしょう。私も精進しなければ。戦闘後には妙な石板も手に入れましたし、どうやら何かしらの秘密が関わっている事は確定ですので、本家に伝書を届けなければ。
　そうそう、例の左にこだわる男が最後に石板の欠片を奪って行きましたが……妙な胸騒ぎがします。"影"に動向を確認させましょう。