どうやら不思議な出来事に巻き込まれてしまったようです。
暫く”あっち”からの指名も無く剣の鍛錬に励んでいたらギルドから呼び出しを頂き
アンナ様方とパーティを組ませて頂きました。


他の剣士様に比べたら素人同然なこの剣ですが、アンナ様方を護って死ねるのなら本望です。
今回呼び出されたのはアリス様という有名な冒険者様が行方不明になられたという事で
洞窟を探索をしていましたが崩落により何処か別の場所へ飛ばされてしまいました。


そこでは既存のお金は使えず、宿に困り途方に暮れてしまいました。
しかし世界が変わったとは言え殿方やご婦人の性の嗜好は共通でしょう。安全に簡単にお金を稼げる。
そのような提案をしようと思った矢先に別の宿があり助かりました。
それでもお金は多いに越したことはありません。いつでも売れるようにしなければ。


…と、そんな考えをしているとこちらでもギルドの概念があるらしくスライムを討伐することで資格を得、依頼を手に入れることが可能だという事を知りました。
ならば、冒険者である私達はモンスターを倒すしかありませんね。


戦闘に活躍できないのは、私の鍛えが悪いからだ。もっと強くならないと。もっと腕を磨かないと。もっと、もっと。

その後アンナ様の魔術行使。シュザク様の銃撃。エルゼ様の魔法サポートにより誰一人落ちることなくスライムを討伐することが出来ました。
素人の私でもわかるほどの素晴らしい腕前でした。私も皆様のように強くならなければ。

本日は分かれてのお仕事です。
午前中は畑のお仕事。午後はエルゼ様とお店のお手伝いです。
どちらも肉体労働でなんとかなるお仕事だったので能無しの私でもなんとかなりました。
午後は少しトラブルがあり、あわや戦闘といったところでしたが…なんとか私の謝罪一つでなんとかなりました。
お金も頂けましたし、案外いい方なのかもしれません。


……ドキっとした。
ああやってエルゼ様が盗みを強く叱責している姿を見て、矢を刺されたような気分になった。
私のことじゃ、ない。確かに盗みを働いたことはある。
けど、今回は私じゃない。私じゃ……ない。


お給金を頂いたので空いてる時間があれば服を作るための道具を購入しようと思う。
コトコ様は可愛いから、お店のユニフォームを一新すれば看板娘目当てで来客が多くなるかもしれない。
…これは、罪滅ぼしなんかじゃ、ない。ただしたかっただけだ。そうだ。私は……

色々作業は順調。アドバイスももらったしどうにかなるかもしれない。
コトコ様も喜んでくれたし、頑張りがいがありそうです。
今日はお仕事でサン・ユグヴァリ公国へ護衛のお仕事で向かいました。
そこでもアリス様の所在を聞いてみましたがやはりいい答えは返ってきません。
帰る糸口も見つからないけれど…別に帰ろうが帰らなかろうが私のやることは変わらないだろうし、今は皆様を護るのを優先しよう。
…と、思った矢先にトラウマを思い出してしまった。
男の人の怒声はいくら聞いても慣れない。怖い。前の日記にも自分で書いただろう。
今は私は何もしていない。ちゃんと物を買っている。盗んでない。怒られる理由は無い。
…そう思い込んでも、やっぱり怖い。シュザク様に思わず縋ってしまった。きっと迷惑だ。後でしっかり謝ろう。


「お前の剣は、想いが足りねぇよ」
うるさい。黙れ。ふざけるな。そんな事はお前に言われなくたって分かってる。
この剣が他の剣士に勝ってたまるか。私はそういうゴミでしかないんだ。
嫌い。嫌い。嫌い。あの人よりもこんな自分が嫌い。死んでしまえ。








…そうだ。思い出した。
私は死ぬ為に剣を握っていたんだった。
このパーティに入って忘れていた。
私は死ぬ為に前線に立っていたんだった。
もっと腕を磨いて強くなろう。
もっと強くなって、強い敵と戦って…死んでやろう。
その時こそ、私が本当に笑える時だ。

私の想いは、死へと繋がる剣で十分だ。

明日も頑張ろう。

剣！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！！

こわい。

こわい。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。
私がいけないんです。私が生きているのがいけないんです。私が愚かにも生きてしまったのがいけないんです。
アンナ様も、エルゼ様も、シュザク様も悪くありません。私が悪いんです。私がすべて、すべていけないんです。



………よく思い出す。
私がベラ…ベラ・ホウセンカという名前を貰う前のこと。
名無しのゴミであったころのこと。
汚らわしくて、醜い、邪魔なモノだったあのころ。
路上で、裏路地で、ゴミ捨て場で行われた数々のこと。
…ここに書きたくはないくらいのことをされたっけ。
その頃を思い出すから、怒声は、責める声は嫌いだ。

…落ち着こう。今は皆様の道具であることを思い出せ。
死ぬのなんて怖くない。むしろ本望だ。
その為に、それだけの為に、そうできる私だからこそ、このパーティーに未だ居させて貰ってるのを忘れるな。
私は変わりが効く代用品であることを忘れるな。

…私達のパーティはもう洞窟に入らない方がいいんじゃないか、なんて思ってしまうほど洞窟でのハプニングが多い。
この世界に漂流したのも洞窟で、今日の落下も洞窟。…なんだか嫌になる。
落ちた先で私達はドワーフの一族に身柄を囚われ、ドロシィという女の子と出会った。
その女の子に仕事は楽しいかと問いかけられて、私はなんて返せばいいのかよくわからなかった。

いつか死ぬ為に行っている仕事は楽しいのかな。
日々戦いの連続で、休む時間なんてほとんどない仕事は楽しいのかな。

…けど、一つだけ分かることはある。
皆様のお役に立てることは嬉しい、ということ。

この想いが楽しいにつながるのかは分からないけど、これからも皆様の役に立てればいいな。

今日は城下町を探索。久々にゆっくりした時間を過ごした気がします。
図書館へ向かったり、その後は鍛錬を行ったり、陛下に謁見をしたり。
アリス様の情報は今だ掴めず。…この世界には居ないのかもしれませんね。

命を削るような戦いの無い日々になったら…私はどうなるんだろう。

奴隷。
…懐かしい響きだ。
私もかつては奴隷だったから、その辛さ、苦しさはよくわかる。
今となっては戦ってお金を得ることが出来たけれど、昔は本当に身体でしかお金を稼ぐ方法が無かった。
奴隷だから気遣う必要もなく、乱暴に扱われたのも……やめよう。思い出したくない。

奴隷制度は嫌いだ。それが成り立つ世界が嫌いだ。…私にもっと力があれば。お金があれば…


……そんなことを思っていたら、エルゼ様の単独行動を知った。
きっと、エルゼ様はエルゼ様なりの考えがあるのかと思います。
けれど、それを許すことはできそうにない。
悪意のあるイキモノは容易く人を陥れる。今回は無事だったけどエルゼ様が奴隷になってしまう可能性だってあった。
せめて私やシュザク様…身の回りを護れる人を連れて行って欲しかった。
頼られない自分が情けない。エルゼ様の考えを受け入れられない自分が情けない。

今日はダメな日みたい。日記はここまでにしよう。
次こそはエルゼ様に頼られるようになりたい。

サクリファイスの回数が多くなる度に身体が悲鳴をあげているのを感じる。
けれど、私はこれしか出来ないから。これをすることでしか自分に価値が無いから、頑張らないと。
無茶だって承知の上だ。
だって、無茶をしないと私がこのパーティに居られる理由がないから。
使えない駒を手元に置くなんてこと、アンナ様はきっとしないから。


ベルオムが強くなって戻ってきた。
変形もする。
感動が凄すぎて逆に冷静になってしまっているパターンですね、これは。
今日からもよろしくね、ベルオム。

コトコ様が長くない。
会いに行かなければ
きっと、まってるから

人が死ぬ光景を何度も見てきた。
飢えで、理不尽な暴力で、病気で。
余りにも多くの死を見てきたからコトコ様が死んでも涙は出なかった。
涙だなんて人間らしいもの、私にはもう無くなってしまったのかもしれない。


…コトコ様の魂を背負って、私はこれからも戦う。
行ってらっしゃい。と背中を押されたから、ただただ死ぬわけにはいかない。
楽しいお話、大変だったお話。色々なお土産話を持ってコトコ様に会いに行かなきゃ。







私は、死んだ。
確かにあの一撃で。

何故生きているんだろう。
あの時はコトコ様が、だなんて言ったけれど、確かに死んだはずだ。
昔から望んでいた死が、ようやく訪れた。



なのに、この震えは何だろう。
生まれて初めて、死ぬのが怖いと感じてる。
こんなじゃ、皆様の役に立てないのに。


もっと、道具として頑張らないと。
心なんて捨てて、もっと。

世界樹の葉。不治の病すらも治せてしまう奇跡の葉。
そんな葉がもう少し早く手に入っていたら、だなんて思ってしまう。

これ以上誰かが死ぬよりかは全然いいけれど、コトコ様の顔がやはり浮かんでしまう。

…以前の私なら変わってあげられたら良かったのに、だなんていう気がするけれど今はそんなことは言えない。
…やっぱり、死ぬのが怖いと感じてしまってる。
どうにか、変えたい。



……本当に？

不思議な世界に連れていかれ、バラバラになった私達。
心配する必要はない。アンナ様方は強い。
それより私が一人で戦えるかが不安だったけれど、問題は無かった。

長く戦える力も手に入った。
少しずつ、前に進もう。

…最近は転送がブームなのか、また何処かへと飛ばされ機械の女の子に出会いました。
また一人、お友達が出来そうで嬉しいです。

エルゼ様と一緒にお出掛けをしました。
…まるで、本当の友達みたいに。
嬉しい反面、どうしてここまでしてくれるのか疑問を感じてしまう。
剣以上を求めているのかな…


魔王の存在、地域の魔物の活発化。
問題は増えていくばかりです。

そして、私の剣士としての力の未熟さ。
彼の者の騎士としての誇り。

私はまだまだ弱い。
それを痛感した一日だった。

…まさか、帰ってこれるとは思わなかった。
アリス様の目撃情報すら見つけられず、あの世界で生きていくとばかり考えていた。
こうして交互に行き来出来れば、あの世界の方々と仲良く出来ていいのに。……なんて。



二年の時が経った。正確には経っていた。
ラクシアとこんなに時間に差があるだなんて思ってなかった。

新しい機能を備えたベルオムと引き換えに、ラフティニア様は死んでしまった。

また、人が死んだ。
自分の心が定まっていない中、周りの人がどんどん死んでしまう。
アンナ様やエルゼ様、シュザク様までもが死んでしまったら。そんなことを考えても意味はないのに考えずにはいられない。
本当に生きたいと思う人達が死んで、私のような中途半端が生き残り続ける。
やっぱり、この世界に神様なんていない。


‥‥代われたらどんなにいいか。

崩れている街を巡り続けた。
少し前まで普通に人が生きていて賑わっていたのが嘘のような静けさだった。
少しでも多くの人が生き残っていることを願いながら、先を急ぐ。


グラーセルでの一戦を終えた後、避難民がここに集まっていることを聞いて少し安堵した半面、怖さを覚えていた。
私達がこの世界を転覆させようと企んでいるのでは、という疑念を抱かれていないか。
現にこの世界においては私達に叶う兵士やモンスターはそう居ないだろう。
そしてアンナ様のゴーレム。魔物を操る魔法を持っていない、だなんてこの世界の人には分からない。



私の考えすぎも意味はなく、状況が状況なのか案外すんなりと受け入れて貰った。
少しほっとして眠りにつく。




初めての感情だった。
人を、誰かを、何かに対してここまでの強い思いを抱えたことは無かった。
ゼクス。
この男の名前は忘れない。
殺し合いにも拘わらず戦いの場からいきなり去ったこと。
私を殺せたにも拘わらず殺さなかったこと。
……剣士として、私より遥かに秀でていたこと。
悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。悔しい。
いつでも殺せるぞ、と言わんばかりのアイツの顔が憎い。


殺してやりたい。
アイツを否定してやりたい。

この想いは、誰にも邪魔させない。

負けてない。
終わりじゃない。
生きているなら、生きているならまだ打つ手はある。

私達は、挫けない。














一夜明けて私なんかがとても失礼なことを皆様に言っててしまったことに気付いた
恥ずかしい忘れて欲しい無かったことにしてほしいもう私馬鹿ほんとばかばかばかばか

昔から…というよりかはベラ・ホウセンカという名前を貰ってからは水場に行く経験がほぼないから、水の中というのは相変わらず恐怖心がある。
けど、今は何処か安心感がある。
頼れる仲間が周りに居るから、安心して背中を任せられるのかもしれない。


アンジェラ様は1000年以上前からこの世界の事を知っている。
あまりに大きいスケールの話です。ついていけそうにない。



夢を見た。
この世界の全ての種族が笑って過ごせる、そんな素晴らしい世界を。
夢を見た。
私達が負け、この世界が滅ぶ未来を。

絶対に負けない。
私の命はどうなっても
違う。私は平和になった世界でこの人達と共に生きたい。
死にたくない。
これ以上望まれない死を迎える人を出し続けるわけにはいかない。


それが、剣(ベラ・ホウセンカ)として選んだ道だから。
これは絶対に、曲げちゃいけないんだ。

ここに記しているのは、所謂後日譚だ。
この日は当然メモをする余裕も、ましてや日記を書く余裕なんてなかった。
まさしく戦争と呼んでいいその戦いは、壮絶を極めた。
なので全ての決着がついた


そして現れたのは…ゼクス。
私の最大級の愛(さつい)を持って愛して(ころして)あげたのを今でも覚えている。

…というか、後日こうやって冷静になってから振り返ってみると本当に殺意で頭いっぱいですね、この頃。
今もう一度あの男と戦うことになったら、きっとあそこまでの殺意は出せないとは思う。
…多分。

そう、ついにまた起きてしまった。
死んだ筈のシュザク様…いえ、死に至るであろう一撃を食らってなお生きていたシュザク様。
私と同じ現象がまた起きたと考えつくのは容易でしょう。

この世界における私達とは、一体何者なんでしょうか。



そして、魔王との決戦。
アンナ様もエルゼ様も、そしてシュザク様や私も全力を出し尽くし手に入れた勝利。
失ったものも多かった。
ただ、その時は。
あの瞬間だけは。
勝利を心の底から喜んだ。





















生きてて、本当に良かった。

あの戦いの後、暫くは落ち着いた生活を過ごしていた。
ニアちゃんともデートしたし、皆様とまた各地を練り歩いたり…
前のような激しい戦いは無く、平和な日々でした。