そんなある意味ではよくある人生を20年ほど送ってきた彼女は、何故旅に出たのか。その理由に大きく関わってくるのが、前述したコーヒーである。
彼女がさらに書物を読み進めると、この黒色液体の名称は「珈琲(コーヒー)」という名称であること。豆の種類によりコーヒーの味や香りが大きく変わること、そしてその違いは産地や気候によるものが大きいことが分かった。
……もうお分かりだろう。彼女は自分で改造したコーヒーメーカーを片手に、旅に出た。そんな大層な目的も、大きな夢もない、なんとも言えない彼女の旅が始まった。

さて、と彼女は考える。旅を始めたはいいものの、ここは剣と魔法の世界ラクシア。無策に辺りを歩き回っては、魔物の餌となるのが通塗だろう。加えて彼女は自分の身体の弱さを分かっている。
そんなこんな思案していると、彼女の前に行商人のものだろうか、一両の馬車が通り過ぎる。……行商人。彼女は半ば無意識に馬車を止めていた。そこから彼女は、コーヒーのこととなると矢鱈と饒舌になる持ち前の特技(?)を活かし、コーヒーを宣伝すると共に馬車の荷台へと乗り込んだ。
御者との他愛もない会話を挟みつつ、彼女は馬車に揺られる。行き着く先は歓楽都市。そこで彼女は運命的な出会い……いや、再会を果たすわけだが……まあ、この話は機が熟してからと致しましょうか。

『あなたが墜ちてしまっても、私が翼となりましょう』
天上へと昇り過ぎた龍は、いつか己の翼が焼かれるのを感じながら後悔することとなる。自らの力を過信した結果の多くは悲劇へと帰結する。それは人も同じだ。彼女は深煎りしたコーヒーを片手に、たった一人モニターを眺めている。すべては、“彼女”を知る為に。唯一無二の友を知り、未来を共に生きるべく。

ある日のルーンフォークの集落にて、彼女は一人の女性と出会った。丁度訓練中であったその女性を、彼女はコーヒー入りのマグカップを片手に木陰に腰掛けて眺めている。彼女より小柄であるが、その身体は引き締まっており、そのポテンシャルの高さを窺えた。
彼女が他人に興味を抱くことは少なかった。例えその装いが独特でも、訓練内容が特殊なものでも、明らかにその身体がルーンフォークのものではなかったとしても、その頭に疑問符が浮かぶことはない。……ただまあ、その時の女性は彼女にとっての“興味を抱いたこと”の数少ない一例であった。
他の例？まあコーヒーですけど。
その女性が一息ついたのを見計らい、コーヒーを飲み干したマグカップを仕舞うと立ち上がる。女性の手甲に少し似ている黒手袋に包まれた手を叩きながら、静かに近付く。左手を前にして腹部に当て、右手は後ろに回し、浅く礼をする。
「初めまして、髪飾りの素敵なお嬢さん。私はロスト・C・カトリクス。貴女のお名前を伺っても宜しいですか？」

「ええ。思わぬ再会からの旅路となりましたが、私も楽しかったですよ」
「それはそれは。しかし、やはりアリアさんが居れば心強かったです。再度、友人としてではなく、戦友としても感謝を」
「……はい。あのひと時でも彼女の翼となることが出来ましたので。彼女が勝利を掴んだのです」
「ええ、勿論です。あ、そういえばですね。所長さんに頼み、あの時の最終戦闘の記録に関して閲覧許可を頂きまして」
「興味深いですよね。それで、この後見に行くのですが、一緒にどうですか？……彼女の手掛かりも何か掴めるかもしれませんし」
「今、何か仰いまし……あ、はい。そんなにバタバタして表現しなくとも深堀りはしませんよ。……ああ、しかし此れだけは私の一意見として伝えさせて頂きます。私は彼女を貴女……アリアさんとは認めていません」
「彼女は素晴らしい働きでした。それはアリアさんの潜在能力を最大限発揮しているとも言え……肉体への負荷を一切顧みていないとも言えるでしょう。今は問題ないのかもしれませんが、その負荷が精神へと影響することがあれば、いつかアリアさんは……彼女に乗っ取られてしまうかも、と不安に思うのですよ」
「そうですね。疲労を残すのはいけません。では、私はこれで失礼します」
「ええ。……良い夢を」
……何を一人で語っているのか分からない、と？それはそうでしょう。この時はたしか、アリアさんの方から話し掛けてくれましたので。このエピローグは、二人で成立致します。交互に台詞を切り貼りしてみれば如何でしょうか？

〈ラル=ヴェイネの観察鏡(顔)〉(20,000G)……能力が優秀かつ見た目がモノクルだって？最高じゃん。
〈ラル=ヴェイネの魔宝帯(首)〉(25,000G)……【サモフェⅡ】以降でMP10点を超えるからそのうち勝手にリジェネと化すかも。
〈ラル=ヴェイネの肩掛け(背)〉(15,000G)……HPも生命抵抗力もへなちょこだからね。十分優秀。
〈ラル=ヴェイネの～～～(任意／特殊効果なし)〉(500G～)……この辺で実用的かの壁。だって安いし、見た目が自由だからさ……。
〈ラル=ヴェイネの金鎖(耳)〉(7,500G)……一考の余地あり。ただ魔晶石(5点)が15個買えると考えると……。
〈ラル=ヴェイネの羽冠(頭)〉(60,000G)……高いよ。あとMP消費も地味に重い。
〈ラル=ヴェイネのマナリング(手)〉(40,000G)……高いって。あとコレ森羅魔法にも乗るの？
〈ラル=ヴェイネのダウンルッカー(足)〉(28,000G)……ロストさんにハイヒールは似合いませぬ。
〈ラル=ヴェイネの練魔帯(腰)〉(26,000G)……主動作消費の上、勝手に減るってなんだよ。どう使えと。