「七色のマナ」入学式。
俺はその時居合わせた新入生同士の班で組分け試験の課題に挑んだ。
ガストたちとの戦い、黒仮面の男の謎かけ。学園内の探索。
途中まで順調にこなしていたが、事件は最後の課題で起こった。
異大陸からきたというケンタウロス（！）の学生、スズカが布をどかすと、心臓が抜き取られた死体が見つかった。
課題の目標物を持っていた学生は、実はレッサーオーガが化けていたものだった。
通常のレッサーオーガとは異なり、操霊術や賦術を使いこなす個体のようで、苦戦を強いられた。
途中、敵のスパークを喰らって気を失ってしまったが、他の仲間が倒してくれ、課題を達成したことで「赤飛び」を果たした。
今回「赤飛び」を果たしたとはいえ、探索に集中するあまり体力管理が出来ておらず、不甲斐ない姿を見せてしまった。修行を積まなければ——。
しかし、レッサーオーガの持ち物に描かれていた正体不明の紋章、「魔研」の扉の開け方を知っていた、フードを被った謎の男シュメンドリックなど、未だ謎は解けない。

今回の教訓:アヴェンジャーの自傷は痛い。とにかく痛い。死にかけるほど痛い。
ひとまず、戦闘中でもさっと傷を治せるという賦術を学ばなければ——。

時は流れて夏季休暇の終わり頃。
ジャーナリストを志しているという魔動機術学科の学生、バーバラが失踪したので、これを捜索する依頼を請ける。
入学式で一緒だった班の仲間に加え、新たに魔動機術学科のエルフ、ウィルヘルミナと同行してユーシズの街を探し回った。
事実はこうだ。
バーバラはカメラ型の魔動機を組み上げていた。その魔動機を利用して特ダネを求めるあまり、悪人と一緒にその中で発生していた”奈落の魔域(シャロウアビス)”に取り込まれていた。
中には回転木馬の形をとったアンデッド、メモリーゴーランドが待ち構えており、バーバラを救うため戦いを挑んだ。
うっかり神官剣士のサタナを誘うのを忘れていたので、主な回復役がいない厳しい戦いとなったが、ウィルが放つヒーリング・バレットや、ついでに出席していた賦術学科で学んだヒールスプレーを使うことで何とか前線を維持し、撃破した。
賦術はたしかに強力だ。しかし、財布には優しくない。
バーバラはこれから、両親とはうまくやれていくのだろうか——。

今回の相手は動きが遅く、味方の斥候役のウルリク一人でも特に労することなく先手をとることができた。
しかし、今後もそうとは限らない。
鼓咆学科では、身体的な素早さでなく、知略によって機先を制する術を学べると聞いた。
召喚した魔神にも策を伝えられれば、より効率的に使役できそうだ。
今後は鼓咆学科の講義も出席してみるとしよう。

年末年始の星見祭の頃だった。
星見祭の準備を終え夜道を歩いていたところ、冬にしては妙に温もりのある風が急に吹き抜けたと思うと、直後手負いのレッサーオーガが現れた。
大人しく後ろにいるやつをよこせなどと喚いてきた。事情はよく分からなかったが、降りかかる火の粉は払わねばならない。アヴェンジャーの餌食にしてやった。
尋問してみるとこの風の正体は妖精らしく、ルーンフォークである自分には認識できないわけだった。
そして襲撃を指示したのは、バルカンという種族らしい。魔神に似た風貌を持つ、異大陸にいるという蛮族——。興味深い。
どうしようもなかったので、同じ班の妖精魔法学科のウルリクに事情を説明し、妖精の話を聞いてもらった。
話をざっくりまとめると、温い風の正体は春を司る古代種妖精、プリマヴェーラ。
（この辺の話は、自分としたことが記憶が定かでない——誰かに聞いてみよう。）
ユーシズ北東部「ジャムヴェールの障壁」は、大破局以来から大きな災厄を封じている。
年に一度行われる星見祭だが、その実際は災厄を四方に取り囲むように存在する妖精の里から意図的にマナを解放し、暴走を食い止めるための儀式だ。
その四つあるうちの一つの妖精の里——プリマヴェーラの里が、蛮族によって襲撃されてしまった。
本来なら蛮族相手には遅れを取らないそうだが、今は冬——妖精の力が大きく制限されていたせいか、占拠されてしまったそうだ。
更に里の中央には穢れの剣があり、その影響下では、穢れを持たない者——即ち妖精は行動することができず。どうすることもできないため、
今回我々に救助を依頼したとのことだった。
いつもの面々で依頼を引き請けると、早速妖精の里に向かうべくユーシズの北東に進んだ。
道中、スノーワームに襲われたり、アンドロスコーピオンに襲われていたもの（愚かにも種族の名前を忘れてしまった—後で調べること）を助け、謝礼に異大陸由来の水薬を譲ってもらったりなど紆余曲折を経て、およそ2日後に里近辺に到着した。
さすがに魔剣に至るまでの警備は厳重で、二交代制で蛮族が見張りを立てていた。
穢れの剣の範囲内でも動けるようになるルミエルの楔の数もそこまで多くなかったので、交代した直後を狙って正面から打って出た。
そこで発覚したことだが、同行していたフードの男シュメンドリックは、何とドレイクブロークンだった。あのフードは、そのせいか——。
深い森を抜け見張りの蛮族を倒し、すぐに魔剣があるであろう大樹に向かった。途中重装したボルグもいたが、魔動機術師(マギテック)のガンの敵ではなかった。
大樹を登る際、謎のフクロウ型の警報器に引っかかるなどしたが、それでも何とか剣のある場所にたどり着いた。
そこにはルシーダと名乗るバルカンの指揮官が、護衛を引き連れて待ち構えていた。
どうやら奴は軍師としての能力も持っていたらしく、危うく先制を許すところだったが、間一髪こちらから動くことができた。
奴が率いる手下から放たれる攻撃は、時が経つにつれ苛烈さを増した。指揮官自身も時折、盧外な一撃を加えてくる強敵だった。
策を見るに、軍師としてだけでも自分より格上の相手だった。そんな相手に機先を制すことができたのは幸運だった。講義で習うことも、馬鹿にできない。
激戦の末戦いに勝利し、奴が持っていた本物の穢れの剣を破壊することに成功した。辛くも依頼を達成した。
依頼を達成した後のことは——正直よく分からなかった。どうやらプリマヴェーラが何か話していたことは、周囲の反応で察せた。
また、通常の報酬に加えて、使用することで技能を習得していなくとも妖精魔法を行使することができる、妖精のオーブというマジックアイテムをいただいた。
そして、ここでひとつ書き留めておくべきことがある。
そのうち自分の目になにやら魔法的な力を感じ、視界が開けたような感覚を覚えると、美しい妖精——プリマヴェーラを、この眼で捉えていた！
妖精のことは知識の上では理解していたが、図書館の書物に載っているような絵画ではなく、実際の姿を肉眼で見るとなると、なんとも心が動かされる。
それに、戦闘時に味方の妖精の姿が見えていて言葉が通じれば、自分の鼓咆を届けることもできる。ありがたいことだ。
しかし、妖精を永続的に見れるようになったわけではない。
練技と同程度には精神力(MP)を損耗し、一度に3分程度までしか持続しないので、必要な時以外の使用は慎むべきだ。乱用はいけない。
決して、美しい妖精の姿を見たいとかそういった邪な動機で乱用してはいけない。

ウルリクが妖精を召喚した時、鼓咆を届けられるよう妖精語の会話も習得することにする。
そして、あの魔神に似た姿をした蛮族、バルカンについて、調べておくこととしよう——。