タラックサクムの前世は、テラスティア大陸に生まれたグラスランナーでした。
あっちこっち旅をしてて、最後はあまりにも哀れに、美しいリルズ神官に一目ぼれしちゃった。
そのエルフはあまりにも美しくて、相手も自分も男であっても、タラックサクムはそれほ気にすることもできないほど、彼に恋している。
バードであったタラは、ただ相手のこと恋しくて恋しくて、毎日その方にアピールして、そして、タラの願いは成り遂げた。
相手に愛を認められ、そして恋人になった。
甘い日々に浸られ、タラは夢中になった。
タラはその人に求婚した。
……それは一番後悔なことでした。

翌日、タラは驚いた。
愛していたその人は、女になった。
これはリルズ様の祝福と、その方はそう言った。
タラはただただ悲しかった。
ありのままのこの人でいいんだ。女にならなくてもいいんだ。どうして世間も神もこれを承認しないんだ。どうして勝手に、その人を女に変わるのを祝福と思うんだ。
タラはこういう事実を嫌いだった。相手は男でも女でも愛しているけど、こういう世間論と、そう思う神に憎んだ。
どうしてもこういうこと受け入れない。どうして性別が同じだけなのに、ありのままの好きな人を愛するのは間違っているだろうか。
だからタラは超越をもとめ、始まりの剣をもとめ、神を逆らおうとしていた。
そして、リルズから罰が来た。
異性の愛こそ自然で生んだ理、タラはそう告げられて、「その人が女になるのが嫌いなら、君が女になろう。」と、タラは女に変えられた。
神に逆らえないということに絶望して、タラはその人に共感を求めた。
だけど、愛したその人はこう言った、「今の君の方がさらに好きですよ。これで、世間に承認されるのではありませんか？」
タラは絶望した。自分の思考を理解できる人はいなかった。
自分はただ、誰でも、ありのままの姿で、好きな人のありのままの生き様で好きにしてもいいとしたいだけ。

だから彼は、神殿に暴いた。
でもそれもすぐに止められた。
1人の超越者でも、限界がある。
タラは果たして神に成れず、抗えず、捕まれた。死刑判決されてもおかしくない罪を犯した。
愛する人のせいでこそ、命残され、ただ、手と足は全部切断された。マナのないグラスランナーの自分は当然肢体修復できない。もう何もできない。ただこのまま生きてるだけ。
その人は嬉しそうでした。自分が生きてるから。「これからずっと世話になるから、大丈夫。子供も産もう。でしたら将来何があっても、私達の子供があなたを世話するから。」
好意の話なのに、この自然でこういう不条理を受け入れるその人とその世間に背筋がぞっとした。
「……大丈夫でしょう、どうせボクは、お前の前で死ぬから。」
タラは笑った。

タラの命日は、子供を授かった日だった。その一瞬で、最後の理性が切れた。
子供を孕んだだけで、強くならないといけない？『母』にならないといけない？バカな。
自分はもう、自分として見られていない。ただの女として、『母』として見られている。あの人の妻として見られている。可笑しい。こうやって当然に、自分自身が見落とされている。平等な愛なんてなかった。
だから、皆が自分が子供を産むことを期待している時、タラは『不可能の自殺』をした。
……こっそり占いをして、それに応じて重い代償を払った。
子供と一緒に、死なせる。もうこの体と、こういう世間に囚われなくてもいいんだ。
復活も当然抵抗した。こういう苦しまぎれのことが散々だ。愛しているのに苦しいんだ。
願わくば、生まれ変わる時、この世間はもっと平等で、誰でもありのままの自分で、ありのままの他人を愛せる。
……泣くように、もう一回唱えている呪文を聞いた。

そして、5歳の時、前世の記憶を全部思い出した。残念ながらこの世はまた前と同じでした。
性別だけで壁が作られ、そのせいで人は差別される。同性であるだけで愛が許されず、異性であるだけで平等で愛せず、前と同じ最悪な世間でした。
なんでこんなことを思い出せるんだ。もっと後で気づけばこんなに早く苦しまなくてもいいのに。
タラ一人で旅に出た。

……今回こそ、自分を隠しずつも……絶対、神に成る。
この世界を、変わるために。