20年前、レネゲイド災害が各国で広がったばかりの頃、アメリカの大学に留学中の一般人学生だった彼だが、当時付き合っていた彼女との二人旅しているところ死亡したと思われる、知り合いの教授であるコードウェル博士を偶然に出会ったことで、レネゲイドにまつわる争いに巻き込まれていく。
　その際、共に巻き込まれる彼女を逃れるため庇って一度命を落とし、と思えばオーヴァードとして覚醒することで蘇生した。蘇生したものの、コードウェル博士から彼の身に起きている悲劇を知り、そのようなことが繰り返されないように彼に協力することを決意する。
　後ほど判明したのだが、彼に感染したレネゲイドウィルスは"古代種(エンシェントレネゲイド)"と呼ばれる特殊な個体であり、そのゆえ、肉体の年齢は覚醒時の19歳に止まっていて、老いることがなくなった。外見いつまでたっても変わらないのもそのため。
　そのような体質から、UGNの中でも随一の古株であるが、表舞台に立つことは極めて少なく、ほとんどはその裏で仕事をしていた(その分、様々な、特に裏社会に関するコネは広いが)。また、遥かに長生きできるゆえか、コードウェル博士をはじめとする初期メンバーが次々と戦死、あるいは去っていく最中でもひとりだけ生き延び、いくつかの盛衰を見届けていた。コードネームの"送り人(Departures)"は、そうした見送る立場でしかいられない自分に対する皮肉の意味合いも込めているらしい。
　かつて付き合っていた彼女のことだが、その後も生きており、今は普通の家庭を築けている。その情報も彼自身は把握しているけど、書類上彼自身は死亡扱いされていた故会いに行くことも叶わない。最も彼女が生きているだけで本人は満足しているようだが。

　上記の経歴から、人の半生ほどの時間を歩んできた分世界の残酷さを知ってしまったゆえの達観さもあれば、その割にまだ純真無垢の心を奇跡的に保存しているという強さと真っ直ぐさ、清らかさもある。
　人に対しての態度は、だいたい「寛容」であり、本気で救いようもない限りは敵意を向けることはなく、どんな醜い姿になったとしても受け入れようとする、聖母のような懐の深さが垣間見える。
　逆に言えば、義理人情を踏みにじる人に対しては容赦はないともいう。

　「俺はお前の人生に指図する義理も権利もねぇが、もう一度考え直して、そしてそれでもそうしようとするのなら、俺はそれを受け入れよう」
　「それでも人生は続く……なんてね、ミルクを温めているから、それを飲んで早く寝よう、また新しい朝がくるさ」
　「まぁ、正しくなくとも、お前なりに接する方法見つければいいさ」
　「何か必要あったら遠慮なく言ってくれ、全部……とは流石に保証できないが、できる限りなら」

　アッシュ・レドリック(上級P91)とは、彼が本部エージェントだったころから腐れ縁の仲。今は随分とあちらは出世しているが時に顔合わせの時しばし嫌味を言い合っている。
「おや、また現場の仕事か。エージェント長くやっていた割に出世の気配あまりないのだね」
「そりゃ元査察部局長のエリート様に及びませんので」
　このように犬猿の仲のようだが、お互いの能力については評価しているので完全に仲悪いとも言い切れない模様。
　郁斗自身にとって表舞台に目立つことは避けたいことのようなので出世のチャンスを人に譲っているが、それに対してレドリックは気に入らないと見受けられる。